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【富士山お中道を歩いて自然観察】13 表層雪崩

(この記事は、観察マップ地点13 についての解説です)
斜面の下に向かって高木が折り重なって倒れているのに、その木の根元の植物が無傷で繁茂している場所があるのに気が付いたでしょうか?これは表層雪崩の跡です。

表層雪崩は、冬、雪の表面だけに被害をもたらす。水分の少ない軽い雪が多量に降り積もると、積雪内部にあるすべり面から上の雪が流れ下るので、立木は倒されるが林床の植生は無傷のまま残ることが多い。

林床
森林の地面のことをいう。林床は、親木の後継樹、草、ササ、コケなどで占められている。親木の林冠によって太陽光は吸収されてしまうので、よく成熟した森林の林床は暗い。

表層雪崩の断面イメージ
上層の雪が流れ落ち下層の雪は残る。さらに雪の下の林床植生は無傷のまま。

表層雪崩の跡地では、カラマツやダケカンバの高木はなぎ倒されているが、林床にあったシラビソ幼木、ハクサンシャクナゲ、コケモモなどはそのまま生存しているようすを見ることができる。

写真は数年前のものなので、現在では植生が回復しているかもしれない(ただし雪崩が再発していなければ)。

この後には、シラビソ幼木や新たに入ったカラマツが育ち、林として回復するだろう。

表層雪崩から年月が経過した場所では、林の回復が進み、カラマツなどの幼木で倒木がすでに見えなくなっている。

表層雪崩から数年が経過した場所


植生に影響を与えるもう一つの雪崩についてはこちら

植生全体を破壊するスラッシュ雪崩とは違い、表層雪崩では林床植生が残るため植生の回復が早く進みます。
次回(地点14)は、光環境に応じて葉が変化するというお話です。

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