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【富士山お中道の植物観察日記】 2024年7月3日

梅雨明け間近

前回から3週間たって、富士山は雪も融け、緑も濃くなって、すっかり夏山らしくなっていました。

それでも梅雨明け前で、梅雨前線が北陸から東北地方にかかっているので、空模様や、かなたの南アルプスの山並みからも、まだ梅雨の期間である様子が感じられます。

吊るし雲
上空に湿った気流が入りその気流が富士山を超えた時、風下にできる
南アルプスの山並み
毛無山や七面山の背後に、南アルプスの山並みが見える


樹木の実もだんだん成熟してきました。

カラマツ
コメツガ
シラビソ
ミヤマハンノキ
ミネヤナギ
小さな種子を包んだ綿毛が飛び始めた

ウスノキは、開葉直後はアントシアンの赤い色が目立っていましたが、すっかり緑色の葉になりました。
葉の光合成系で、強光から守られる仕組みが完成したのです。花が開きましたが、下を向いているので、写真からは見えません。

ウスノキ


夏のお中道を彩る花々も咲き始めました。

タカネバラ
ベニバナイチヤクソウ
周りには白い花はコケモモ
ミヤマハンショウヅル


林床のコケ観察

お中道の下側には、最初に風衝地に定着した古いカラマツと、その後の遷移で侵入した若いシラビソの混交林が広がります。

この林の林床のコケを観察してみました。

森林限界のカラマツ―シラビソ林

林床を覆っているコケでは、イワダレゴケが最も多く、次いでタチハイゴケ、そしてチシマゴケがみられます。

イワダレゴケ(四角で囲った部分)、タチハイゴケ(丸で囲った部分)
チシマゴケ

太いカラマツの根元を覆っているイワダレゴケ群落がありました。
このカラマツの樹齢は、300年を超えていると思われます。

イワダレゴケ群落

倒木の上のコケの中に、コメツガの実生がありました。

コメツガの実生(矢印の先)、
キヒシャクゴケ(二重丸で囲った部分)、
イワダレゴケ(四角で囲った部分)

倒木の腐朽が進むにつれてキヒシャクゴケ、そしてイワダレゴケ・タチハイゴケ群落へと遷移していきます。

倒木上では小さな実生であっても、コケ群落に埋まることが少なく、実生が定着しやすくなります。
これは倒木更新と言われています。


富士山は、まもなく本格的な夏山シーズンを迎えます。


先月(6月)のようすはこちら↓



富士山お中道を歩いて自然観察」の連載はこちら↓

「富士山お中道の生物図鑑」の連載はこちら↓
今回の登場人物たちの紹介もあります。


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