見出し画像

話しコトバの特徴 ②

話しコトバの例文と用法 ②

話しコトバの特徴を理解するためには 、
その実例をもとに考えるのが一番の近道
だといえます。そこで、大学生が書いた
作文を基にみていきたいと思います。

 <例文 4> 
  文法がものすごく 苦手なのですが、
  どんなに がんばっても 切っても切
  れない 存在
なので、克復したいと
  思います。
  
  ・ものすごく→とても、or(非常に)
  ・苦手なので→不得意なので
  ・どんなにがんばっても
     →どのように努力しても
  ・切ってもきれない→無視できない
  ・存在→意味不明? 要素?
  ・克復→克服、使いこなしたい?
  ・思います→考えています

 上文の「切っても切れない存在」は、
「深い関係にある」という意味なので
 しょうが、意味不明でよく分かりま
 せん。

「~思います」は主観的な表現なので、
「~感じます。」と同様に、文末での
使用を極力避けた方がいいでしょう。
そこで、次のように直してみましたが、
みなさんはそうされるでしょうか。

(訂正文 4)
 文法が非常に苦手なのですが、それ
 は語学の学習に無視できない要素な
 ので、しっかり臨んで克服したいと
 考えています。


 「思います」を文末に使うと、どういう
 場合でもこれになってしまい、英語の
 “think” と同じような言葉だと錯覚して
 しまう危険性があります。もちろん、
 英語にもいろいろの意味がありますが、
 それと同様に、日本語の「思う」にも、
 「考える」、「答える」「同意する」、
 「判断する」、「提案する」などのよう
 に、いろいろの意味に置き換えること
 ができます。ですから、決まったよう
 に「思う」という一言で終わると、
 誤解を招くことになります。

(3)「話しコトバ」は乱暴か?
 
 
「話しコトバ」は「書きコトバ」に比べ
て乱暴だという人がいるが、決してそんな
ことはないと思います。コトバは生きて
いるので、話し手の思いや気持ちを聞き手
に対して、感情を込めて丁寧に話せばいい
わけです。

 ただ、会話の中ではコトバは一瞬に消え
てしまうが、「書きコトバ」は文字化され
て残るので、どんな読み手にも対応できる
ような一種の品格が求められます。

 例えば、話しトバコの「~ん」ですが、
これを文字にするとひどく品が悪くなり
ます。それを実際の例で示しましょう。

<例文5> 
 
その中で、私は大学はやっぱり高校と
 違うんだ、と驚くことが沢山あるんだ
 と思いました。

 ・やっぱり→やはり
 ・違うんだ、と驚く→違うのだと驚く
 ・沢山あるんだと、思いました。
         →多くあるのだと

 上の例文の、「~違うんだと、驚く」、
「~あるんだと、思いました」というよう
に、どちらも「~んだ」とあり、かなり
乱暴な文になっていますので、次のよう
に直すことにしましょう。

(訂正文 5)
 その中で、私は大学にはやはり
 高校と違って、驚かされることが
 沢山あるのだと気がつきました。

 上の「~と、違う」や「~だと、思う」
という文型は、いずれもが完全な「話し
コトバ」的な表現なっています。これは
後でも問題として取り上げたるつもりです。

<例文 6> 
 しかし 自由は
、自分でしっかりと考
 えていかなければとっても 無駄に
 なって
しまう可能性が学生にあるんだ
 なあと
思いました。

  ・しかし→しかし、(句点が必要)
  ・自由は➜意味不明?
     →「自由について」か?
  ・しっかり→よく
      ・無駄→意味不明? (不要の意味か)
     「無意味」の意味でしょうか?
  ・とっても→とても
  ・あるんだなあと→あるのだと
  ・思った→いえる。

 これも、たったに2行ほどの文章なのに、
「しっかりと」、「とっても」、「無駄に
なって」、「~あるんだな」などのように、「
話しコトバ」で占められ、かなり乱暴な
文章となっています。

(訂正文 6)
 しかし、自由について自分で正しく
 考えていかなければ、どのような努力
 も徒労に終わってしまう危険性がある
 と思いました。

 このように、「話しコトバ」は「書き
コトバ」の表現では、双方に大きな差異
のあることに気づかれたのではないで
しょうか。

(4)「書きコトバ」の文法は何か?

