見出し画像

小暮香帆ソロダンス「Dear   」呼び掛ける声と強さを増したしなやかな身体と踊りに吸い込まれる

私の中で人間国宝のダンサー、小暮香帆さんのソロ公演が、オイリュトミー・舞踏の振付家・ダンサーの笠井叡さんの拠点「天使館」で行われた。

広くはない、稽古場でもあるらしき空間に、50人ほどの観客がいる。ピアノが隅に置いてあり、壁面の鏡は一部だけ見え、残りの部分は布で覆われている。

薄く透ける黒のシャツと鮮やかな緑のショートパンツ姿。ロボット的なカクカクとした動きやコントロールされている痙攣するような動き。壁に沿って頭倒立みたいになったときの脚や、カクカクの動きが、なぜか鹿を思わせる。

訓練された身体と、制御された動きが美しい。

事前に募集していた、いろいろな人から送ってもらった「Dear」と言っている声が流れたり、小暮さんが生声で語り掛けたりする場面もあった。

「Dear」の声の中で一つだけ、語尾を上げて余韻を持たせるような言い方をしている音声があったと思う。公演タイトルでDearの後にアキが入っているから、後に誰かの名前が続くのかなと思って(それぞれにとって大切な人の名前とか)、私もきっとそういうふうに発声したかなと思った。

なんか以前と比べてすごく顔つきが変わっているように見えた。顔の各部の輪郭がクリアになって、強さ、強固さが増している。身体も、動きがさらにクリアに、精密になって、進化しているというか。

あと、表情も、どこか向こうの世界に入り込んでいる印象を強く受けた。踊り終わったらちゃんとこちらの世界に戻ってきてくれるかな?と心配になるような。気迫に圧倒され、吸い込まれた。(もちろん、終わったら、優しげな穏やかな人になっていたので、安心した)

趣の変わる音楽、人の声、無音、と移り変わる音響も、オレンジっぽい色と闇が基調の照明も、明かり(ランプっぽい電球)を持ったりマットを敷いたりして踊るという小道具の用い方も、よかった。

至近距離で小暮さんのダンスを鑑賞できる公演は本当に至福の時。一刻一刻と味わいながら、その時が流れていってしまうのがもったいなくて、でもだからこそ貴重なわけで。

このたぐいまれなるダンサーと同時代人に生まれてよかった。長生きして、いつまででも踊っていていただきたいです(笑)。

上演時間は約1時間。

会場の天使館は、鉄道の最寄り駅は国分寺駅(南口)だが、徒歩15分くらいかかり、住宅街を何度も曲がる道筋なので、ちょっと行きづらい。公式サイトにわかりやすい地図が載っていたら、ありがたいのになあと思う。

作品情報

ダンス現在vol.24 小暮香帆ソロダンス「Dear   」

2021/5/23、5/30(日)19:00 start(18:30 open)

会場:天使館 (国分寺市西元町3-27-9)

チケット:前売 2000円


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?