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【富士山お中道を歩いて自然観察】8 土壌形成はまだ

(この記事は、観察マップ地点8 についての解説です)
お中道は富士山北西斜面を横切るように続きます。遊歩道の一部は斜面を切り崩すように作られているので、地面の断面を見ることができます。そのような場所で土壌を観察してみましょう。

土壌は、溶岩や砂礫(スコリア)の風化でできた鉱物の粒子に、植物の落ち葉や枝が微生物に分解されてできた栄養塩が混じり合ってできる。

スコリア
火山の噴出物で、火山礫(直径2㎜~64㎜)のうち、玄武岩のマグマが上昇して冷えて固まるときに、含まれていた水などが蒸発して多孔質となったものをいう。

カラマツの落ち葉が堆積している。そこに芽生えたカラマツの実生

栄養塩は植物の根によって吸収され、植物の成長に使われる。植物にとって豊かな土壌とは、通気性や水分保持能の高い土壌粒子と栄養塩が十分に保持されている状態を有しているものである。

火山の噴火跡のような遷移初期では岩石の風化が進んでおらず、また微生物が少なく落ち葉の分解も遅いため、土壌は未発達である。お中道周辺でも土壌はごく表層に堆積しているだけである。

定規の目盛り 7 cm あたりまでにしか地表面に土壌がない
ちなみに7 cmはスマホの横幅くらい。手元のスマホでイメージしてほしい。

カラマツのような大木であっても、根は地中深くに伸長せずに浅く広く根をはっている。

カラマツの根が露出している

富士山のスバルライン4〜5合目の間で見える極相林の土壌断面を眺めて見ても、極相林になっても根は浅く地表面近くに限られている。

スバルライン4合目付近から撮影

スコリアの地面は土壌形成がまだなのもあり固まっておらず、ザラザラと崩れやすいです。次回(地点9)は、そんな崩れやすいスコリアでの樹木の定着を助ける植物についてのお話です。

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