人間関係が壊れる3つの言動とは―『呻吟語』
嘘をでっち上げる
人間関係で気をつけたいことに、「言葉」「態度」「心持ち」の3つがあるという話です。処世訓の名著とされる『呻吟語(しんぎんご)』では、次のように述べています。
言葉でもっともよくないのは、嘘をでっち上げることである
物事を行ううえでもっともよくないのは、厳しく人に当たることである。
心持ちでもっともよくないのは、とげとげしいことである。
まず、言葉からみてみましょう。
言葉でもっともよくないのは、嘘をでっち上げることである
嘘をつき、約束を守らない人が、人から信用されるはずがありません。
ただ、意図して嘘をついているのではないのですが、知恵が回らないために、また言葉が足りなかったために、真意が相手に伝わらないことがあります。
不用意に、嘘つき、信用ならない人間だと受け止められないためには、真心が伝わる話し方、伝え方を身に着けておくことも必要ですね。
一方、智恵の回る人、頭が切れる人によくあるのが、自分の思惑通りにことを運ぼうと、言葉巧みに脚色することです。グレーゾーンをわざと曖昧に説明するのがうまい。不正や間違いなどが表面化したときに、言葉巧みに他人や部下に責任を押し付けている。
最後にはこの人は痛い目に遭うだろうな、と推移を見守っていると、しぶとくというか、巧みに生き延びていることがあります。
そういう例はあるにしても、個人的には『呻吟語』の言葉のようにありたいですね。
そして、できれば、状況によっては、嘘も方便、そういう賢さも備えておきたい。自分で自分を衛る、ピンチを切り抜ける術を身に着けておくことも、大事です。
厳しく人に当たる
次に態度です。
物事を行ううえでもっともよくないのは、厳しく人に当たることである。
トラブルや失敗、プロジェクトの遅延などが起こったときに、その案件を担当している現場や当事者を一方的に責め立ててしまう、ということがよくあります。
ミスの原因を突き止めたい、事実関係を明確にしたい。その対応策をいち早く講じないといけない。その思いが逸るあまり、当事者に詳しく事情を聞くことが目的なのに、この人がミスをしなければ、という思いが先に立ってつい感情的になってしまうことがあります。
そうなると相手は口を閉ざしてしまい、原因が究明できないし、その人との信頼関係も損なわれてしまいます。まして、相手の人格を否定する言動をしたら、パワハラになってしまいます。
また、よくない対処の一つは、責任をすべて当事者に転嫁してしまうこと。
その案件に関わっていた自分にも指示の仕方や進捗状況の把握などで、至らないことがなかったか、自問自答してみる。そうして客観的に対処する心の準備をしてから、臨むことが大事ですね。
トラブルや失敗の事実関係を把握し、ミスの指摘はする。しかし、その後は、挽回策を早く講じることにエネルギーを傾けたい。そして、次にミスを犯さないために、未来に向けた話し合いをする。
とげとげしいこと
最後が心持ちです。
心持ちでもっともよくないのは、とげとげしいことである。
社会人として生きていくうえで、「人生七味とうがらし」が待ち受けている、と言われています。その七味(み)とは、
うらみ
つらみ
ねたみ
そねみ
いやみ
ひがみ
やっかみ
すべてネガティブ感情です。
組織人として競争社会を生き抜いていくうえでは、これらの感情は、モチベーションや上昇志向の裏返しというところもあるので、内から湧き出てくるのはやむをえないのかもしれまん。
肝心なのは、そういうネガティブな感情を、どうコントロールして、人と接するか、ということです。
苦手な人、相性のよくない人、恩を仇で返す人、約束を守らない人……そういう人と接するときこそ、特に自分の機嫌や体調がよくないときは、いつも以上に笑顔で、愛語で。
自分から関係性を損ねてしまうことほど、愚かなことはありません。壊れてしまった人間関係や信用を再構築するのが、いかに困難で、たいへんなことか。
最近よく話題に上る、心理的安全性の高いチームづくりを考えるうえでは、どれも大事なポイントですね。
最後に読み下し文です。
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