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【UTEC坂本氏×中沢対談】「とても濃い時間だった」出会いから3年を振り返り語る、Alumnoteの成長と未来

今回は、創業当初から現在に至るまで、アルムノートの成長を知るUTEC坂本氏をお迎えし、代表・中沢との対談を実施しました。出会いからこれまでの3年間を振り返りながら、中沢とのエピソードやアルムノートという組織についてなど、いろいろとお話をお聞きしました。


第一印象は「すばらしいパッション」と「事業のおもしろさ」

ー中沢と出会った頃のお話を聞かせてください

坂本さん(以下敬称略):私は経済産業省で中小企業金融などに携わったのち、スタートアップ政策に関わることがあり、そこではじめてスタートアップの面白さと出会いました。経済産業省退職後、アメリカへのMBA留学を経て、マッキンゼーで4年半ほど仕事をしたあと、東京大学エッジキャピタル(以下UTEC)に入社しました。以来、VC経験は10年になります。中沢さんとの出会いは2021年の3月ですよね。

中沢:総務省主催の起業家甲子園があって、僕が出場したのは学生限定のピッチコンテストでした。坂本さんはそのとき同時開催されていた起業家万博の審査員をされていて。僕は2020年頃から坂本さんのことは存じ上げていて機会を見計らっていたのですが、ピッチコンテストで優勝したことで、もしかしたらお会いできるんじゃないかと思いご連絡しました。UTECさんは当時あまり学生に出資をしている感じを受けなかったので、最初はすごく緊張しましたね。

ー中沢とアルムノートの第一印象はいかがでしたか

坂本:連絡をいただいた時点では、アルムノートと中沢さんのことは存じ上げなかったのですが、当時お世話になっていたマッキンゼーの先輩から「非常に面白い、可愛がってるやつ」と紹介されたのでお会いみたいと思いました。話を聞いてみると、まず、日本の大学経営を支援するという事業領域が非常に珍しい。何より中沢さんのパッションが印象的でした。

大学の寄付に対する考え方について、私自身の経験から、日本とアメリカの違いを感じ、課題意識を持っています。研究に回るお金が減っていることについても、大学関係者の間でよく話題になっていました。中沢さんはそうした周辺事情を徹底的に調べ上げていてとても詳しく、「日本の大学をなんとかしたい」という強い思いを話されていたことを覚えています。

中沢:ありがとうございます。たくさんの方に事業の説明をしてきましたが、当時、坂本さんからは、過去いちばん鋭い質問を受けて、とても緊張していました。その後、食事をご一緒させていただき、投資家モードではない坂本さんとプライベートなお話もたくさんしていく中で、徐々に緊張がほぐれいきました。

「もう無理かと何度も思った。でもGiving Campaignはやらなきゃいけないとも思った」

ーGiving Campaignの構想を最初に聞いたとき、どのように感じましたか

Giving Campaignは、現在はアルムノートが運営し、全国の大学が参加する大規模なオンラインチャリティーイベントです。UTEC主催で東京大学と開催した第1回目が始まりです。Giving Campaign第1回目の経緯についてはこちらの記事をご覧ください)

坂本:Giving Campaignの話を最初に聞いたとき、「ロジカルにはうまくいく」とは思いました。ただ、大学は非常に大きな組織であり、かつ利益を追求する組織ではないので、我々のロジックがそのまま通用しないだろうとも思いました。自分が大学系VCにいるからこそ、その面白さと難しさを感じた部分もあり、うまくいくかどうか微妙かもしれないなと。一方で、難しいということはやらない理由にはならないとも思いました。

VCを長くやっていて感じることは、「世の中的に正しい課題意識を持って正しいことをやっていると、応援する人が絶対についてくる」ということです。Giving Campaignは、そのど真ん中なんじゃないかと感じて、真正面から反対する理由が見つからなかった。「これは絶対やる」という社長自身の強い思いがあったことも非常に大きかったですね。

ーGiving Campaignをやってみて、やはり大変な部分はありましたか

坂本:もうダメかな、無理かな、と思うことが3回ぐらいあったよね(笑)。でも、中沢さんはとにかくしつこくて、最後まで諦めない。ファイティングポーズを最後まで崩さないのは、すごく大事なことです。でも、本当にすごくしつこいんですよ(笑)。平日はもちろん土日も関係なく電話がかかってきて。諦めが悪い、いや粘り強いというべきですね。

中沢:当時は坂本さんがどれほど忙しいかを分かっていなくて、とても多くの時間をいただきました。結果的に、坂本さんには前面に立っていただいて本当に感謝しています。あの第1回目のGiving Campaignが実質、アルムノートのスタートと言っても過言ではないですし、 大学さんと関係性が始まる第一歩となりました。

坂本:ビジネスなので当然、利益を出すことは重要なのですが、Giving Campaign単体では利益を出すことは難しいし、出す必要もないと思っています。お金と直結しなくても、「将来のために本気で世の中を変えなければ」という熱くて青臭いミッションがあったからできたんじゃないかなと思っています。自分にとっても非常に勉強になりましたね。我々が1回目にサポートしたことが始まりではありましたが、続けていくことの方がもっと難しい。Giving Campaignが今年の秋に5回目だなんて、すごいことを続けているし、軸がずっとブレてない。リスペクトしかないです。

「話すとみんな好きになるし、特に年長者に好かれる。起業家として大事な能力です」

ーしつこさや粘り強さというお話がありましたが、起業家としての中沢はどんな人物だと感じていますか

坂本:中沢さんと話すと、なぜかみんな彼のことが好きになってしまうんですよね。嫌いになることの方が難しいんじゃないかと思っていて(笑)。こういう人って珍しい。中沢さんは不思議と年長者に好かれるのですが、これもスタートアップの社長にとってものすごく大事な能力です。絶妙なバランス感覚とコミュニケーション能力を持っていて、すごい強みだとVC視点でも思います。

