少年の手


<少年の手>
ウサギの人形の中に左手を入れ
身体を左右にゆすって小声で歌う
小さなモグラが右から出てきて
ウサギの鼻先で踊り出す
少年の思いは飛翔して
隣に座る父親も若い女性も消え失せる
黄色いウサギと茶色のモグラの冒険は佳境に入り
もはや地底湖を突き抜けて星の世界に遊ぶ
脈絡などないのだ、夢のように
涯はないのだ、宇宙のように
少年の手の中からすべてが生まれる
言葉の海のように

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