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「大人」になるのは大変だ、ひきこもりの孫、パナマ運河の春、リンダの股関節、贈り物ハラスメント、学問なしでは生きられない、

四月二一日

顔から、体から、物の言い方から、すべてを含めて、「好き」か「嫌い」かという判断を下すことは、人間同士の関係として、もっとも悽愴苛烈なものです。就職試験の比ではありません。

三島由紀夫『行動学入門』「見合いのおわり」(文藝春秋)

午前十一時五四分。緑茶、カルパス、アーモンド。このごろ早朝覚醒がある。そのうえ隣のヤニカス年金爺さんがあろうことか午前中からピンポンを鳴らしてくる。俺がスターリンだったらいまごろもう銃殺されてるよ。ちゃんとまいにち眠れることは才能だ。きょうは書くことがない。というか愚痴をこぼしたい気分ではない。だから読売新聞の「人生案内」の相談に答えてみようと思う。なぜか知らんけど(たぶん腹が立ったから)切り抜いてあるんだ。「識者」による回答はゲロが出そうなほど詰まらないものだったので切り抜いてない。なにしろ俺はこんな生きにくい地上を三六年もサバイブしてきたんだ。大悪人だ。大悪人じゃないと三六年も生きられない。だから人生相談の類に答えたって生意気との誹りは免れえるだろう。

ひきこもりの孫が心配
80代女性。20代前半の女の孫について相談です。
高校卒業後、専門学校に入学しましたが、入学式の日に同級生に無視され、悪口を言われてまもなく退学しました。私は説得し、手紙を渡しましたが、「ばあばには、私の気持ちがわからないでしょう」と言われ、退学を決めてしまいました。その後、通信教育で希望の資格を取得、就職したものの、約半年で退職しました。
数か月たちますが、就職活動をしている様子はありません。孫は家族とは普通に話し、食事の手伝いなどをしていますが、1人ではコンビニにも出かけられず、ひきこもっています。
両親は本人がその気になるまで見守る方針で、私に「何も言わないで」と言います。孫はどうすべきかわからず、月日が過ぎていくだけでは、と心配し毎日がつらいです。どうすれば孫を「等身大の大人」にできますか。

読売新聞(日刊)2024年4月18日「人生案内」

俺の回答は以下の通り。

まずはあなたがたが「大人」になってください
せっかく専門学校に入ったお孫さんがそのような状態になってさぞかしお辛いことでしょう。ただ私はあなたの相談文を読みながら非常な違和感を抱かされました。お孫さんを「等身大の大人」にしたいということですが、それはどのようことなのでしょうか。「その気になるまで」とはいったいどういうことを指すのでしょうか。私にはさっぱり分かりません。本当に分からないのです。誰もがすくすく元気に育って学校を出て就職して「社会人」になるというルートを歩めるわけではないし、そんな難易度の高いことを「標準的な生き方」とするのはどう考えてもバカげたことです。あなたがたがその程度の社会批判的観点さえ持てないのだとしたら、まず問題にすべきはお孫さんのひきこもりなどではなく、あなたがた「大人」のそうした知的鈍感性ではないでしょうか。ほとんど「良心の呵責」もないまま子を作ってしまうその暴力的な鈍感性ではないでしょうか。ひきこもっている当人が苦しんでいるのならなんらかの対策を講ずる必要はあるでしょう。ただお孫さんを「矯正すべき対象」として扱うのは絶対に止してください。ひきこもりは対人過敏型の人間にあってはごくまっとうな「生存戦略」です。世の中には「強くなどなれない人間」が必ず一定数いるのです。「強くなる」とは大抵の場合「がさつになる」(他人の痛みに鈍感になる)ということであり、それによって失われるものも少なくないのです。まずはお孫さんが生涯賃金労働しないことを前提に今後のことを考えていくのがもっとも「現実的」でしょう。とうぜん現在の資産を最大限に活用しなければいけません。あといまのうちに利用できる社会保障や福祉制度についてしっかり勉強しておく必要もあります。基本的に人は考えてさえいればあとは何もやらなくてもいいので、ひきこもっているお孫さんに対してはときどき、「ちゃんと思索してる?」と声をかけてあげてください。

そろそろ飯食って、図書館に行きます。そのまえにATMに行かねばならない。【備忘】1000円+4000円。ぼぼんちゅう糞味噌らーめん。おーいお茶目小象。スモール・エレファントあるいは包茎ペニス。牛と狐、もーこんこん。

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