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100倍、身につく国語力(82)帰国子女篇

❤小~高校生と,母親向けのレッスン

 (1年間で国語力の悩みが解決できる!)

帰国子女編 ④
 
【帰国子女の言語感覚】
(4) T君の日本語能力の事例(その1)
 
 <生徒の家庭環境>
  まずははじめに、生徒の家庭環境に
ついて紹介しておきたいと思います。

 T君は、両親とも教育にそう熱心では
なく、自由に育てられたため、いわゆ
る日本的な躾(しつけ)はまったくでき
ていませんでした。アメリカでは宿題と
いってもせいぜい15分ぐらいで、日本の
ような予習や復習をきちんとする習慣が
まったくなかったのです。
 
 子ども自身は、楽天的で明るい性格で
あったが、父親は仕事中心で、母親任せ
の傾向があり、その母親が神経質なため、
子どもが日本の学校や社会に不適応症状
を見せていたが、面談して相談すること
はできない状況でした。
 
  一方のYさんは、両親とも教育熱心で
あり、現地校でも優秀な成績を収めてい
ました。温かい家庭の雰囲気の中で、躾
(しつけ)は厳しくなされ、勉強にはしっ
かり取り組んでいました。本人の性格は
大らかで明るくて、だれからも好かれる
タイプでした。
 
 母親は、アメリカでの記録をきちんと
整理し保存しており、現地社会に溶け込
んでおり、学校行事にも積極的に参加し
ていました。そして、子どもには日記を
書かせたり、本を読む習慣を身につけさ
せていたのが、印象深く残っています。
 
 以上が二人の基本的なデータで、両君
は対称的な環境の中で育ったので、その
影響は帰国後にも大きく及んだといえる
と思います。その証拠として、日本語力
の回復だけでなく、さらに実力をつける
のに、特に、T君は大学生から大人になる
まで、懸命に努力したことが今でも思い
出されます。
 
(4) T君の日本語能力の事例
  帰国子女の日本語能力を知る点におい
て、日記は一つの手がかりになります
そこで、アメリカのニューヨークの現地
校に、10年以上も滞在したT君 (中1 )の
日記を分析することにしました。

 一般的に帰国子女の日本語能力は、語
彙、漢字、文法、発音いずれの面を見て
も相応の問題を抱えていますが、それら
の要素を含めた日本語の文法や表現力と
いう面から、以下のような事例に分類で
きました。
 
<T君の日記>
 事例1:助詞の誤用
  ① ぼくは、なにをしたらいいのか
    わからないので、後ろへ向いて
    逃げ出しました。
        (後ろへ→後ろを)
  ② 昼からは、お母さんとユニーへ
    買い物へいきました。(へ→に)
  ③ 二人は、よろこんでスケート
    ボードをのっていました。
             (を→に)
  ④ 自転車を、安心して乗れました
    が、~。(を→に)
  ⑤ ぼくはその人の後をついていき
    ました。(を→に、orから)
  ⑥ あしたは、K先生におこられる
    かな~と考えながら、ねてしま
       いました。
    (考えながら→考えているうちに)
  ⑦ そこでちょっと安心しながら、
    学校へいけるようになった。
      (安心しながら→安心して)
  ⑧ 今日は、学校の帰るとちゅうに、
    草の中で千円をみつけました。
   (学校の→学校から、とちにゅうに
    →とちゅうで)
  ⑨ とちゅうに、くだっていく急な
    坂をでました。
   (とちゅう→とちゅうで、坂を→
    坂に)
  ⑩ ぼくと従兄弟と弟は、さっそく
    ユニーへ行って、インベーダー
    ゲームをしにいきました。
   (「と」の使用が多い、 行って→
   不要))
 
 事例2: 活用部分の誤り
  ① 「 今日は、ぐんと数学を勉強
    しなない」と言われた。
    (ぐんと→うんとor しっかり 、
    しなない→しなさい)
   ② 先生が「 持ち主へかやさない
    といけない」と言わらたから、
    がくっとしました。 
    (かやさない→かえさないと、 
       言わらたから→言われたから)
   ③ ぼくはくれしくて、さっそく
     さいふの中をいれました。 
    (くれしくて→うれしくて、中を
                →中に)

ネットのイラストより転載


 事例3: 活用変化と時制の勘違い
   ① そのパンはおもしろい・見ること
    のなくいパンです。
    (おもしろい→おもしろい、見る
    こと→みたこと)
   ② その坂が一ばいおもしろかった
    ところでした。
    (一ばい→もっと、おもしろかった
    →おもしろい)
   ③ その時、みんなは足がつかれて
    おなかがすいていた のでそこで、
     昼食をたべました。
    (足がつかれて→足がつかれ、
               おなかがすいていたのでそこで、
               →おなかがすいていました。
    そこで、)

  ❤T君の日記には、いろいろな場面
  に対して、率直な感想を述べて
  いますが、使用される語彙や表現
  力が不十分なため、漢字が極端に
  少なく、中1とはいえ小学4~5年
  程度だということがわかります。
 
アナミズ (2024.05.03)


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