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ガチペシミスト以外の人間としゃべるのはきほん苦痛、人に迷惑をかけるなと言いたがるやつがいちばん迷惑、根本気分としての「不安」と「倦怠」、聖セバスティアヌスの殉教、

三月十一日

嘲笑とゴシップは、あらゆる種類の第一次集団における社会統制の強力な手段であり、特に子どもに対する重要な統制手段として嘲笑を利用している社会は多い。そうした社会で子どもが統制に服するのは、罰を恐れるからではなく、笑われないためである。またアメリカ南部の黒人社会でも、「からかいkidding」が重要な懲戒手段となっている。小さなコミュニティでは、ほとんどの人々の生活が、お互いに隅々まで見え、隣人たちから検閲を受ける機会が多くなるから、このようなコミュニティでは、ゴシップはコミュニケーションの主要な回路の一つであり、社会の組織網を維持するのになくてはならぬものとなっているのである。

山本幸司『<悪口>という文化』「第3章 さまざまな文化における悪口」(平凡社)

午前十一時二六分。珈琲、納豆ごはん、くるみ。ミスチルにそんな曲あったね。休館日だ。東北で巨大地震があった日でもある。世界は残酷だ。この残酷さを「ただしく」理解していない人間の多さに気が滅入る。なんか俺だけ「精神を病んだペシミスト」みたいじゃないか。冗談じゃないよ。地獄の中で「ここは地獄だ」と言うと心配されるなんて。どんな時代のどんな場所にあっても俺は「ここは地獄だ」と判断できる自信がある。この「ペシミズム」は私個人の過去やいま置かれている状況とはほぼ無関係なものなのだ。ところできょうは布団から出るのにきのうほどの苦痛は感じなかった。猪木の延髄斬り動画と2AW所属の若松大樹が額から血を流しながら闘っている動画を布団のなかで見ていたからかもしれない。プロレスの「本来的胡散臭さ」にこれまで何度慰められてきたことか。なかでもデスマッチはいい。そこには私が「成熟拒否の美学」と呼んでいるものがふんだんにある。なんの「大義」もなく大の大人が蛍光灯だとか剣山だとか画鋲みたいなもので互いの肉体を傷付け合っているんだから。その「滑稽な擬似死闘」(「生命」の無駄遣い)にエロスさえ感じてしまう。とくに若松のような二十代男子のきれいな肌を伝う血は美しい。見ているだけなのに被虐的・加虐的快感を得てしまう。「涜聖感」といってもいいかもしれない。かつて俺を魅了した葛西純やアブドーラ小林ではもはや発しようがない「色気」がある。
現代の地球における最大の問題は人間の数が多すぎることだ、と昨夜もまた酒を飲みながら考えていた(もっとも俺からすれば「人口一人」でも多すぎるのだけど)。いまの学問体制によって「縄文時代」(約15000年前にはじまり約2400年前におわった)と呼ばれているころの日本列島の人口推計については研究者によってかなり異なっているが、ピーク時でも30万人は超えなかったというのは確からしい。これくらいの人間しかいなければ、<現代の地獄>とも呼ばれる「都市」を発明する必要は無い。集合住宅なんていう「非生物的」住居形態とも無縁でいられる。こんな山だらけの弧状列島に一億人なんてのは「悪い夢」でしかない。こういう「悪い夢」に慣れてはいけないと思うね。
ねむい。米がもう払底しそうなんだ。このあと店に行って何か買わないと。「何かを食わなければ著しい不快におそわれる」というのも「悪い夢」だ。いつまでもこういう「生活不快」に慣れることができない。俺は「生活」や「日常」をすこしも愛していない。<想像上>のパンを食えない、ということに俺くらい不自由を感じている人間はいないだろう。このことにいつも猛烈な苦痛を感じている。この絶えざる不快と不満を肯定するためにはよほどの鈍感さと哲学的蒙昧さを要するだろう。俺には両方とも欠けている。「どんな快楽も欠如の充足に過ぎない」ということに人はもっと徒労感を覚えてもいい。ものを食うたび屈辱感で涙が出てくる。いつまでこんな生理的欲求の奴隷でいないといけないんだ。「生物であること」に屈辱を覚えられる生物以外とは話す気になれない。「生」はつねに否定されるべきものだ。「生」を肯定できるのは下等な生物だけだ。きょうも私は「宇宙」の死滅をこいねがっている。しかし「そのようにある」の「そのように」が「世界自体の自己認識」において常に避けられないものなのだとしたらどうしよう。「そのように」というこの現存在がいつまでも「持続」するのだとしたら、「自殺」によっても「私」は救われないだろう。俺が「自殺」しないのは「自殺によって無になる」なんて素朴に考えられないからでもある。「無」というのはそう容易に使っていい概念ではないのだ。ああこんなことを書いて何になるというんだ。誰に伝わるというんだ。今朝にわのひいらぎに小指が生えてきました。まっかな小指でした。まっかんべ。

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