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新国立劇場バレエ団「ニューイヤー・バレエ」2021年:衣装で身体が拡張したダンサーが動物を踊る『ペンギン・カフェ』など

2021年1月9日(土)~11日(月・祝)に新国立劇場(芸術監督:吉田都)が上演を予定していた「ニューイヤー・バレエ」が公演中止に。代わりに、1月11日(月・祝)に無観客で上演し、無料でライブ配信(YouTube、Facebook)が行われた。

新国立劇場バレエ団の公演を劇場で見たことはあったが、いつも舞台から遠い安い席だった。今回カメラを通して舞台を近い位置から見て、ダンサーたちの力量の高さ、テクニックや表現力に感嘆した。世界に動画配信されたことで、同バレエ団の魅力が広く伝わるきっかけになったかもしれない。(配信中のYouTubeの表示では、2万5000人以上の視聴者がいたようだ)

プティパ振付の『パキータ』(米沢 唯、渡邊峻郁)は新年にふさわしい、めでたく華やかな祝祭の場面。

木下嘉人 振付の『Contact』(小野絢子、木下嘉人)は、「接触」が避けられる今、男女のコンタクトを超えて迫ってくる、クラシックバレエを踊るバレエ団による新作ダンスらしい美しい作品。

『ソワレ・ド・バレエ』(池田理沙子、中家正博)は、アレクサンドル・グラズノフの曲で、深川秀夫 振付。

『カンパネラ』(福岡雄大、ピアノ演奏:山中惇史)は、フランツ・リストの同名ピアノ曲に、貝川鐵夫が振り付けたソロ作品。ピアノを演奏する手の動きと呼応してダンサーの身体が動くシーンがある。超絶技巧とされるこの音楽を作った人は頭が変なのではと思えるほど素晴らしい曲だが、それへのオマージュも感じられるダンス作品。

2010年から新国立劇場の芸術監督も務めていたデヴィッド・ビントレー振付の『ペンギン・カフェ』('Still Life' at the Penguin Café)は、ずっと見たかった作品。1988年英国ロイヤル・バレエ初演。

秀逸な衣装やかぶり物で絶滅危惧種の動物たちに扮したダンサーたちが、コミカルともシュールとも残酷とも見える踊りを繰り広げる。曲もすごく面白い。

創作のきっかけになったのは、ペンギン・カフェ・オーケストラの音楽や環境破壊への批判だという。

動物が登場する舞台作品としては、ミュージカルの『ライオン・キング』や『キャッツ』が思い浮かぶ。バレエ作品には、英国ロイヤル・バレエの『ピーターラビットと仲間たち』(フレデリック・アシュトン振付)もある。

本作『ペンギン・カフェ』では、衣装によって身体が拡張し、衣装で延びた部分が身体の一部であるかのように見せる振付などが印象的だ。黒い手・腕を顔の横に沿える動きなど、視覚的に吟味された、洗練された振付・演出。

死や子育てが静かに、激しく、力強く描かれ、この世にいない動物たちが楽し気に踊る。不気味さとユーモラスな表現が同居する独特な作品だ。

何度でも鑑賞して味わいたくなった。

プログラム

新国立劇場ウェブサイトより

第1部
パキータ
【音楽】レオン・ミンクス
【振付】マリウス・プティパ

新国立劇場では2003年初演以来18年ぶりの上演となります。当作品はスペインを舞台としたロマの娘の恋物語で、ロマンティック・バレエ時代の1846年にパリ・オペラ座で初演されました。近年、パリ・オペラ座バレエによって復元上演されるまでは、プティパによる改訂版のこの部分のみが伝えられていました。主役のパキータがめでたく結婚式を挙げる最終場面でのグラン・パを中心に、ソリストたちの華やかな踊りが次々と繰り広げられます。

■第2部
Contact

【音楽】オーラヴル・アルナルズ
【振付】木下嘉人

新国立劇場バレエ団から振付家を育てるプロジェクト<NBJ Choreographic Group>から生まれ、2020年3月「DANCE to the Future 2020」にて上演予定だった作品。人と人との触れ合いを男女のデュエットで描きます。

ソワレ・ド・バレエ
【音楽】アレクサンドル・グラズノフ
【振付】深川秀夫

舞踊家、振付家として国際的に高い評価を得た深川秀夫による振付作品です。グラズノフ作曲の音楽に振り付け1983 年に初演された作品を、ガラ公演用に一部抜粋したパ・ド・ドゥです。星空の下叙情的な踊りが展開される、しっとりとした雰囲気をお楽しみください。

カンパネラ
【音楽】フランツ・リスト
【振付】貝川鐵夫

「DANCE to the Future」で幾つもの作品を発表し、2016年「ニューイヤー・バレエ」でフォリアを上演、森山開次演出・振付『竜宮 りゅうぐう』では振付補佐を務めるなど、振付家としての活躍が期待される貝川鐵夫による、スピード感あふれる男性ソロ作品です。

■第3部
ペンギン・カフェ

【音楽】サイモン・ジェフス
【振付】デヴィッド・ビントレー

80年代に一大センセーションを巻き起こしたワールド・ミュージック・アンサンブル「ペンギン・カフェ・オーケストラ」の音楽を使用。可愛らしい動物の仮面を被って踊るダンサー、ポップで心地よい音楽で上演される作品の根底には、痛烈な文明批判と現代の環境問題にも通じるメッセージが含まれています。

配役表

公演プログラム(クレジット、作品解説)

特集:日本、そして世界における絶滅動物(協力:国立科学博物館)
『ペンギン・カフェ』上演記念特別企画


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