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【富士山お中道を歩いて自然観察】17 常緑広葉樹の越冬 

(この記事は、観察マップ地点17 についての解説です)
お中道では冬、植物は厳しい低温と乾燥にさらされます。針葉樹と比べて1枚の葉が大きい広葉樹では、葉が受けるダメージも大きくなるでしょう。
お中道に生育する広葉樹が、冬の環境をどのようにして生き延びているのでしょうか?

お中道に生育する広葉樹で、冬でも葉をつけたままなのはハクサンシャクナゲとコケモモだけである(常緑広葉樹)。それ以外の広葉樹はダケカンバのように葉を落として越冬する(落葉広葉樹)。

ハクサンシャクナゲの場合

シャクナゲ類(常緑広葉樹)は例外的に耐凍性が高く、さらに葉の形などを変えることで冬の厳しさに耐え、高い標高域に生育することができる。

冬のハクサンシャクナゲは、葉を細い筒のように丸めて下向きに垂らし、外気にさらされる葉の面積を最小限に抑えている。

葉を丸めて越冬するハクサンシャクナゲ

それでも森林限界を越えた風の非常に強い場所では、冬の間外気にさらされていた部分が褐色の筋となって傷んでいることがある。

越冬後、筋状の変色が見られるハクサンシャクナゲ

コケモモの場合

背の低いコケモモは雪の下に埋まることで低温や乾燥などの厳しい環境から守られ、越冬することができる。

コケモモ
亜高山帯~高山帯に生える常緑低木。富士山ではカラマツ林やダケカンバ林などの明るい林床に多い。林床が一面コケモモ畑 になることも。樹高は5~10cmほどでとても背の低い木であるが、木であることに気づかない人も多い。8月下旬になると小さな赤い実がなる。

結実期のコケモモ。樹高6 cmほどしかない
林床いっぱいのコケモモも積雪期には雪に覆われる

まとめ: お中道に生育する広葉樹の越冬方法

ダケカンバは落葉する。ハクサンシャクナゲは葉を丸める。コケモモは雪の下で冬を過ごす。

次回(地点18)は、木から垂れ下がった謎のとろろ昆布(?)についてのお話です。

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