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映画『行き止まりの世界に生まれて』アジア系アメリカ人の若手監督がもがく自身と友人たちを映したドキュメンタリー

1989年生まれで中国系のビン・リュー監督が自身と2人の友人の少年から青年時代の12年間を撮ったドキュメンタリー映画。

アメリカで「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」とされるさびれた地域でもがく若者たちの姿を描く。監督はアジア系、友人たちは黒人(アフリカ系)と白人だが、みな家庭に問題を抱え、貧しく、学歴がなく、仕事にも苦労する。

2019年の第91回アカデミー賞と第71回エミー賞にダブルノミネートされ、バラク・オバマ前大統領が「年間ベストムービー」に選んだという触れ込み。

スケートボードを乗り回す若者たちに眉をひそめる、ついそんな態度を取りがちだが、彼らから社会の問題と未来が見えてくるのかもしれない。

暴力、貧困、格差、人種差別、性差別、アルコール、ドラッグなど、抜け出すのが難しい問題が「内側」から描かれていく。

監督は自身と家族の闇や、友人の傷、友人の最低なところなどにも踏み込んでいくが、そこには母親や友人たちへの愛情と優しさがある。

暴力や差別について語り合い、完全には理解できなくてもわかり合えなくても、自分の感情や考えを見つめ直し、未来を向いていく。その過程が丁寧に捉えられている。

傷に触れ合うのはつらく悲しく怖いけれど、そうしなくては前に進めないこともある。

生々しいが誠実で見やすい映画で、すごい監督がアメリカに誕生したのだなあと思う。今後の作品にも注目したい。

2018年製作/93分/G/アメリカ
原題:Minding the Gap


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