ラグビーワールドカップ2023 準決勝 南アフリカ対イングランド 感想

ラグビーワールドカップ2023 南アフリカ対イングランドの感想。
南アフリカがイングランドとの死闘を逆転、そして2試合連続の1点差で制して2大会連続の決勝戦進出を決めた。

南アフリカ 16-15 イングランド

 劣勢が予想されたイングランドが、自分たちのやれることをやりつくして健闘した。一方、思うように試合を進められない南アフリカだったが、試合が進むにつれ落ち着きを取り戻し、試合終了間際に試合をひっくり返して勝利した。

 天候も味方して、イングランドの健闘が光った。雨でハンドリングエラーが起こりやすい状態。ボールを奪ってはキックのイングランドにはうってつけの天候(ただし、南アフリカもキックは多い)。そのキック処理も、身長にまさるイングランド優位で前半は進んだ。南アフリカは得意のセットプレーで優位を築けないどころか、ボールロストする場面も見られた。ラインナウトでボールを奪われる、モールを形成しても押せない。スクラムも前半は互角。結局、前半はイングランドが陣地獲得で優位にたった。
 また前半、南アフリカとは思えないプレイ選択が見られた。相手陣地でペナルティを得てもペナルティ・ゴールを狙わない。準々決勝のフランス戦でも見た光景。スタンドオフの先発がリボックなので想像はしていたが、この準決勝の大一番でも見られるとは。しかしその選択は裏目に出、前半トライは得られず、早々にリボックからポラードに交代となった。
 結局、12-6、イングランド6点リードで折り返した。

 そして後半、南アフリカは早々にバックスの2人、スクラムハーフとフルバックもそれぞれ経験のあるデクラーク、ルルーに替えてきた。加えてフォワードもフレッシュなメンバーを投入して流れを引き寄せようとする。
 しかし、後半53分にイングランドがドロップゴールで追加点。15-6と1プレイで逆転できない点差をつける。このままイングランドが逃げ切るのか?そんな雰囲気も感じたが、ここからじわじわと南アフリカ優勢で試合が進む。その象徴が何度も同じ光景を目にしたスクラムでの反則。前半互角に対峙していたスクラムは、徐々にその優劣が明らかとなる。もちろん南アフリカの優勢。そして乱れていたラインナウトもその安定感を取り戻し、ラインナウトモールも押し始めた。
 ようやくトライにつながったのは後半69分。スクラムで得たペナルティからタッチキック。ラインナウトモールでは押さず、すぐに展開。フォワードで押し込み、最後は最長身のスナイマンがトライ。ポラードがきっちりコンバージョンキックも決めて2点差、ペナルティ・ゴールで逆転できる点差に迫る。
 そしてここからが南アフリカの真骨頂。フェアキャッチでスクラムを選択。ここのスクラムでペナルティは得られなかったが、ポラードのキックで大きく前進。相手のノッコンによるセンターライン付近でのスクラムで狙い通りペナルティを得ると、ポラードがペナルティ・ゴールを決めてついに逆転。距離のあるペナルティ・ゴールだったが、ポラードなら問題なかった。残り2分での逆転劇。
 直後、イングランドはジョージ・フォードを投入し、キックによる3点獲得で再逆転を狙ったが、経験豊富な選手の揃った南アフリカがそれを許すことはなかった。最後は逆転を狙ってアタックを続けるイングランドのノッコンで試合終了。最後のノッコンは、準々決勝フランス戦のデジャビューか。南アフリカが死闘を制した。

 試合を終えて振り返ると、南アフリカの選手交代が凄いタイミングだった。あの早いタイミングであの決断。少しでも遅れていたら、逆転に届かなかったのではないか。デクラークの狡猾さ、ポラードのキックの安定が南アフリカに逆転をもたらした。
 一方のイングランド、最後の最後に勝利は手からこぼれおちた。ラグビー生誕200年となる今大会、イングランドの大会前の評価は低かったが、ラグビー発祥国のプライドを感じさせる粘り強い戦いだった。偉大なる敗者。

 これで決勝戦はオールブラックス対スプリングボクスの、お互いに歴代最多4回目の優勝をかけた戦いとなった。今大会、開催国フランスやアイルランドの評価が高かったが、ここまでの戦いを振り返れば、この両国による決勝戦がやはりふさわしいように感じる。そしてどんな決勝戦になるのか、楽しみでならない。

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