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つかの間の社会復帰

 久しぶりの仕事だった。1月から3月にかけて、短期ではあるが確定申告のアルバイトをすることができた。2021年3月以来だから実に3年ぶり。

 あまりにも期間が空きすぎていることと、3年前の短期アルバイトがあまりにも酷すぎたこともあって不安ではあったが、蓋を開けてみると、良い意味で予想は裏切られた。職場の人は良い人たちばかりで、たくさん助けてもらった。驚くべきことに、朝礼をしてから30分も経たないうちに仕事を放り出して雀荘に行く社員など1人もいなかった!!(過去の経験から生まれた先入観はおそろしい…)

 ところで、私のメインの業務はというと、電話番である。内容は相談日予約の変更や申告についての質問がほとんど。最初は呂律が回らないうえに常套句が板につかない気持ち悪さを感じつつ、しどろもどろになりながら対応していたが、徐々に慣れていくと、古舘伊知郎のように矢継ぎ早に言葉が出てくる。かつて、轟音の鳴り響く店内で電話をとり、お客さんの用件が聞こえず3度聞き返して怒鳴られた記憶など既に消え去った。家の固定電話を誰よりも早くとって、辞書会社の謎の外国人や絶対に名乗らない詐欺まがいの人間に対して闘った幼少期の自分がよみがえる。

”そうだ、ずっと昔から電話対応は得意だったじゃないか”

 小さくまるまった猫背はたちまち反り返り、身体は肥大して、さながら筋骨隆々のポパイである。もはや、ほうれん草もプロテインも必要ない。向かうところ敵なしだ。ただし、過度な自信は禁物。つい調子に乗って基本をおろそかにするとあとでとんでもないしっぺ返しを食らうことになる。加えて、過度な筋肉も禁物。隣の同僚からむさくるしいとの苦情が寄せられ、外回りを命じられることがある。

 つまり、人は小さな出来事やきっかけで簡単に変わってしまうことがある。それは良い方にも悪い方にも揺れ動くだろう。だから「私は何なんだ」と自らに問い、「あなたは何ですか」と他者から問われることに対して、距離を置いて、深刻に考えないようにしたい。それらの答えは仮固定されたものに過ぎず、つねに変化する可能性を持っているのだから。とはいえ、まだまだ私も達観などできず、1人になると深刻に考えがちである。

 最後に言い残したことがある。

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