KORG Live Extreme

コルグが開発した業界史上最高音質によるインターネット動画配信システム「Live Ext…

KORG Live Extreme

コルグが開発した業界史上最高音質によるインターネット動画配信システム「Live Extreme」の開発者がオーディオ配信技術をエンジニア目線で綴る、開発者ブログです。 Live Extreme公式サイト : https://live-extreme.net

最近の記事

2023年振り返り

新年明けましておめでとうございます。昨年は立体音響技術の導入や海外進出など、Live Extremeにとって技術的にもビジネス的にも大きなターニングポイントとなる1年でした。今回はこの1年を各ウェブメディアに掲載されたニュースや特集記事とともに振り返ってみようと思います。 年間配信公演数の増加2020年10月の初配信以来、Live Extremeを使った配信は通算137公演となっています(2023年12月31日現在)。2020年より続いてきたパンデミックが収束したことで、世

    • Artist Connection完全攻略(その1): CEOインタビュー

      Streamsoft社が2019年に発表した「Artist Connection」は、アーティストやスタジオ、ライブハウス等が利用するためのクラウド・サービスであり、コンテンツのアーカイブ構築やライブ配信が可能な配信プラットフォームです。 間もなくリリースされる「Live Extreme Encoder v1.12」では、Artist Connectionを通じてライブ配信できる機能が追加される予定です。国内ではいくつもの配信プラットフォームと提携していますが、海外ではこれ

      • Dolby Atmosを徹底解説!(後編)

        前編ではDolby Atmos技術そのものについて解説しましたが、今回はLive Extremeでの配信方法や再生方法について紹介します。 Live ExtremeでDolby Atmos配信する方法Live ExtremeでDolby Atmosを配信する場合の技術仕様は以下の通りです。 コーデック: Dolby Digital Plus サンプルレート: 48kHz ビットレート: 384, 448, 576, 640, 768, 1024 kbps チャンネル

        • Dolby Atmosを徹底解説!(前編)

          2023年6月よりLive ExtremeでDolby Atmosの配信に対応しました。数ある立体音響技術の中でも、対応サービスやコンテンツの数、再生環境ともに最も充実していますが、劇場用と家庭用の仕様に違いがあったり、対応コーデックが複数あったりして、その全容を理解するのはなかなか困難です。今回は家庭向けインターネット配信に焦点を当てつつも、Dolby Atmosの全体像について技術解説していきます。 Dolby Atmos® (ドルビーアトモス)とは米Dolby Lab

        2023年振り返り

          HPLによる高音質立体音響ストリーミング

          本日、約3ヶ月ぶりとなる「Live Extreme Encoder」の最新版 (ver.1.10) をリリースしました。本バージョンの目玉は音声の同時入力チャンネル数が最大12chに増えたこと、そして「HPL」というバイノーラル技術のエンコードに対応したことです。これにより、ヘッドホン視聴を前提とした立体音響配信が簡単に行えるようになったほか、ステレオ配信でも音質面でのメリットが期待できます。今回はこの HPL について技術解説します。 サラウンドから立体音響へ音場をより忠

          HPLによる高音質立体音響ストリーミング

          AURO-3Dによる高音質イマーシブ・オーディオ・ストリーミング

          Live Extremeは2021年から最大192kHz/24bit/7.1chのサラウンド音声のライブ配信に対応していますが、最近は空間オーディオについてのお問い合わせもいただくようになりました。実はビット・パーフェクトでサラウンド音声が配信できるようになると、「AURO-3D」という技術を使って、ハイト・スピーカーを含む空間オーディオにも高音質で対応することが可能です。今回はそのAURO-3D技術について解説したいと思います。 空間オーディオとは2019年にAmazon

          AURO-3Dによる高音質イマーシブ・オーディオ・ストリーミング

          2022年振り返り

          新年明けましておめでとうございます。おかげさまで、旧年はLive Extremeにとって、技術的にも配信実績としても、着実に成長できた1年となりました。今回はこの1年を各ウェブメディアに掲載されたニュース・トピックとともに振り返ってみようと思います。 年間配信公演数の増加2020年10月の初配信以来、Live Extremeを使った配信は通算68公演となっています(2022年12月31日現在)。1年あたりの配信公演数も年々増加しており、2022年は年間45公演を達成しました

          2022年振り返り

          Live Extreme Encoder v1.9をリリースしました

          本日、約3ヶ月ぶりとなる「Live Extreme Encoder」の最新版をリリースしました。一部機能を除き、主に配信管理者の運用面での改善を目的としたアップデートとなっています。本記事ではLive Extremeを運用中、または導入を検討中の方向けにv1.9の改善点を説明していきます。 追いかけ再生に対応ライブ配信の視聴者にとって、うまく予定が合わず、ライブ配信の開演に間に合わなかった時には悩ましい決断を迫られます。音楽コンサートは、オープニングからエンディングまでが一

