通学路

<通学路>
さっきまで元素の周期表を見ていた
そこに君が現れた
人混みを掻き分け私のところに来てくれた
私は参考書を閉じ
今日持参の帆布袋は底が汚れていること
出がけに髪がうまくまとまらなったこと
リュックにつるしたマスコットが気に入っていることを告げた
話が途切れてまた周期表を見る
ヤダ、なにそれ、そんなことする?
と笑いながら君の手に触れる
君は握り返してくれるのに
またすぐに喧嘩するように振りほどく
話は友人のこと映画のことに移り
再び周期表をちらりと見る
そうやって朝の電車が特別なものになっていく

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