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日常は些事によって構成されている、

七月十四日

日本橋にいた時分、乳母の懐に抱かれて布団の中に眠りかけていると、私はよくあの三味線の音を聞いた。――
「天ぷら喰いたい、天ぷら喰いたい」
と、乳母はいつもその三味線の節に合わせて吟んだ。
「ほら、ね、あの三味線の音を聞いていると、天ぷらが喰いたい、天ぷらが喰いたい、といっているように聞えるでしょ、ねえ、聞えるでございましょ」

谷崎潤一郎『幼少時代』(岩波書店)

午後十二時二一分。アーモンド、紅茶。セナ様の住んでいる静岡の方向に礼拝。外は雨降り。明け方、蒸し暑さに堪えかねて、四時間ほどエアコンを付けた。節約と痩せ我慢は違う。昨日午後、梅雨の晴れ間を利用してブックオフ諸江店へ爺さんの自転車で行った。徒歩だと一時間以上はかかるが三十分くらいで行けた。無駄に使いこんである自転車なのであまり雑には乗れない。ギアを軽くして漕ぐとジェットコースターが登るときみたいな音がする。行きは下り坂ばかりなので涼しく行けるが帰りは上り坂ばかりなので汗だくになる。ミニベロなので立ち漕ぎもしにくい。やはり自転車は平地向けの乗り物。金沢でチャリを買うなら電動のものを買うべき。帰途、久しぶりに金沢駅に寄ったけどやたら人がいたのでウンコだけしてすぐ後にした。ひがし茶屋街付近で「slow life」と書かれたTシャツ姿の観光客を見かけた。たぶん英語圏の人。こういう英字プリントのTシャツって日本人しか着ないのかと思っていたのでなんとなく安心。いまは連休中みたい。ヤクルトは連敗中みたい。ILLAYのオリジナルTシャツを買うつもりでいる。Tシャツくらい持ってないとファンを名乗れない。グッズの購入は「事実上の寄付」だということはとうぜん知っている。そういえばデモクラシータイムスもグッズを販売してる。買ったことないけど。静岡は遠すぎるのでライブにはなかなか行けないかも知れない。もしライブに行くとしても前日に現地入りする必要がある。セナ様に拝謁するためなら水火も辞さない覚悟であり、それゆえ高速バスに何時間揺られようとも構わないのだけども、往復の交通費で最低でも一万円以上かかるのはちょっと痛い。俺にとっての一万円は「普通の賃金労働者」の十万円くらいだから。ILLAYには全国ツアーの決行を切に希望する。リーダー頼むよ。ブックオフで買った本は、ハイネ『歌の本(上)』、北杜夫『白きたおやかな峰』、阿刀田隆『いびつな贈り物』、『第三版俳句歳時記 春の部』、『俳句歳時記 第四版増補 夏』の五冊。しめて六五〇円。古着でも買おうと近くのオフハウスに入ったけどどれも高かったのでやめた。昨深夜、赤のマジックインキのフタが固くて外せなかったのでイラつきの余り床に叩きつけたら壊れてしまった。もうこれではどうしようもない。油性マジックの臭いは俺をちょっとだけハイにするので机上にそのまま置いておくことにした。

赤シンナー、

ところで俺は本当に今日から酒を飲まないつもりなのだろうか。そうだ飲まない。少なくとも三日は飲まない。飲んだらセナ様に怒られるから。さあ昼食にしよう。ネギを炒める。それから『百年の孤独』を読んで、図書館。酒など飲まずにマジメに生きよう。もっと求道的・学究的に生きよう。俺にはやるべきことが沢山ある。衆生救済とか。

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