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よく分かる インバウンド集客 #7 ~外国人旅行者に選ばれる施設になるためのノウハウとヒント~

『訪日外国人受入環境整備』(4/4)

#6 の続きです。

7、多言語ホームページ(つづき)

では、多言語ホームページ制作するとなったら、どのような手段があるのか。それを紹介する前に、まず整理すべきポイントを下記に示します。

□1 予算はある?ない?
□2 自前で制作する?外部に依頼する?
□3 何を、どの程度の質・量で伝える?
□4 誰に伝える?(何言語で伝える?)
□5 どれくらい見てもらいたい?
□6 情報は追加・更新する?

整理すべきポイント

上記1~6は相互に関連しており、制作手段の選択に影響するため、事前にしっかり整理しておきましょう。

整理すべきポイントを理解した上で以下のように分類し、それぞれ特徴を紹介します。特徴は傾向として捉えて頂ければ幸いです。なお、基本情報のみの簡素な掲出や、記事としての掲出・SNSでの掲出は対象外としています。

●内部(自前)で制作
 ┗(1)ホームページ制作ソフト・HTMLタグなど
 ┗(2)Google ビジネスプロフィール(旧Google my business)

●外部で制作
 ┗(3)友人・知人に依頼
 ┗(4)ホームページ制作会社に依頼
 ┗(5)観光サイトへの掲載
 ┗(6)旅行メディアへの掲載

(1)ホームページ制作ソフト・HTMLタグなど

○ ゼロからのオリジナルゆえ、自分が思うサイトにしやすい
〇 (既に使用されていない限り)好きなURLを選べる
○ 外に出ていくお金が少ない

× 企画構成・デザイン・翻訳・制作などに時間がかかる
× それらスキルを得ていない場合、学ぶ時間もかかる
× ドメイン取得が必要
× 対応言語数と比例してコスト・労力が高くなる
× 更新の都度、翻訳作業が発生する

最近は多様なテンプレートがあるため、それらを活用することで企画構成・デザイン・制作時間を短縮することが可能です。

(2)Google ビジネスプロフィール

○ Google の機能であり、検索結果との相性が良い
○ ドメイン取得が必要ない
○ 無料で・誰でも・すぐに制作できる
○ 情報の追加・更新・修正や変更も無料でできる
○ 世界中の言語に対応

× テンプレートゆえ自由性が乏しい
× 掲載できる情報量が限られている
× 自動翻訳の精度により誤訳表示される可能性がある
× 第三者による情報書き換え等のリスク

絶対的にオススメなのがこちらの「Google ビジネスプロフィール」です。無料かつ、Google検索との相性がバッチリ!少なからず課題は残りますが、活用しない手はありません。

(3)友人・知人に依頼

○ 親しい人(あなたの施設をよく理解している人)に依頼できる
○ 薄謝で済む

× イメージと違うものが出来上がってきたとき言いづらい
× 情報の追加・更新・修正や変更を頻繁に依頼しづらい
× ドメイン取得が必要
× 対応言語数と比例してコスト・労力が高くなる

家族・親族も含まれると思いますが、こちらは関係性によるところが大きいです。一般的には親しいがゆえの課題が生まれることをよく耳にします。

(4)ホームページ制作会社に依頼

○ 一定のクオリティのものをおまかせで依頼できる
○ ドメイン取得もサポートしてくれる 

× 高額になりやすい
× 対応言語数と比例してコスト・労力が高くなる
× 情報の追加・更新・修正や変更の度にコストが発生する

餅は餅屋。プロへの外注・アウトソーシングです。ホームページがあって当たり前のような時代、お金にゆとりがある場合は、こちらの選択肢も一手です。但し、ただ多言語化すればよい、というものではありません。外国人旅行者の思考・嗜好に詳しいホームページ制作会社はまだ多くないので、依頼する際は精査することが重要です。

近年はサイト全体を多言語化してくれるサービスもあります。公共交通機関などへの導入も進んでおり、一定の予算があるようでしたら、こういった選択肢も考えられるのではないでしょうか。過日、先方の担当者から話を伺った際、静的なページに強い点、言語・ページ数に対してランニング費用がかかる点が印象に残りました。

