読む阿呆に書く阿呆、ふくろうねずみ、猫、飼葉桶、007は二度死ぬ、
十一月二八日
午後十二時三五分起床。ピカチュウが輪姦されている夢を見る。緑茶、三幸製菓チーズアーモンド、栄養菓子。ホワイトノイズ全開。ほんとうはワイヤレスヘッドフォンを装着してバッハでも聞きながら書きたいものだけど、音楽を聞きながらだと言葉が出にくくなるので、生耳のままキーボードを打つことにする。気分はまあまあ。部屋にも図書館にも読みたい本がありすぎて時間が足りない。昨夜また三時間近く歩いた。明るい月に薄い雲がかかっていて甘そうに見えました。俺くらいに厚顔無恥になると寝起きでもポエムをはける。
シャーウッド・アンダーソン『ワインズバーグ、オハイオ』(上岡伸雄・訳 新潮社)を読む。
俺のもっとも愛する小説のひとつなんだ。読みながら、「いやあ、小説って本当にいいもんですねえ」と何度つぶやいたことだろう。橋本福夫による訳はもちろん、講談社文芸文庫から出ている小島信夫&浜本武雄による訳も読んでいる。好きが高じてらいねん自分で翻訳することにした。著作権が切れているからたぶんプロジェクト・グーテンベルクに原文があるだろう。来年の俺はことし以上にやることがいっぱいある。抑鬱気分に苛まれている暇なんかないぞ。自己激励会。たまにこういうのやらないと無気力の魔手に迫られるんだよ。
『ワインズバーグ、オハイオ』への俺の愛は、バーナード・マラマッドの短編「夏の読書」に対する愛にとてもよく似ている。というか同質のものだ(奇しくも両作品の中心人物の名前がジョージ)。出てくる人物の言葉や振る舞いがいちいち憐れで愛しい。(ごくありふれた表現になるけれど)ありふれた人々のありふれた日々における焦燥感なり孤独感なり劣等感なりが質朴な筆致で描かれている。人物たちの悩みは概して深刻なのだけどなぜか妙に牧歌的でもある。神の手のひらの上で踊らされているような滑稽感がある。「作中人物との距離の取り方が絶妙」といった陳腐な褒め言葉はこういう作品にこそ使うべき。
ワインズバーグ(Winesburg)という架空のスモールタウンにはむろんモデルがあるのだろうけど、僕は作品外のこと(作者の経歴など)についてはあまり関心を持てない人間なので、そのへんの詳細はぜんぶ研究者に譲ることにする。そのかわりといってはなんだけど、この連作短編のなかでとくべつ気に入っているものを順不同で五つ並べてみる。アイデアに溢れた人、冒険、「変人」、タンディ、考え込む人。
もうそろそろ飯食う。梅じゃこご飯とニシンの蒲焼缶詰。三時半には入れるかな。
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