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小㞍健太『Study for Self/portrait』原美術館:バレエからコンテンポラリーまで自身の踊りの軌跡をインプロで見せる

2017年に東京・品川の原美術館で小㞍健太氏が行ったダンスパフォーマンス『Study for Self/portrait』の映像が期間限定で公開された。

原美術館は、閑静な住宅地の中に建つ、元は邸宅だった建物を利用した現代アートの美術館で、残念ながら2020年12月末に閉館予定だ。建物自体がアートのような貴重な空間で、その中の、庭に面した開放的な場所で、このパフォーマンスが行われたようだ。

冒頭、セミの声が聞こえて、庭の青々とした芝生が見えて、高温多湿の日本の夏が映像から香り立ってくる。小㞍氏が庭へと続くガラス張りのドアを開け放ち、野外の空気が一層入ってくる。

2020年の4月と5月は、日本中、そして世界の大部分も、目には見えないウイルスを前にして、多くの時間を自宅で過ごす期間となった。その間に、まるで昔の未来SF小説か漫画に出てくるカプセルの中で過ごしている人みたいに、外の自然の世界が懐かしくなっていたのだと、この映像を見て実感した。

開始後、観客の前でバレエシューズを履き、無音で踊り出す。クラシックバレエの動き(構え)から、そこから少し外れた動きへと展開していく。自身の踊りの原点を確認し、そこから飛び出していく直前の状態を見せているかのようだ。

次は、靴下と運動靴を履き、携帯型の音楽再生機を手にして、全体的に流れている音楽と、そのポータブル機から流れる音楽が、重なっている?

そして最後は、はだしになり、踊る。はだしになってからしばらくは、スマホから伸びるイヤホンを耳に装着し、スマホをポケットに入れて、自分にしか聞こえない音楽で踊っていたようだ。

自分の体で実験しているかのように、動きを「発見」しつつ踊っている印象を受けた。「dancedition」のインタビューによると、本作の大半はインプロ(即興)だそうだ。

小㞍氏のダンスは、なぜかずっと「見てしまう」。見ている間、こちらは、テクニックがどうとか動きのバリエーションがどうとかコンセプトがどうとかは、あまり考えていないことが多い。とにかく目で追ってしまう。

この、「ついつい見続けてしまう」ダンスの正体はなんなのか、ずっと考えている。ダンサーの踊りへの集中力のようなものが関係しているのか?観客の目を奪う、マジックのようなものはどこから来るのか?その源の秘密を知りたい、言葉で表現できるのかを探索したい。

作品情報

Study for Self/portrait

Premiere: 19/08/2017 at Hara Museum of Contemporary Art
Choreography and Dance: Kenta Kojiri
Sound: Yasuhiro Morinaga (J.S. Bach - Glenn Gould - Goldberg Variations BWV 988 Aria)
Costume: matohu (Hiroyuki Horihata, Makiko Sekiguchi)

初演:2017年8月19日 原美術館
出演・構成:小㞍健太
サウンドデザイン:森永泰弘
使用楽曲:J.S.バッハ - Glenn Gould - Goldberg Variations BWV 988 Aria
衣装協力:matohu (堀畑裕之、関口真希子)
チラシデザイン:川村祐介
写真:momoko japan
記録映像:金巻勲
制作:松浦彩(原美術館)
主催:原美術館
協力:studio ARCHITANZ、Office-MORIYASU



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