(5)観光サイトへの掲載

○ 地域へ関心を持っているユーザーに訴求できる
○ 掲載できる場合は無料のケースが多い
○ 日本語で入稿すると翻訳して掲載してくれるケースが多い

× 自治体・DMO・協会団体によっては仕組みがない・募集していない

DMO・自治体・協会団体が観光サイトを多言語で提供している場合、そこに掲載することが可能な場合があります。但し、年度予算が限られており選択する側の意向・都合がありますので、相談から始めることになり、掲載できない可能性も十分あります。

(6)旅行メディアへの掲載

○ Google 以外での露出が期待される
○ Google SEO に強いケースもある
○ 日本語で入稿すると翻訳して掲載してくれるケースが多い
○ 管理画面機能が付いているケースが多く、
  その際は情報の追加・更新・修正や変更も無料でできる
○ 十分な機能・情報が搭載されている
○ ドメイン取得が必要ない

× 無料・有料が混在。但し(4)より安いケースが多い
× テンプレートゆえ自由性が乏しい
× 掲載できる情報量に制限があることも
× メディアが得意とする言語がある(対応言語が限られる)
× 管理画面機能がない場合、
  情報の追加・更新・修正や変更は有料になるケースがある

これの良し悪しは旅行メディアによります。旅行メディアには口コミサイトも含まれます。公開されているサイト全体の閲覧数(ページビューやユニークユーザー数)と施設情報ページの閲覧数には大きな差があります。施設単位で見たとき閲覧数はどうか、知名度アップ・送客効果は期待できるのか、など公開されていない情報について問い合わせる必要があります。

まとめ。結局どうすればいいの?

まとめとして、私から2点お伝えします。

1点目。Google ビジネスプロフィールは活用しましょう。この理由は明白で、無料かつ一定の効果を期待することができるからです。施設の情報が詳細になるとGoogle自体にもメリットがあるため、正しく施設とユーザーに対してメリットを提供しています。同様にTripadvisorも掲載条件が合致する場合は活用すべきです。飲食店の場合は、大衆点評なども対象として検討してよいと思います。なお、施設を複数持っている場合は最新情報担保のため、管理者を立てることが大事になります。

2点目。あとは各社の状況次第です。インバウンドへの期待値も、施設自体のポテンシャルも、予算も、体制も、効果の考え方も…各社異なります。何をもって効果とするのか、答えは自分たちで見つけていく・決めていく必要があります。そして、答えは常に正しいか分かりません。時代とともに変化もしていきます。あくまで多言語ホームページは手段でしかないのです。


8、多言語予約受付

国内外からの予約を24時間365日受け付けることができます。また、電話での予約を減らす(Webに移行させる)ことができます。電話での予約は歓迎のように思えます。しかし、いつ・何語で電話がかかってくるか分からないのが懸念点です。瞬間的な対応が必要となるため、相互の話し言葉を理解できないとハードルが高いコミュニケーションツールです。それは消費者にとってもです。

そこで、Web予約が便利に機能します。お互い、慣れない言語で話すというストレスがなく予約を行えます。フォーム形式の場合は届いたメール・メッセージを(自動)翻訳し、返信するまで時間の猶予があります。チャット形式の場合はリアルタイム性が増す分、随時の問合せを受ける体制を整えておく必要があります。発展中のAIチャットも状況に応じて検討すべきツールです。

Web予約・チャットなどの機能は、多言語ホームページとセット・連動するものですので併せて整理しましょう。また、(6)旅行サイトの施設ページにセットで付随しているケースも多いので、併せて確認してみましょう。Web予約については、決済と連動するもの・しないものに分かれます。キャンセルへの規定や対応なども付いて回りますが、適切に設定すると強力な武器・防具になります。

なお、アナログにメールアドレスを多言語ホームページに記載する、という手段もありです。SNSを多言語で運用している場合は、そちらでメッセージを受け付けるでもよいです。要は、予約したいと思っているときに予約できないのはチャンスロスになる、ということを理解しておけばよいでしょう。あると確実に便利です。是非、検討してみてください。


外国人客・従業員の両者にとって、あると便利な訪日外国人受入環境整備 8つの手段は以上になります。なお、インバウンド集客との関係が濃いものを中心に整理・紹介したため、観光庁が例示するもの(例:トイレの洋式化・段差の解消など)とは異なります。参考までに観光庁が宿泊施設に向けてまとめたポイントを共有します。

よく分かる インバウンド集客 #8 に続きます
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文|寺岡真吾(株式会社ぐるなび LIVE JAPAN企画部)

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