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たまたま読んだ本20:「夢と金」 希望を語り、お金を学べ。お金は上手に使ってくれるところに集まる

夢と金

お金に対するリテラシーを高めてくれる書だ。
お金の話をすると、世間一般に「はしたない」という雰囲気がある。
同書で著者は、夢とお金は相反関係でなく、お金が尽きると夢も尽きる。
この国に足りない「希望」を持つためには、夢を語り、お金を学ぶべきだと解き明かす。

知床観光船沈没事故はなぜ起きたのか?
船の整備に充てるお金もなく、安全運行を最優先する余裕もなかった。
つまりお金が無かったからだと断定する。
言わんとすることは分かるが、お金だけの問題ではない。仮にお金があったとして同社は安全運航をしていただろうか。要は経営の問題だろう。
著者は分かりやすくするために断定するが、誤解を招く可能性もある。

日本では、しばしば、「高価格帯商品を買わない人が高価格帯商品の値段にクレームを人れる」という奇妙な光景が見られるという。そんなことがあるのかどうかは知らないが、庶民感覚からは高いということだろう。クレームまで入れることはないが。ただ社会的な格差を顕在化、増長する影響はあるかもしれない。それに対する反感かも。

著者は高価格帯の商品の役割を航空運賃で例える。
高価格帯運賃があるから、エコノミーの運賃を安く抑えることができていると解説してくれる。富裕層を掴むことで、安い運賃も作ることができるわけだ。
ビジネスにおいて、富裕層を知り、プレミアムとラグジュアリーの違いを知る必要を訴える。
プレミアムとは「競合がいる中での最上位の体験」で、ラグジュアリーとは「競合がいない体験」のこと。著者はそれを機能と意味で説明する。

自動車を例に、役に立つ機能しかない車(トヨタ、日産など)が一番安く、役に立ち意味のある車(BMW、ベンツなど)が次に高く、役に立たないけど意味のある(意味しかない)車(ランホルギーニなどのスーパーカー)が一番高いという事実。意味とは購入者にとっての意味であろう。

プレミアムは高級、ラグジュアリーは夢と解き、夢=認知度ー普及度と計算式を示す。つまり、皆が知っているけど、誰も持っていないのが夢という。

ヴィトンはデパート1階の目立つところに高い家賃を払って店を出すのは認知度を大きくするため、つまり、買えない人を増やすために広告費を払っているのと同じだと説明する。夢を大きくし意味(価値)が落ちないようにしているわけだ。
機能でなく、意味を売れ。機能は買う人が値段を決め、意味は売る人が決めるとその極意を伝える。

支援系のクラウドファンディングでは、富裕層は支援の対価として求めるのはあなたを助けたという事実。あなたは富裕層に助けられ、借りを作ることだ。支援したお金で高価な返礼品をつくることは下手なお金も使いかたになる。お金に余裕のない人を相手にしたやり方。お金は、お金の使い方の下手な人間のところには集まらない。富裕層が何も求めているのかわかる必要や最前列で見たい「熱狂的なファン」と個室観覧席などで仲間とのコミュニケーションを楽しむ「富裕層」を見誤ってはいけないという。

しかし世の中、人助けの寄付行為は、富裕層に多いわけでない。人道的な行いには、余裕がなくてもする人が結構多い。寄付文化の根付いていない日本でさえそうだ。見返りのない寄付を何故するのか。それは千差万別だろう。中には、人を助けた。善いことをしたという充実感や満足感がある。身体でするボランティアをお金でしたということかもわからない。人間は人のためにするときの喜びが一番大きいとも言われている。でも中にはその人間心理を突いて、寄付を集めるものもいる。もらって当然と感謝の度合いが非常に低いものを見ると残念な気がする。でも、金額的には確かに富裕層の寄付額が大きいのも事実だ。

人間の労働力に頼ると、生み出せるお金に限界がある。著者は、自宅「キンコン西野の家」も稼げる家にした。建てる前から建築費を回収する家として考え、留守の時に、徹底した選客とコストをかけない運営で貸し出している。またエッフェル塔での個展設営権とか、珍しい体験を売り出して、その収入で個展を無料にしたりもしている。

「少母化」による「少子化」の人口減で、「たくさん売ることができない時代」を生きている。お金持じゃない人に、これまでよりも少しでも高く商品を買ってもらうためにはとうすれはいいかを考えることが重要だと諭す。
すでに、あらゆるサーピスは「満足ライン」を超えており、自分の商品を高く売るには、「技術以外の何か」を提供する必要があると説く。でも満足ラインすらを超えていない店は結構あるように思えるのだが。この時節、そういう店は早晩なくなるものなのかもしれない。