 それでは、便宜上ここで「書きコトバ」に
ついて、簡単におさらいしておきましょう。
書き方の基本は、もちろん「書きコトバ」で
書くことです。さらにポイントとしては、
主述の関係や時制の一致、文末の統一など、
形式的に揃えておかねばなりません。

 中でも「話しコトバ」と「書きコトバ」
の違いを正確に認識して、混同しないこと
だと思います。しかし、そういうことが
ほとんど無視して書かれている作文が、
あまりにも多いのではないでしょうか。
次の例はどうでしょうか。

<例文 7> 
 
私は、大学に入学してみてやっぱり
 自分と違う人と接っするのは楽しい
 と思います。今は言っている事が
 よくわからない
し、自分の思いも伝
 えられずとっても 歯がゆいです。
 しかし、これから勉強して自分の
 言葉がつうじるようになる日が来る
 を思うと楽しみでなりません。
 もちろん、それはとっても難しい事
 
で努力と根気なしではできないと
 わかっています

  ・やっぱり→やはり
  ・接っする→接する
  ・言っているのはわからない
      →誰のこと?
  ・事→こと(形式名詞はひらがなで
        表記)
  ・とっても歯がゆい
     →とても歯がゆい(残念な、
      忸怩たる思い)
  ・難しい事→困難なこと
    ・楽しみ→期待できる
  ・根気なしでは→忍耐力なしでは
  ・わかっています→覚悟しています。
 
 これほど冗長な文で、しかも「話しコト
バ」が多いとなると、大幅に手直しする
ことが必要となります。とにかくこれは、
とても大学生が書いた文とは思えないです。
そこで、次のように直 してみました。

(訂正文 7)
 私は大学に入学してみて、やはり自分
 と違う人と接することが楽しくなりま
 した。今は外国人の話す内容がよく
 理解できないし、自分の考えも伝えら
 れず残念な思いをしています。しかし、
 これから勉強して自分の言葉が通じる
 ように努力します。それはとても難し
 いでしょうから、努力と根気なしでは
 達成できないと覚悟しています。

 こんな感じになるのでしょうが、まだ直
せる部分があると思います。一つは文章を
書くときには抽象的に書く習慣を身につける
ことだと思います。さて、次の例はどうで
しょうか。

<例文 8>
 
将来言語をつかい たくさんの人達
 交流していく仕事に就きたいと思って
 います。
 そして、色んな国の人達から私が知ら
 ない事
をたくさん学びたいです。そし
 て、私が言葉がわからずとまどっている
 人達に言葉の楽しさ伝えれたら良いと
 思っています。そして、たくさんの
 人達
と交流していき私もたくさんの
 事を教えていきたいです。

 ・言葉をつかい→外国語を使って
 ・たくさんの人達→多くの人々
 ・色んな→色々な
 ・知らない事→知らないこと
 ・伝えれたら→伝えられれば
 ・たくさんの人達→多くの人々
 ・たくさんの事→多くのこと

 この文章では、「そして、」という同
じ接続詞を使っている上に、読点の位置
がバラバラになっているし、同じ語句が
何度も使われているので、非常に気になり
ますね。そこで、次のように直してみま
した。

(訂正文 8)
 将来、外国語を使って多くの人々と
 交流する仕事に就くのを望んでいます。
 そして、色々な国の人々から知らない
 ことを多く学ぼうと考えています。
 できれば言葉が互いに通じない人々に
 も、その楽しさが伝えられるのを願っ
 ています。さらに、外国人との交流の
 中で、私も多くのことを教えていく
 つもりです。

 やはり原文がよくないので、この程度しか
直せないのが残念でなりません。老婆心ながら、
将来外国人に何かを教えるのであれば、もう
少し母語である日本語や日本文化の知識を得
てほしいものですね。

どうでしょうか、「話しコトバ」について、
大学生の作文例が少しは参考になったのでは
ないでしょうか。それでは、次回を楽しみに。
            (to be continued)

アナミズ (2024.02.01)

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?