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法務局の民事行政部長が投げかけた疑問

照会内容

 令和4年(2022年)8月に、東京法務局の民事行政部長が、法務省本省に問い合わせた内容が公開されている。(『民事月報』77巻 9号 (2022年9月) p229)

国籍法第13条第1項の規定に基づく日本国籍離脱の可否について
(照会)
 標記について、今般、台湾出身の重国籍者から、別添資料 (一部掲載省略)を添付して国籍離脱の届出がなされましたが、 当該資料により、 届出人を外国の国籍を有する日本国民と認めることはできないものと考えます。 しかしながら、 届出人は、台湾で公務員に就職するために、 日本国籍を離脱する必要があるとの事情もあることから、適法な届出ではないものとして取り扱うことにつきいささか疑義があります。
 つきましては、本件届出の取扱いについて何分の御指示を賜りたく、関係書類を添えて照会いたします。

令和4年8月5日付け2国2第12号東京法務局民事行政部長照会
(『民事月報』77巻 9号 (2022年9月) p229 より)

 「別添資料」には、
・台湾当局発行の国民身分証
・台湾の戸籍謄本
・台湾パスポート

が含まれている。
 少なくとも、この時点(2022年8月)までは、台湾当局発行のこれら公的書類三点セットを示したとしても、「当該資料により、 届出人を外国の国籍を有する日本国民と認めることはできない」と東京法務局の担当部長は認識しており、この立場の人の「国籍離脱」届けは、「適法な届出ではないものとして取り扱う」(受理しない)ことが前提の運用だったことがうかがえる。
 そのような中で、本人の特別な事情のため、日本国籍の離脱をさせてあげたいけれども、どうにかして認めてあげることはできないだろうか? というのが問い合わせの趣旨であろう。

では、蓮舫氏の重国籍騒動とは何だったのか?

 2016年秋に持ち上がった、蓮舫氏の『重国籍騒動』は、氏が「台湾当局の籍」を残していたことが「国籍法14条1項が定める国籍選択義務」を果たしていなかったのではないか?と問題にされたものだ。
 だが、国籍法14条1項の条文は

第十四条 外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が十八歳に達する以前であるときは二十歳に達するまでに、その時が十八歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。

と言う内容だ。対象は「外国の国籍を有する日本国民」である。

 繰り返しになるが東京法務局の民事行政部長は、2022年8月時点で
「当該資料(台湾当局の、身分証、戸籍謄本、パスポート)により、 届出人を外国の国籍を有する日本国民認めることはできない」と認識していたことがわかる。

 では、蓮舫氏の重国籍騒動とは何だったのか?


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