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よく分かる インバウンド集客 #6 ~外国人旅行者に選ばれる施設になるためのノウハウとヒント~

『訪日外国人受入環境整備』(3/4)

#5 の続きです。

訪日外国人受入環境整備 あると便利な8つの手段

6、Wi-Fi 設置

おなじみ観光庁の訪日外国人消費動向調査によると、日本滞在中に役立った旅行情報源No.1がスマートフォンです。自身の携帯電話を海外に持っていき、いつも通り利用する。使い勝手含めてストレスの少ない行為であり、それが当たり前になって久しいです。

《出典》観光庁 訪日外国人の消費動向 2020年1-3月期(速報) 報告書

また、日本滞在中に役立った旅行情報においては、情報のはずなのに無料Wi-Fiが上位にランクインしており、いかに役立ったかを物語っています。

《出典》観光庁 訪日外国人の消費動向 2020年1-3月期(速報) 報告書

同じく観光庁の「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関するアンケート」によると、近年 困りごと上位にランクインしていた無料Wi-Fiはランクを下げています(=解消傾向にある)。これは「無料Wi-Fiの設置が進んだ」という考え方と「他の代替手段が選ばれた」という考え方もあります。

《出典》令和元年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備に 関するアンケート」調査結果

一方、地方部においては「無料公衆無線LAN」で困る割合は都心部に比べるとやや高く、百貨店・ショッピングセンター等「商業施設」・「飲食店」の割合が高くなっています。

《出典》令和元年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備に 関するアンケート」調査結果
《出典》令和元年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備に 関するアンケート」調査結果

では、地方部において利用可能な場所が少ないのか、というとそうともいえなさそうです。むしろ、無料Wi-Fiを見つけてから不満が発生しているのかもしれません。下記グラフを見ると利用可能な場所は多いが、「認証や利用登録が簡単でない」と考えた人は半分以上います。スピードや接続面などの「技術的不具合」への不満も見受けられますが、これはなかなか改善し難いところ。声が大きく、かつ改善できる余地として「Wi-Fi利用についての案内を多言語表示」「メール登録を不要にすること」があるのではないでしょうか。

《出典》令和元年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備に 関するアンケート」調査結果

(一社)九州観光推進機構が2019年にリリースした資料によると、九州訪問時に利用者した通信手段について、各国・地域で差が見られました。

《出典》(一社)九州観光推進機構
九州訪日外国人旅行者のインターネット通信環境、及びWi-Fi電波実態調査結果について

をもとに作図

50%超のものを各国・地域ごとに吹き出しで紹介していますが、公衆無線Wi-Fi(いわゆる無料Wi-Fi)が特に有効な地域として、香港・マカオ、北アメリカ、オセアニア、その他アジアが挙がります。

モバイルWi-Fiルーターは複数人でも利用できるのが便利。一方、SIMカードは個人利用に特化されますが、ルーター機器を持ち運ぶ手間が省けます。いずれも容量と速度に連動する形で料金に差が生まれます。使い放題・高速でない場合に公衆無線Wi-Fiと出会えたら、それを利用する場面が出てくるかもしれません。

そもそも施設が無料Wi-Fiを入れるメリットは何でしょうか?一つは、無料Wi-Fiスポットになることで集客効果があるというものです。ただ、こちらについて私個人は懐疑的でして、普及が進んでいなかった時代の話と捉えています。どちらかというと二つ目、(大容量のライブ配信を含めた)SNS発信の可能性が高まるの方が今の時代に即した考え方ではないでしょうか。

前述資料によると、利用場面は宿泊施設が多いようです。次いで飲食店。歩きながらというより休んでいる場面での利用が目に浮かびます。それ以外の施設は、Wi-Fi接続のレジ・POS・プリンターなどの導入、長期間・長時間働くスタッフの利便性向上、滞在者に対するおもてなしといった観点も踏まえて導入を検討するのが良いでしょう。

7、サイトの多言語化

集客ならびにプラス1の注文・購入や客単価アップに加えて、チャンスロスや、外国人客とのトラブル&コミュニケーションミスの回避にも有効です。集客イメージが強いサイトの多言語化ですが、現場での受入環境整備として、ここでは接客時に役立てている施設の例を紹介します。

その小売店は外国語を話せるスタッフが乏しく、シフトの状況によっては不在になっています。一方、外国人客はいつ訪れるか分からない状況です。外国語が話せるスタッフが不在の際、外国人客から商品に関する問い合わせがあったとき、スタッフはタブレットを顧客に提示します。何を見せているのか。それは自店の多言語化された公式サイトであり、そこにはよくある質問と回答(FAQ)を多言語で載せているのです。問い合わせのうち、どれかはあてはまるだろう、というのと、他にも潜在的な疑問があるであろう、という社長の考えだそうです。また、問い合わせ対応の時間を減らすことによって、生産性向上を高める狙いがあります。

確かに飲食店で打ち合わせをしている際、スタッフが電話対応をしている場面によく出くわしました。よく聞いてみると、問い合わせ内容は似たようなものばかり(例:個室はあるのか・メニュー内容は変更できるのかなど)。そして、1問合せあたり2~5分時間を割いていることも気になりました。ちりも積もればなんとやら、です。売上につながる問合せ対応は重要なことですが、生産性を高める工夫も重要です。その点でも、ホームページにFAQを予め掲載しておくことは有効でしょう。

予めFAQを掲載するもう一つのメリットは、無論「集客」です。サイトを訪れたユーザー、つまり見込み客が抱える不安を払しょくすることによって、来店確率を高める(離脱を減らす)ことができます。ユーザーは疑問を持ってWeb検索することが多く、Googleも検索結果に質問と回答を表示したり、回答を遷移先のサイトでハイライト表示される昨今です。疑問が解消されなければ、ユーザーは離脱し求める答えを探しに他所へ行ってしまいます。


では、多言語ホームページ制作するとなったら、どのような手段があるのか。この続きは次のパートで紹介します。

よく分かる インバウンド集客 #7 に続きます
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この章(訪日外国人受入環境整備)のはじめから読む場合はこちら

文|寺岡真吾(株式会社ぐるなび LIVE JAPAN企画部)


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