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ブラジルじゃないよ、ブリュッセル だよ

それは3日前のこと。
私は中国人の友達と、フランス人の友達と喋っていた。

話題は、「ネットのおかげで今は母国と楽に安く通信ができるけれど、ネットがない時代は本当に大変だったよね。その時代に単身で異国に移住した人たちは、ほんとリスペクトだよね〜」というもの。

というのは、私含め、このメンバーは皆、「単身で異国に移住してきた」という共通点がある。
もっとも、この中では私が一番新米。フランス人の友達はそもそもEU国籍だから滞在許可証はいらないし、中国人の友達は15年前にこちらに移住し、すでに永住権を持っている。
こちらにきたばかりで、身分が一番不安定なのは、私だけである。
まぁそれは良いとして。

我々、同世代の女子3名はポルトワインをチビチビ飲みながら、「ネットがない時代は国際電話がどれほど高かったか?」とか「エアメールで母国の家族や友達と連絡を取るのにどれほど時間がかかるか?」を想像しては、いかに現代が恵まれた時代か、我々が恵まれているかを語り合い、「テクノロジーのおかげだね。本当にありがたいね」と言い合っていた。

私は、コーディアルグラスに3杯目のポルトワインを手酌で注ぎながら言った。
「日本人の友達で、今ブリュッセルに住んでいる人がいるんだけど。彼女は20年以上前に、単身でパリに移住してきたの。当時はネットがないから本当に大変だったと言ってた。そして、そういう大変な想いを体験しているから、単身で移住してきた私にもすごく優しくて。この前、ハーグまで会いに来てくれたんだけど、なんと、日本食を作って、何種類もお弁当箱に入れて持ってきてくれたんだよ!」

それを聴いていた女子二人は、ほろ酔いで少しピンク色になっていた頬をほころばせ、「すごい!!わざわざ日本食を作ってきてくれたの?やっぱり日本人は優しいねぇ〜!すごいなぁ!しかもブラジルからって、物凄い遠いのに!このコロナの中、何時間かかったんだろう?すごいねぇ」と口をそろえた。

「え?ブラジル?ブラジルじゃないよ、ブリュッセル だよ、ブリュッセル !」
と私。

「うん。だからすごい遠いよね。すごいなぁ。ブラジルからわざわざオランダまで、日本食を持って会いにきてくれたなんて!」
と二人。

「いや、だからブラジルじゃなくて、ブリュッセル です!ブリュッセル!ベルギーの首都!EUの首都がある街!そっから電車に乗ったら3時間くらいで着く街!小便小僧がいる街!ブリュッセルだよ、ブリュッセル!」

と、そこまで言って、やっと、ブラジルではないことが通じた(汗)。

「あぁ、ブリュッセルか。でもすごいよね。わざわざ3時間かけて日本食を持って来てくれるなんて」と、中国人の友達。

そして私との友達歴が長いフランス人の友達が教えてくれた。
「ヒロコ。”ブリュッセル ”は、フランス語だと"Bruxelles "と書くから、”ブリュッセル ”と発音したくなるかもしれないけど、英語だと”Brussels”という綴りで、発音は、”brʌ'səlz”なんだよ。
ヒロコの言い方だと、ブラジルと聞き間違えちゃう」

それを聴いて私。
「フランス語の綴りは関係ないよ。なぜって、私そんなにフランス語喋れないから😂。単に、日本語の発音だと”ブリュッセル ”なの。それで私、いつもブリュッセルの正しい発音が分からないから、日本語の発音と同じでいいのかな?と思って、”ブリュッセル ”って言ってしまってたの。教えてくれてありがとう。”Brussels”だね」

すると、フランス人の友達は「うーんと、まだちょっと違う。ええとね、『ブラ』『スゥルズ』って感じ」

「『ブラ』『スゥル』」

「いい感じ。でも最後にsがつくわ。『スゥル』じゃなくて、『スゥルズ』」

「OK。こんな感じ?『ブラ』『スゥルズ』」

「うんうん!できたできた!それそれ!」

「ブラッ・・・スゥルズ!」

「そうそう!」

「やったー!『ブラッスゥルズ!([brʌ'səlz])』」

こういうのは何度も練習しないと忘れてしまうので、その後しばらく、「『ブラッスゥルズ!』『ブラッスゥルズ!』『ブラッスゥルズ!』」と言っていたら、
「もうわかった。大丈夫だから」と言われた汗。

ということで皆さん。
ベルギーの首都、Brusselsの英語での発音は、ブリュッセル ではなく、[brʌ'səlz]です。
「ブリュッセル 」と言うと、「へぇ〜ブラジルから来たんだ。すごいねぇ」と言われるので気をつけてください笑。

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