よく分かる インバウンド集客 #8 ~外国人旅行者に選ばれる施設になるためのノウハウとヒント~
プロモーション 身近な12の手段
#4~7 にて訪日外国人受入環境整備について記述してまいりました。ここからは来店前のプロモーションについて説明します。
「認知」から始まるプロモーションにおいて、外国人への訴求手段としてどのようなものがあるのか。逆を言うと、外国人は日本の情報を何で仕入れているのか。その答えは観光庁のデータに載っています。
上記は3,188万人が訪日した2019年のデータであり、出入国制限が緩和された際には数字・順位の前後があると思います。ここでポイントとなるのが、上記は全国籍・地域の結果であること。各地域ごとのデータもありましたので、訪日上位国を中心に整理してみました。
ポイントを整理してみましょう。まず上位を占めるのは「実際に訪れた誰かの体験談」です。
国・地域別に特性を見てみると、韓国:個人のブログ、SNS / 台湾:JNTO、テレビ番組、旅行専門誌 / 香港:JNTO、旅行専門誌、テレビ番組、地方観光協会ホームページ / 米国:日本在住の親族・知人、口コミサイト、動画サイト、自国の親族・知人 の信用度合いが高い傾向にあります。複数回答ゆえ何か一つの情報のみを見聞きしている、というわけではないはずですが、ターゲットごとの戦略設計時にお役立てください。
さて、施設の視点で見た際、日本政府観光局のホームページやテレビ番組といわれても、手出しできない領域に思えます。そこで、施設にとってもう少し身近なプロモーション手段について大まかに12に分け、それぞれの特性を施設の活用事例含めて紹介します。
1、紹介・口コミ
家族・友人・知人による紹介を聞いた際、写真や動画がなかったとしても「行ってみようかな」「買ってみようかな」「借りてみようかな」など思ったことありませんか?個人的な体験の感想のはずですが、そこにはほとんど嘘がなく、相手に合わせた情報であり、信用度合いが非常に高い情報です。体験者の表情や声色も訪問判断できるポイントになるのでしょう。
2、口コミサイト
口コミはプラスのスパイラルに入るのか、マイナスのスパイラルに入るのかで集客効果に大きな差が生まれます。
浅草にあるお好み焼き屋「つる次郎」は、来店した外国人客に対して、積極的なコミュニケーションを取ることで口コミ登録を促進し、多数の良質な口コミを得て、集客に成功している施設です。
店舗スタッフに『食べられないものはありますか?』と、来店時に聞くことをオペレーションマニュアルに追加し、訪日客とのコミュニケーション機会を設けています。さらに集合写真を撮影し、食事中に印刷して渡しています。当然喜んでもらえるわけですが、実は写真の裏側には口コミサイトへ誘導するQRコードがあり、笑顔になってもらっている状況化で口コミ投稿を促進する仕掛けが奏功しています。
ちなみに、日本生まれのQRコード。欧米系では一般的でない、と以前耳にしました。しかしながら、調べてみたところ以下データを見る限り、むしろ日本よりもQRコードを使用した割合は多く、最近は浸透しつつあるように思えます。とはいえ、必要に応じて [ Scan this code ] など記載・補足するとよいでしょう。
外国人旅行者のための口コミサイトといえば、トリップアドバイザーが最も有名です。トリップアドバイザーではランキングの仕組みについて以下のようにコメントしています。
ここで一つ分かることは「最新の情報」が大事だということ。これは、当然ですよね。3年はおろか、1年前の情報も疑わしい時代です。つまり、継続的に新しい口コミを投稿してもらうことが有効だと分かります。
また、LIVE JAPANはトリップアドバイザーと正式に連携しています。数年前ではありますが、当時の担当者から伺った話によると「質」と「量」についても重要視しているとのことでした。「良いレビューは悪いレビューより大事であり、レビュー数は多いほどよい」とのコメント、ここで共有しておきます。
なお、個人または企業に対して肯定的な口コミを書いてもらうよう金銭を授受するのみならず、インセンティブを付与することは虚偽の口コミとみなされます。
「幸せは歩いてこない、だから歩いていくんだね」という歌詞がありますが、口コミも同じです。待っているだけではなかなか投稿されません。私がヒヤリングした口コミをきっかけとした集客に成功している施設は、必ずといってよいほど仕掛けを用意していました。経営者にどのようにして口コミを増やすことができたのか取材した内容を2つ紹介します。
(1)鎌倉の飲食店
目標を決めて積極的に声かけした点、口コミに対して返信している点に注目です。チェキなどのツールを使って、会話するきっかけづくりを仕組みとして用意している点がうまいところです。
(2)都内の写真スタジオ
話を聞きながら、インセンティブ→良質な口コミ投稿依頼ではなく、インセンティブ→口コミ投稿依頼というのが絶妙なラインだな、媒体も指定していないしな、と思いました。もう一つはインセンティブ内容がユーザーにとって本当に欲しいもの、という点がうまいと思った点です。施設にとって、ユーザーの写真データは手元にとっておいてもしょうがないものであり、原価がかからないもの。それでいて、ユーザーが欲しいものです。これは参考になりました。
以上、プロモーション 身近な12の手段について、1・2でした。
よく分かる インバウンド集客 #9 に続きます
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文|寺岡真吾(株式会社ぐるなび LIVE JAPAN企画部)
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