ミツマタの里

<ミツマタの里>
春の里山にミツマタの花咲く
杉の間伐のあと森に陽が入り
自生のミツマタが群生した
淡い黄色の花序がブローチのように裸の枝先に浮かぶ
幾百幾千の光の妖精が小声で囁き合う
ミツマタを見る人はおのずと無口になって
花の声を聴こうとする
足の悪い老父を支える娘は
小さな声で励まし続ける
ミツマタの群落を抜けたところで
人々は一斉に声を解き放ち
中間同士で思いを述べ合う
多くの言葉は費やさず
二言三言口にするだけで
見てきたばかりの群落を振り返る
界、門、網、目、科、属、種
ジンチョウゲ科、ミツマタ属、ミツマタ種
どんな分類も追いつかない
ひとりひとりのミツマタの花

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