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オランダ国立バレエ団『コッペリア』モダンでポップでキュートな演出・美術の舞台

オランダ国立バレエ団(Dutch National Ballet)の『コッペリア』公演を動画で視聴。これは、もともとは1870年にパリ・オペラ座で初演された、人形を題材とした喜劇的なバレエ。今回のバージョンでは、舞台美術や衣装、設定や踊りなどに、現代的な演出が施されている。

1960、70年代から現代までのファッションや娯楽を取り込んだ感じだろうか。オリジナルに近い『コッペリア』の舞台を見たことがあると、比較できて面白い。

▼例えば、英国ロイヤル・バレエ団の版はこういう感じ。

オランダ国立バレエ団では、幕に描かれた絵からしてポップ。

バレエ『コッペリア』のストーリー

物語の構成は、オリジナルとだいたい同じ。

第1幕が街中の場面で、若い恋人のスワニルダとフランツ、そして仲間たちがはしゃぎ回る。フランツは自動人形とは知らずに、発明家の博士であるコッペリウスの人形、コッペリアに引かれる。それに嫉妬したスワニルダは、友人たちとコッペリウスの留守中に彼の家に忍び込む。

第2幕は、コッペリウスの家の中。自動人形たちに驚くスワニルダたち。コッペリアが人形だと気付く。そこにコッペリウスが帰ってきて、フランツも家の中へ。コッペリウスはスワニルダの友人たちを追い出すが、スワニルダはコッペリアの陰に隠れて息をひそめる。コッペリウスは、フランツに薬を入れた酒を飲ませて意識を失わせ、フランツの魂をコッペリアに吹き込もうとする。コッペリアに扮したスワニルダが人間になったふりをし、コッペリウスは喜ぶが、真実がばれる。落胆するコッペリウスをよそに、スワニルダはフランツをなんとか起こして、2人は家を脱出する。

第3幕は、街中での、スワニルダとフランツの結婚式の場面。壮大なパ・ド・ドゥ(2人の踊り)と大勢のダンスが踊られる。

オランダ国立バレエ団のバージョンは現代的な演出

オランダ国立バレエ団の演出では、スワニルダはおそらくテニス、フランツやほかの若者たちも、なんらかのスポーツの服を着ている。また、コッペリウスには女性のパートナー(?)がいて、人形たちをオーディション(?)しているようなシーンもあった。自動人形はリモコンで動き、コッペリウスの家もコンピューター制御されている様子。家には、初期のパソコンのような機械も置いてあった。

振付も、ブレイクダンス風のダンスを披露する人形がいたりして、アレンジしてある。

舞台美術も衣装もとてもかわいくて、気分が上がる。

細かい演出では、おそらくバレエ団付属のバレエ学校の生徒だろうか、子どもが犬に扮して登場する。立って歩くのだが、被り物をしていて、プードルなんか本当にプードルっぽくて、妙に気になって、目がそっちに行ってしまう(笑)。

『コッペリア』は、人形の動きが楽しいバレエ。バレエの動きはもともと少し「非人間的」(普通ではあり得ない姿勢や動きをする)だから、作品全体の雰囲気にも合う。

今回の第2幕の最後では、ちゃんと(?)コッペリアが身ぐるみはがされた哀れな状態で発見される。そして第3幕では、コッペリアに花嫁の格好をさせて、コッペリウスがフランツにコッペリアを突き付けるという悪あがきをする。

喜劇なのだが、コッペリウスにとっては悲劇でもあるので、その部分がやや強調された演出で公演を行うバレエ団もあるようだ。

今回の映像の公演では、オーケストラによる生演奏で、カーテンコールには指揮者も登場。この公演に限らないが、指揮者も舞台に上がって拍手を受け、ダンサーたちから感謝を受けているのを見るのも好き。指揮者がダンサーたちの中で一人、「普通」の(「ダンサー歩き」ではない)足取りで舞台前面に歩み寄るのもなんだかいい。

作品情報

COPPELIA

For the libretto of Coppelia, choreographer and artistic director of Dutch National Ballet Ted Brandsen worked closely with Janine Brogt, who has plenty of experience in adapting the classics for theatre and opera. Sieb Posthuma (1960 – 2014) created a colourful and magical world for Coppelia, so that the audience feels as though they have stepped into an illustrated book, thanks also to the imaginative and ‘retro-futuristic’ ballet costumes designed by François- Noël Cherpin.

今後のオランダ国立バレエ団の無料動画配信の予定(1週間の期間限定)
※オランダ時間

■Saturday 02 May 19.00 Hans van Manen: Part One:
2020年5月2日(土)19時~、ハンス・ファン・マネン振付作品(第1部)

■Saturday 09 May 19.00 Swan Lake:
2020年5月9日(土)19時~、『白鳥の湖』

■Saturday 16 May 19.00 Hans van Manen: Part Two
2020年5月16日(土)19時~、ハンス・ファン・マネン振付作品(第2部)



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