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自作ショートショート・短編小説

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#ショートショート

色紙の真意 #ショートショート7

色紙の真意 #ショートショート7

「4年生から隣の市の学校に転校することになるのよ」
母さんの言葉が冬休み明けの学校帰りに俺に伝えられた。
まだ休み気分が抜けていない頭に、予想外の告知が舞い込んできた。
今までの転校生や転校生を知っているけど、それは自分には関係ないことだと思っていた。
新しい学校で何が待っているのか、俺の中には何の感情も湧いてこなかった。

その後すぐに学校の先生たちや友達の親たちにも、母さんから転校の話が伝えら

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ぽちゃヒーロー #ショートショート5

ぽちゃヒーロー #ショートショート5

「きゃ〜誰か〜」「助けてくれ〜」
多くの人の悲鳴が響く都心のビル街。
人々の視線の先には10階建てのビルと同じくらいの大きさの怪獣がいた。
怪獣はビルを倒しながらゆっくりと進んでいく。

「ぽっちゃマン助けて〜!」
多くの悲鳴の中で小さな子どもの声も響き渡る。

すると突然、マントをつけて全身タイツに包まれた、ぽっちゃり体型の男性が出現した。
全身タイツがパツパツで今にもはち切れそうになっている。

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俺はヒットマン #ショートショート4

俺はヒットマン #ショートショート4

BOSSから指令がくだった。
今日のターゲットは敵組織の中心人物の30代男性。特徴は体力に自信があることと左利きらしい。

俺は大きなものは狙わない。
あくまでコンパクトにうち抜くことを信条としている。
失敗してチャンスを逃したことも少なくはないが、あくまでヒットマンとしての高い意識を持って仕事に取り組むことは忘れていない。

BOSSは事前にターゲットの情報を伝えてくるが、ターゲットが誰であれ、

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冬のリモートワーク #ショートショート3

冬のリモートワーク #ショートショート3

働き方が大きく変わり、一緒に住んでいる彼氏もリモートワークで家にいることが多くなった。
出社していた時には見られなかった、会議でハキハキと話をしたり、集中してパソコンのキーボードに打ち込む姿に惚れ惚れして誇らしくなる。

基本的に私は一日中家にいて、天気の良い週末にはたまにベランダで日光浴をする。
そんな何気ない毎日で一人暮らしの彼の家にいることが幸せだった。
寒い冬の時期にはお風呂上がりには体を

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ショートショート#1 スポットライトの裏側

ショートショート#1 スポットライトの裏側

まえがき2020年に坊ちゃん文学賞に提出してみた処女作です。

スポットライトの裏側 私の彼はメーカーに勤務している研究者だ。
大学の工学部だった彼はそのまま同じゼミの先生の大学院の研究室に進学し、卒業後メーカーに就職した。そんなメーカーの研究所で私は彼と出会った。
彼は私の2個下だったが、彼は院卒ということで同級生として話すようになり、仲を深めていった。
彼の最初の印象は、真面目そう、だった。

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ショートショート#2 ボクとワタシの部屋

ショートショート#2 ボクとワタシの部屋

 隣の部屋の住人の笑い声でボクは目覚めた。
その笑い声はよく聞くと、若い男性と若い女性の声のようだった。
笑い声で目が覚めたが、その二人の笑い声はとても幸せそうで、少しくらいうるさくても、ボクにとっては心地よいくらいに感じた。
ボクは眠い目を擦りながらも、その男女が何を話しているか気になり、壁にそっと耳を当てた。
どうやら隣の部屋に住んでいる男性と女性は夫婦のようで、最近行った新婚旅行の話で盛り上

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