          Live Extreme Encoder v1.9をリリースしました

          「Direct ABR」による高画質配信

          本日「Live Extreme Encoder v1.8」がリリースされました。本アップデートには様々な改善が含まれていますが、目玉となるのが「Direct ABR」というLive Extreme独自の機能です。この機能はLive Extremeを視聴可能なユーザー数を増やすだけでなく、インターネット動画ライブ配信システムの画質の底上げをできるポテンシャルを有しています。今回はこの「Direct ABR」について技術解説していきます。 Adaptive Bitrateとはイ

          「Direct ABR」による高画質配信

          OTOTEN 2022: "空気録音"配信への挑戦

          コロナ禍をきっかけに、音楽コンサートのみならず、オーディオ•イベントもインターネット配信されることが珍しくなくなってきました。スピーカー再生を通じてオーディオ機器の違いを聴くことを主目的とするオーディオ•イベントの配信には、音楽コンサート配信とはまた違った難しさがあります。今回は2022年6月に行われた「OTOTEN 2022セミナー」配信について、主に技術的な側面から解説していきます。 空気録音とはオーディオ機材を比較評価することを目的として、スピーカーの前にマイクを設置

          OTOTEN 2022: "空気録音"配信への挑戦

          Live Extreme Encoder v1.7をリリースしました

          Live Extreme Encoder v1.6のリリースから早4ヶ月、2022年6月3日に最新版となるv1.7 をリリースいたしました。基本的には運用に必要な小改善やバグ修正がメインですが、いくつか重要な変更も含まれますのでご紹介いたします。Live Extremeを運用中、または導入を検討中の方のご参考になれば幸いです。 HLSをLive Extremeの基本プロトコルに変更視聴者の方が意識する内容ではありませんが、配信プロトコルの変更はサービス運営側にとっては大きな

          Live Extreme Encoder v1.7をリリースしました

          PCのウェブ•ブラウザとHDMIによる高音質サラウンド再生

          PCでハイレゾを含む高音質再生を行う場合、KORG DS-DACシリーズなどUSB DACを接続する方法が広く普及していますが、意外と盲点なのがPCのHDMI出力とAVアンプの組み合わせによるハイレゾ再生です。特に映像をテレビやプロジェクタに出力する場合や、サラウンド音声を再生する場合は、USB DACよりもお手軽に高音質再生が実現できオススメです。今回はPCのウェブ•ブラウザとHDMIでロスレスやハイレゾのサラウンド•コンテンツを楽しむ方法をご紹介します。 HDMIのオー

          PCのウェブ•ブラウザとHDMIによる高音質サラウンド再生

          ストリーミング・サーバーにおける音質劣化

          「Apple Music」のデフォルト配信フォーマットはAAC 256kbpsとなっています。近年の動画ライブ•ストリーミング配信においても、音声はAAC 256kbpsが標準的ですが、同じビットレートとは思えないほど音質が悪く感じられます。その理由として、前回まで取り扱ってきたような事情(ビデオ•デバイスの貧弱なオーディオ入力設計、クロックの取り回し)もありますが、ストリーミング•サーバーにおける音質劣化も決して見逃してはならない大きな要因です。 ライブ動画配信におけるス

          ストリーミング・サーバーにおける音質劣化

          高音質ストリーミング配信に最適なオーディオ・コーデックとは

          ストリーミング配信においては、再生側のインターネット回線速度に対し、コンテンツのデータレートが十分小さくないと、再生中に音が止まる (バッファリングが発生する) 可能性があります。このため、ダウンロード配信と比較して、データの圧縮技術がより一層重要となってきます。Live Extremeでは音声コーデックとして、ロスレスかつハイレゾに対応したオープン・フォーマットである「FLAC」と「Apple Lossless」を採用しています。今回はその理由について説明していきます。

          高音質ストリーミング配信に最適なオーディオ・コーデックとは

          ビデオとオーディオのクロック同期

          動画のライブ配信において、ビデオとオーディオの同期は避けて通れない問題です。ビデオとオーディオの同期は、時間経過とともにビデオとオーディオの同期がずれることを防ぐためのクロック同期の話と、ビデオ機材内部で発生する遅延量にオーディオの遅延量を合わせる「リップシンク」の話がありますが、今回は前者について、一般的な同期方法とLive Extremeの違いについて説明します。 SDI規格とオーディオ・エンベッダオーディオ畑の人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、動画のライブ配信

          ビデオとオーディオのクロック同期

          Live Extremeを支える技術

          Live Extremeは2020年9月に「業界史上最高音質の動画配信システム」として発表させていただきました。「最高音質」を謳う根拠として、LPCM 384kHz/24bitやDSD対応など、対応フォーマットのスペックに基づいている部分もありますが、それらはLive Extremeの音質を司る一要素に過ぎません。今回はLive Extremeの概要と、その音質を支える技術要素について紹介していきます。 Live Extreme配信システムの概要以下に、Live Extre

          Live Extremeを支える技術