満足ラインを越えた技術(パフォーマンス)の名は「オーバースへック」で自己満足にすぎない。「顧客」というのは、「商品を買ってくれる人」、「ファン」というのは、「サービス提供者を応援してくれる人」のこと。「ファン」は「サーピス提供者を応援するために商品を買ってくれる人」とも言える。
願客は「機能」を買い、ファンは「意味」を買う。肝に銘じておくべきかも。
そのために目的地と現在地をさらし続け、【応援シロ】(【目的地】ー【現在地】)を作るべきだという。応援シロが助けたいファン心理につながるということ。
また、機能で差別化を図れなくなった現代においては、その「コミュニケーション」こそが最大の付加価価になっている。
不便のないところに、コミュニケーションは生まれていなく、世の中には「必要な不便」と「不必要な不便」があって、「必要な不便」にお金を支払っていると分析する。
コミュニケーションがないと「願客」は「ファン」にはならないし、コミュニケーションがないとお客さん同士は繋がらない。
ファンがアーティストのライブTシャツを買う理山は、「私はこのアーティストを推しています!」という「意思表示」であり、「コミュニケーションツール」だ。だから、「ライブTシャツはオシャレにすると売れない」

今やAIの時代、「ビジュアル創造は、人間にとっては非定型業務かもしれないが、その内容は「これまで見てきたモノの編集作業」であるから、実はAI の超得意領域たった」という。イメージ画像も「検索」ではなく、AI に「生成」してもらえば良い時代になったらしい。
NFTを「資金調達の手段」として確立させた。全ての人が「AI×NFT」で活動資金を作れるとは限らないが、条件さえ揃えば「AI×NFT 」て活動資金を作ることができると、時代の技術に即応した方法も提示する。

【支援したことを証明するNFT】を作ったのは、絵本支援に限らず、障がい者支援、高齢奢支援など、「支援系」の規格をメダルに統一することで、「メダルを集めたい」という欲(収集癖)の力を借りて、これまで自分が目を向けていなかった弱い人の存在に目を向けてもらい手を伸ばしてもらうためだという。
世界は、最初に勝った人間を贔屓し、最初から持っている人間を贔屓する。学校では教えてくれないけど、これが世界の理たと力説し、1 日でも早く学ひ、 1 日でも早く勝てと励ます。
「悪い借金」はしちやダメで、「リターンが確実に見込める投資に使う借金」の「良い金」はした方がいいと、動き出すことを促す。

しかし、ビジネスにしろ投資にしろ、時代の流れをよく見極めることが大事だ。コロナが終焉に向かいつつある中で、レンタルスペースがオープンした。web会議に需要が多いの見たのだろうが、工事している時から疑問だった。今頃、ほとんどの企業が自社内のネット回線やWIFI の速度アップに投資している。案の定、その施設に利用者がいるのを見たことがない。周りに小さなな企業もあまりないところで、いつまで、レンタルスペースで持ちこたえるのか。早く業態変化する方が良いのではと他人事ながら心配している。「リターンが確実に見込める投資に使う借金」は良い借金と言いうが、確実に見込めるを徹底的に突きつめて判断したほうが良いだろう。


夢と金

出版社:幻冬舎
発売日:2023/4/19
単行本:320ページ
定 価:1,650円 税込

著者プロフィール
西野亮廣(にしのあきひろ)
1980年兵庫県生まれ。芸人・絵本作家。
2009年、『Dr.インクの星空キネマ』で絵本作家デビュー。0.03ミリ細い黒ペンで描かれたモノクロの緻密な絵が評判に。その後、『Zip&Candy-ロボットたちのクリスマス-』『オルゴールワールド』とモノクロ絵本を執筆。『えんとつ町のプペル』で初のカラー絵本を製作し、以後の作品、『ほんやのポンチョ』『チックタック~約束の時計台~』『みにくいマルコ~えんとつ町に咲いた花~』はすべてカラーで製作。絵本累計部数は100万部。
他にも、小説『グット・コマーシャル』、ビジネス書『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』『新・魔法のコンパス』『新世界』などがあり、すべてベストセラ―に。
製作総指揮を務めた「映画 えんとつ町のプペル」(2020年公開)は、映画デビュー作にして動員196万人、興行収入27億円突破、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞という異例の快挙を果たす。そのほか「アヌシー国際アニメーション映画祭2021」の長編映画コンペティション部門にノミネート、ロッテルダム国際映画祭クロージング作品として上映決定、第24回上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門へ正式招待されるなど、海外でも注目を集めた。
「えんとつ町のプペル」はミュージカルや歌舞伎としても上演され、好評を博している。
プペル発のNFTでは2022年10月31日に、取引量世界一を記録。

トップ写真:アレチノヌスビトハギ

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