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鮮やかな色 #1

 僕はなくしてもいいから、ほしい。何かが欲しい。
 例えば、名前にプロがつく何か。彼らは生まれつき努力する才能か、それぞれのスポーツに対する才能を持っている。だから自分の体を、頭を資本にしてお金を名声を稼いでいる。あこがれる。
 例えば、テレビの人気タレント。彼らは美貌を持っている。または美声、面白さ。彼らはきれいな自分をみんなに見せてお金を名声を稼いでいる。あこがれる。
 例えば、離婚を言い渡された人妻。彼女は誰にもくみ取れない悲しみを抱えている。この先の将来にどうしようもない絶望を感じている。あこがれる。
 例えば、重度の障碍者。人の力がなければ何もできない人もいる。耳が聞こえない、目が見えない。あこがれる。
 例えば、母親。私のことを生んでくれた。普通に育ててくれた。もういないけど。あこがれる。

 そういう物語が欲しかった。自分の目で見える、選択する人生はつまらなかった。ある不特定多数の偉そうな人達は言った「未来は自分次第だ。」自分次第だとしても、その未来に鮮やかな色彩がないのなら、隣の青い青い芝はないのなら、ないのなら。


 いつもの登下校。僕は一人だ。友人がいないわけではない。そこまでして一緒にいたい友人はいないというだけだ。イヤフォンをしながら自転車をこぐ大学生が颯爽と私の横を通り抜ける。「死ね」。私はそうつぶやいた。交通ルールを守らない奴は犯罪者だ。あいつらは人殺しになることをいとわないのだろうか。だから、私は彼らでストレスを解消している。どうせイヤフォンで流れている音楽も、流行り腐っているということだけが取り柄のものだろうから、そんなもの外して自分の命を人の命を守ってほしい。だけど、もしでかい音を出すあの無駄にぴかぴかした車がなくなってしまったら、私の鬱憤はたまるばかりだ。それならやっぱり彼らには、未来の人殺しになってもらうしかないな。

 家に帰るとすることは山積みだ。音楽に、映画に、アニメに、漫画に、お笑いに、この世の批評が生まれるコンテンツを私は消費しなければならない。 
 まずはYoutubeを開き今日更新のYoutuberをさらう。もちろん倍速なんて使わない。Z世代だとか思われたくないから。Youtuberはなぜだか知らないが登録者30万人を超える人たちは見る気が起きない。私が見るのは零細の人たちだけだ。
 配信アプリでで深夜番組を見る。笑えないものも多いが、日加なので仕方なく見る。面白いものもちゃんと見る。
 一週間に3本は映画を見るようにしている。一般教養といわれるものからカルトまで何でも見るようにしている。
 継続的に摂取しているものを一通り体に無理やり流し込むと、たいてい日は変わっている。けど、新規開拓は大事だ。明るくなるまで新しいコンテンツを摂取する。口に合わなくても五回までは食べるようにしている。
 これが私のルーチン。このルーチンがなくなったら、私は私でなくなる気がする。これは未来への投資だから。

 私が通う大学はいたって普通の理系大学だ。学びたいものは学べてるし、金髪は少ないからいい大学だ。金髪は嫌いだ。お前らは本当に金色が好きで金にしてるの?無難だからじゃないの?後金っていうより黄色じゃない?金髪には意思がない。快楽至上主義の男たちは、特に何も考えていない女の子たちに通用する、そこらへんに落ちているありきたりファッションを選択しているだけだ。だがそれが、実にセックスへの最短ルートを踏んでいて腹正しい。軽音楽に傾倒する彼らも同等だ。コピーバンドをする彼らは他人が生んだ「かっこいい」をうわべのかっこよさだけ真似して、かっこよくなった気になっている。構内にこだまするあなたたちの音楽を、私は好きなことがままある。だけれど、そのカッコよさはその曲を作った人のかっこよさの残滓ってだけだ。劣化させてるだけ。それなら自分でつたない音楽をやろう。わかりやすいかっこよさなんて求めないで、憧れに向かって走る姿はかっこいいだろう。お前らはかっこよくない。ギターケースをファッションの道具にするな。

 疑問に思っていることがある。なんで日本のバンドなのに、英語を使うの?あなたたちのルーツに大きく欧米があるのなら納得する。日本は和製英語が多いからカタカナ語が多いのも納得する。だけれど、日本語二分の一、英語二分の一みたいな歌を歌う人たちは何なんだ。英語で歌う意味とは?逆に日本語で歌う意味とは?英語で歌うといいことがある。それはぱっと意味が通ってなくても日本人から見る英語のかっこよさでごまかせるからだ。でも、日本で育った私たちは、英語ネイティブの情緒を感じられるわけがないのだ。だから、絶対日本人が音楽をやるなら日本語のほうがいい。それか英語で全部やったほうがいい。日本で育ったんだから、日本語を操るほうが皆に食べてもらえる楽曲を作れると思う。

 構内でコピーバンドがONEOKROCKを奏でている。

 

 
 まだ続くかも。今日は疲れたからここまで




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