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ぽちゃヒーロー #ショートショート5

「きゃ〜誰か〜」「助けてくれ〜」
多くの人の悲鳴が響く都心のビル街。
人々の視線の先には10階建てのビルと同じくらいの大きさの怪獣がいた。
怪獣はビルを倒しながらゆっくりと進んでいく。

「ぽっちゃマン助けて〜!」
多くの悲鳴の中で小さな子どもの声も響き渡る。

すると突然、マントをつけて全身タイツに包まれた、ぽっちゃり体型の男性が出現した。
全身タイツがパツパツで今にもはち切れそうになっている。
彼こそが正義を守るヒーロー「ぽっちゃマン」である。

ぽっちゃマンは怪獣に向かって走り出し、御神木のような太い怪獣の足に自身のお腹を思い切り突き出した。
するとぶつけられた怪獣がバランスを崩し、そのままビルを薙ぎ倒しながら後ろに倒れ、消えていった。
ぽっちゃマンの一撃必殺技『へそつっぱり』により怪獣の魔の手から街を救った。

「ぽっちゃマンだ!ありがとう」
先ほど悲鳴をあげた子どもだけでなく、街中の人から感謝の言葉が多く飛び交う。
今日もぽっちゃマンにより、街の平和が取り戻された。

「はぁ、はぁ、はぁ、終わった。」
ぽっちゃマンは苦しくなった息を整えながらゆっくり家路に帰る。

「ダメだ、今日はもう動けない。」
一人暮らしのアパートに着くとすぐに布団に横になり、寝息を立て始めるぽっちゃマン。
家の至る所にはお米の袋とさとうのご飯が大量に置かれている。

1時間ほどすると、スマホのけたたましいアラームが鳴る。
東京湾にイカの怪物が現れ、そこからのヘルプ要請だ。

「早くも要請か、、、」
ぽっちゃマンはそう言いながら、炊飯器から茶碗山盛りの白米をよそる。
そこにごま塩ふりかけをたっぷりかけて胃に流し込む。
ものの1分で食べ終わると、ベルトのボタンを押す。

「変身!ぽっちゃマン!」
そういうと家のベランダから東京湾に向かって重たい体を宙に浮かべて飛び始めた。

何を隠そう「ぽっちゃマン」はお米を一合食べることでヒーローの力を得られるのだった。

あとがき


テレビやアニメの世界のヒーローってイケメンか細身の人とかはいますけど、ぽっちゃり系の人ってあまり見ないですよね。
そんなぽっちゃり系のヒーローがいたらどうなんだろうと思い、書いてみました。

#ショートショート
#短編小説
#ヒーロー

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