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「自殺企図後のうつ病患者の企図前・後における感情および状況の分析」長田泰子、長谷川雅美(2013)

副題:ナラティブ・アプローチによる語りから
『日本精神保健看護学会誌』 Vol.22 No.1

 <概要>自殺企図後のうつ病患者(11名)を対象に、非構造化インタビューを実施。自殺企図前後の感情と状況を丁寧に分析し、まとめている。
<引用>
・本研究における「自殺企図」の定義…「自殺とはどういう行為かを知っている者が、自らの意志で死を求め、致死的な手段・方法を用いて自らの命を絶とうとすること」
・インタビュー結果より。自殺に至るまでの感情
【生への絶望感】<病気がよくならなかった> 
【自殺の衝動】<死ぬしかないと思った>…死ぬ前に電話しておいでって言う人もいるんだけど、本当にそうなると、携帯電話なんかそこに持っていかないですね。相談とかできない。
・分析により明らかになったこと⇒参加者は、自殺が未遂に終わったため、精神科病棟での入院治療を受けていた。しかし入院中、あるいは退院後の外来受診の場においても、強い自殺念慮が続いていることや今回の自殺の原因については、主治医をはじめとした医療スタッフに対し、本音を語っておらず、【医療者への隠された本音】が存在することが明らかになった。
⇒医師や看護師のみでなく臨床心理士やソーシャルワーカーなど多職種が連携して自殺未遂者の評価を行い、それに基づいた支援を包括的に行うことが求められ、組織的介入の必要性が示唆された。

<つぶやき>
最近まで担当していた方は精神疾患があり、季節の変わり目ということもあったのか不安定な時期が長く続いたため、何かの参考になればと本論文を手にした。主治医である精神科医は、「傾聴」を重んじ、そのクリニックの精神保健福祉士さんは「医師が本人に伝えたところをカルテで確認すると…」が常で、誰がその方に向き合っているのだろうか…と愕然とさせられた場面を何度か経験した。
その方は複数の内科的疾患を持ち、「治らないのに薬をたくさん飲まないといけない」という残酷さに、打ちのめされていた。複数の医療機関、複数のサービス事業所が関わることのメリットを見い出せぬまま、なんともモヤモヤしていた。
包括的に…多面的に…というケアのかじ取りを、だれがどのように行うのか。それは本当に難しい、と実感している。

 

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