肉に埋まったナイフの羽根

 先日、つぐみが毛づくろいをしていたときのことだが、驚くべきことに、全く穏やかな色合いに生え変わってしまったと思っていた羽毛の中に、一枚、鈍く輝く刃のような黒羽根が混じっていたのである。つぐみは当然、こんなものが混じっていてはたまらない、と思ったわけだが、間もなくして、安心感のようなものが漂ってきた。確かにこれは夜鷹の羽根であって、彼の痕跡は、たとえかつては一枚残らず消え去っていたとしても、今確かにこの手元に残されているのである。厳しい寒空に研磨されたそのナイフは、翼の一振りごとにつぐみ自身を傷つけてしまいそうなほどだが、しかしなんとも、持っていて落ち着くものである。気付かぬうちに抜き去られていたと思っていたあの眼光の凶暴性は、確かに奥の方に残っていた。

 ある賢い男性が、化粧や衣服を考える感覚でその日鞄に入れておく本を考えてしまう、と言っていた。たとえ外でその本を一回も開かなくとも、その日一日の人格が、その本によって決まるのである。見事な洞察だ。

 世の中には、ナイフを地面に置いたり、あるいは投げ捨てたりすることのできる者がいるかもしれない。他方でもしそれができない者があるとすれば、そのナイフは、懐に仕舞い込むしかあるまい。例えば、肩から下げた鞄の一番奥に、こっそりとシオランを忍ばせておくことが、社交性や友愛や労働や恋愛やの、最高の特効薬であるのだ。

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