中沢:ありがとうございます。僕たちの事業は、みんなハッピーになるようなビジネスだという自負があります。そして真摯に思っていることを伝えた時に、嫌悪感を抱く相手はあまりいないんじゃないか、そんな気持ちでいつも話をしていることもひとつの要因かもしれません。

坂本:東大生の就職先として、投資銀行やコンサルティング会社などがまだまだ多いですよね。4〜5年ほど前から、スタートアップを起業するという選択が少しずつ浸透してきてはいますが少数です。そんな環境でチャレンジをするのは、相当な気合いがないとできないと思っています。特に中沢さんは、GoogleやAppleなどの有名企業で働く選択肢があった中での挑戦ですからね。

ーこれまでの3年間を振り返って、アルムノートと中沢の成長についてどう感じますか

坂本:3年前の中沢さんはキラリと光るものがありながらも、まだ学生っぽさがありました。この濃すぎる3年間を過ごして、いまは別人ですよね。25歳という若さでこれだけの経験をするのは、なかなか普通じゃないと思いますね。精神的な強さもすごくある。僕が中沢さんの立場だったら心折れているかもしれません。誰もやったことがないビジネスをやっていくって、本当に大変なことですから。

僕はこれまで何十社と付き合ってきましたが、多くが自分と同年代で、中沢さんのように歳が離れている起業家は初めてでした。僕自身も若い人の感覚などを勉強しながら一緒に成長していけるかどうか、そんな感覚で並走してきました。 

「VCの10年間でトップクラスに濃い時間。お互いに全力で議論しましたね」

ー初期の頃からずっとアルムノートを見てこられた坂本さんにとって、記憶に残っているエピソードはありますか

坂本:ここ最近だと、たくさんある投資先の中でいちばん本気で話したのが中沢さんかもしれません。時には緊張感のあるコミュニケーションになったこともあるし、外的要因も重なり、シビアな状況もありました。お互いに全力で真剣に議論したと思います。

中沢:いろいろありましたね(笑)

坂本:年齢や経験の差とか関係なくお互いに本気のやり取りがあって、今となってはよかったなと思いますし、あのときがあったからこそ今の信頼関係を築けました。夜中の2時に電話がかかってくるときなどは、100%よくない話の予感しかしませんよ。でも頼ってもらえることは嬉しくもある。やはり、本当に困った時にファーストコールしてもらえる相手でいたいと、私はどの投資先においても思っています。

中沢:僕自身も、坂本さんに教えていただいた言葉を自分の中で噛み砕いてやっていく中で、経営者とは、スタートアップとはこうあるべきだ、という考えがまとまっていく感覚はありました。夜中の2時に電話するのは申し訳ないと思っているんですが(笑)、僕の中では、ここぞというときに相談できる相手だったんですよね。坂本さんは、いろいろな投資先も見られている経験から、僕たちがブレがちなところを正してくださるので、ご報告しながら、自分の中で会社の進捗を確認してきました。

坂本:濃い時間でしたよね。私のVCの10年間のなかでトップクラスの濃さでした。

ミッションドリブンなメンバーが集まっている、チームとしての強さがある組織

ー組織としてのアルムノートについてはどうでしょうか?

アルムノートの組織に関して特に感じるのは、非常にミッションドリブンであるということ。この事業に魅力を感じた人が集まっていますよね。スタートアップを目指す人の中には、ストックオプションが欲しいという人もいます。当然、上場を目指すならそれも大事なことです。一方で、それが第一の理由ではない人が集まっているのは強い。全員がこの事業が面白い、好きだという気持ちで団結できているのは、創業期としてとてもすごいことです。

今は全員が創業メンバーのフェーズですが、アウトプットのスピード感を考えると、素晴らしいチーム力だと思いますね。この小さな組織が社会に与えている影響力は、非常に大きいです。

中沢:どういう人を採用したらいいですか、といったことを坂本さんに相談したこともありましたよね。とにかく「信頼できる人」とアドバイスされた記憶があります。

ーアルムノートの5年後、10年後のイメージや期待していることはなんですか

坂本:社会的なインパクトをどこまで与えられるかですね。この分野に関して、ほかに同様の取り組みをしている企業はほぼないですし、 誰かがやらない限りなかなか変わらない。必要な資金が大学に回って、 そのお金が効果的に活用されて、社会がもっと良くなるという循環を作る。そんな未来や希望を抱いているのは僕も同じで、UTECにいる理由のひとつでもあります。

中沢:今後は、社会的インパクトだけでなく、収益性にも最後までこだわっていきたいです。この3年間の中で幅広い社会課題に取り組んで、さまざまな方と交流する中で、持続可能性と、未来に向けてスケールしていくことが大事だと痛感しました。スタートアップで、株式会社という形でこのテーマに取り組ませていただいている以上、ソーシャルインパクトだけに逃げず、事業性もしっかりと追求していく、最近はそのモチベーションも同じぐらい持てるようになってきました。

坂本:収益性とインパクトの両輪というのが、非常に重要なポイントですよね。どちらかしかない会社はたくさんあります。両輪を回さないと、実際のインパクトが拡大していきませんからね。その2つにこだわっていく、という考えはすごくいいですね。これからのアルムノートにも期待しています。

坂本教晃氏
株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)取締役COO。東京大学経済学部卒業後、経済産業省へ入省。経済産業省では中小企業金融などに携わったのち、ファミリービジネスに参画。マッキンゼー・アンド・カンパニーに4年半在籍後、2014年にUTEC入社。数多くの社外取締役を務める。

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