社会不適合者備忘録 高校編(7)

野菜

 僕の目線から見れば数少ない幼馴染枠である。小学時代から同じくサッカーをしており、他にもスイミングも一緒に行っていた。中学時代も同じサッカー部であり、1年時の途中くらいに塾にも誘ったので付き合いは長い方である。ただし、彼の場合は小中学校の友人ではなく高校の友人として分別している。仲が良くなかったわけではないが、彼を理由に小学校や中学校の同窓会のような集いに参加させられるのを防ぐためだ。彼のスペックとしては、特に劣った点のない、平均的に優秀な人物といったところだろうか。たいていのことは高水準でできるので、学校側からすれば模範的な優等生である。際立った長所としては無尽蔵なスタミナだろうか。高校サッカーでは中学のときよりも1試合当たりの時間が長く、フル出場すると体力が持たないという人もそれなりにいるが、彼とらいおんだけは一切ぶれていなかった。学内で行われる体力テストの長距離走も、陸上部の長距離選手に食らいついていた。ただ、そこまで元気が余り過ぎているせいか、何も考えていないことが多い。実際、彼の親御さんや中学時代のコーチ、先輩などから「あいつは何も考えていない。轢かれた猫と同じだ。」と評されていた。彼に関する逸話としては、ある日高校から帰るとき、同じ方面に帰る彼の中学の友達を駅で見送った後、モーターのように自転車を漕ぎ、20分後6駅先の地元の駅でその友達と再会を果たすというおばかさんなエピソードがある。ちなみに、田舎特有の山並みな道がしばらく続き、さらには目的地の方が標高が高いので少しずつ上りになっているというハンデ付きなのにである。また、田んぼ道でトランペットを吹いていたら職質されたというかわいいエピソードもある。やはり何も考えていないようだ。ただし、サッカーのプレー中は獰猛になってしまうので、部活の動機たちからは愛着と畏敬の念を込めて闘牛のように扱われていた。何も考えていないからだろうか。ちなみに、彼は3兄弟の長男で、9つ下の三男とよくケンカしていたらしい。相手は小学生なのに容赦なしだ。三男を泣かせてしまったところで次男が仲裁に入る。賢いのは長男ではなく次男の方だろうか。やはり何も考えていない。

ロリコンビスマス

 彼は1年のときは僕の隣のクラスにいた。僕が2組で奴が1組だ。体育や数学などで同じ授業を受けることがあったのでよく覚えている。その時から激しい人物であった…いや、よくよく思い出せばもっと過去にも会っていた。それは小学5年の頃、市内のスポーツ少年団の交流会があった時のことだった。それは、市内のいろいろなスポーツ少年団のチームが参加し、少年の家に集まって合宿をするという企画だ。そこでいろんなチームからランダムに5~6人雑居房に押し込み、一晩を過ごすというもので、僕の部屋にいた一人がこいつだったというわけだ。ほぼほぼ初対面ばかりで最初は気を使いながらかかわるという感じだったが、奴は自分のベッドにうつ伏せて体を縦に擦り付け、イヤ~ンと声を上げていたのだ。目が合ってしまった。これが奴との初対面である。忘れるはずがない。奴はホモだ。終始同部屋の男を狙っているのではないか、そんな恐怖で夜が怖かったのだ。彼もまた優秀で、特に文章を読むスピードが尋常ではなかった。あのハリーポッターの小説を、1冊たったの2時間で読了するほどには速い。また、彼の好物は幼女とビスマスである。彼の実家が学習塾を経営しているからか幼女を見ると自発的に鼻の下を伸ばしはじめる。また、ビスマスを推し元素としているようで、どんな物質なのか問うと小一時間ほど早口で語り始めるのだ。プレゼン力もあるようなのでビスマスが魅力的なものだと感じてしまった。その一部を抜粋すると、
「毒性の強い15族の中で珍しく無毒」「元素番号83番で、前3つは有毒、後ろの84以降は放射性物質でありながらひとつだけぽつんといるので、佇まいがかわいい」「亜鉛とともにニホニウムを作った」「胃腸薬にも含まれる元素で、幼女のお腹を守ってくれる」などだ。
また、なぜか毎日大きなカバンを抱えて登校しており、そのかばんには勉強道具だけでなく工具や裁縫道具が入っており、手袋が破れたりしたときは直してもらうこともあったのだ。奴は中学校は僕と違うものの家の方向は同じであるため僕と野菜と3人で自転車を漕いで帰ることもあった。つまり、奴は奴で長い距離をあんな重いものを自転車のかごに入れて走るのである。ちなみに奴は小中学校の間は野球をやっていたが、高校からはバスケ部だ。それもなかなか上手いらしい。

球技大会

 僕の高校では毎年5月ごろに球技大会がある。クラス対抗でそれぞれエントリーしたい種目に名前を連ねてチームを作り、3学年計21組で戦うというものだ。その大会が終わって着替えるときだった。教室は男子の着替える場所となっており、体操着から制服に衣装チェンジしているときだった。半裸でニヤついている奴がいる。ロリコンビスマスだ。隣で着替える野菜も幸せそうだったので、その様子を若鳥が写真に収めていた。この日を境に、野菜とロリコンビスマスは互いに愛し合っているという設定が出来上がったのだった。


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