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ダンス公演:きゅうかくうしお=辻本知彦、森山未來 +スタッフ「素晴らしい偶然をちらして」

ダンサー・振付家の辻本知彦氏と、ダンサー・俳優の森山未來氏が 2010 年に立ち上げたパフォーマンスユニット「きゅうかくうしお」の新作公演。本公演では、舞台監督、照明、音響、映像、宣伝美術、制作を担当するスタッフも、ダンサーたちと一緒に舞台に登場。全員で文字通り作品を作り上げる。

横浜赤レンガ倉庫1号館3階ホールに設置された舞台は、中央にあり、四角や円形ではない多角形で、周囲に座席がある。舞台を囲んで椅子が設置してあり、出演者たちがパソコンを前にして座っている。舞台上には2枚の透けているスクリーンがあり、パソコンの画面が表示されたり、出演者がスマホで撮影する映像が流れたりする。

上演は、出演者たちの紹介と、前回の公演後に交わされたらしいメールの読み上げから始まる。今回の公演に向けて書いたメールも読み上げられる。舞台上では、出演者たちが、言葉から発想したらしい動きをする。出演者の一人がインスタライブを行い、川柳のお題を、観客とインスタライブの視聴者から募集する。お題は「苔」に。出演者たちが即興で作った川柳を披露する。

言葉から動きを作ることに加えて、舞踏の土方巽の「舞踏譜」のことも簡単に語られ、辻本知彦氏と森山未來氏が土方の踊りに触発されたらしいダンスをする。辻本氏のダイナミックな動きと、森山氏の粘っこく統制された動き。両者とも上半身裸になっていて、筋肉がものすごい。

辻本氏と森山氏がゆっくりと床に崩れ落ち、絡み合いながらゆっくりと立ち上がり、それを繰り返すうちに一個の身体、固まりのようになっていくラストがハイライトだ。汗でテカテカと光る体が信頼感のもと、ぬめぬめと触れ合っていく。そんなふうに他者と一体化していく、呼吸を合わせていくのがとても楽しそうで、なんだかうらやましい。

スタッフも出演者となって、創作していったであろうさまも、いいなあ、とうらやましくなる。

きゅうかくうしお(生まれた子どもに付けたい名前が、辻本氏が「きゅうかく」、森山氏が「うしお」だったことから、この名になったという)のウェブサイトに、創作過程でやりとりされたメールやメモやSNS投稿などのログが公開されている。ゆかりのある著名人たちに「きゅうかくうしお」をお題として詠んでもらった川柳も掲載されている。これらの川柳は、ちらしに掲載され、本公演のキャッチコピーになっている。

やや中だるみ気味なところもあるものの、出演者のしゃべりが入ったりすることで親しみを感じ、土方巽を知らなくても、つい引き付けられる作品になっていたのではないかと思う。

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「素晴らしい偶然をちらして」

会場:横浜赤レンガ倉庫1号館3階ホール
公演日:2019年11月22日(金)〜12月1日(日)

出演:辻󠄀本 知彦(踊り子)、森山 未來(踊り子)
河内 崇(舞台監督)、吉枝 康幸(照明/YAS)、中原 楽(音響/ルフトツーク)、松澤 聰(映像)、矢野 純子(宣伝美術)、村松 薫(制作)、石橋 穂乃香(制作助手)

前売:4,500円(一般)/ 4,000円(U-25)/ 2,000円(高校生以下)
当日:5,000円


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