見出し画像

今、プロの作曲家になるための現実的かつ具体的な方法

結構よく受ける質問に「プロの作曲家にはどうやったらなれるか?」というのがあります。この質問、プロ作曲家というものを質問者がどう捉えてるのかによって返答もかなり変わるのですが、私なりに考えたプロ作曲家になる方法を書き記しておきます。

まず、ここで言うプロの作曲家の定義は、企業からの依頼で曲を作る人のことを指します。

実際にプロとしてやってる人じゃないとこの話説得力がないと思うので、軽く私の自己紹介をします。

私は、メインはゲーム音楽の作曲家なんですが、アニソンとか、CMソングとか、ドラマの音楽もたまにやったります。

20年近く前になりますが、初めてアニメに関わったのが『ラムネ』というアニメの主題歌『ラムネ色のメロディ』の作曲。ここ数年ですと、アニメ『ぼくたちは勉強ができない』の声優ユニット『Study』のデビュー曲「ready study go!」の作編曲、ゲーム『Fate/ground order』のCM曲や、アニメ『SK8』の挿入歌などを担当しております。

プロの作曲家といっても、J-POP、アニソン、ゲーム音楽、ドラマや映画のBGM、CMソングと分野も色々あります。今だとアニソン作曲家になりたいという方が多いんじゃないでしょうか。

今回はアニソン作曲家になるための方法をお教えします。

昔と今では、プロの作曲家になる方法は大きく変わりました。大昔は作曲家の先生に弟子入りという感じでした。

80年代〜2000年代はメジャーデビューしたシンガーソングライターやバンドのキーボーディストやギタリストがのちに作曲家に転向するのが多かったと思います。アニメ『SK8』で一緒に劇中歌を作ったMEGさんは、元ハイアンドマイティーカラーのギタリストなので、さっき言ったメジャーのバンドからの転向ですね。

私がプロになるきっかけは、私自身が同人ゲームサークルを立ち上げてそこで同人ゲームの音楽担当をしていました。それから知り合った他のサークルの音楽も担当するようになり、流れで商業のゲームの音楽を担当することになりプロになりました。
ゲームやアニメだと、同人からプロになるタイプも割といると思います。

それでは、アニソン作家になる方法ですが、一番の近道はボカロPになることです。

すでにご存じの方も多いと思いますが、今のアーティスト、アニソン作家はボカロ出身が多いです。米津玄師さん、スーパーセルのRyoさん、YOASOBIのayaseさん、他にもとにかくたくさんいます。今の日本の音楽業界を支えてるのはボカロPと言っても大げさではないのです。

ボカロPになるための方法はとっても簡単です。ボカロ曲を作ってYOUTUBEとニコニコ動画にアップするだけです。その際に歌詞やイラスト、または動画を用意しないといけないですが、それはご自身でどうにかしてください。自分で作れるなら自分で作ればいいですし、人に依頼するというのもスキルのうちに入ります。今の時代、作曲家は曲だけ作ればいいのではありません。

そして、ここからがプロを目指すための重要な課題です。ヒットを目指してボカロ曲を20曲、2年以内に作ってください。月1曲ペースぐらいですね。一応、10代〜大学生ぐらいで学業、バイトなどをしながらを想定しています。

その20曲のうち3曲以上が公開1ヶ月以内に10万再生を超えたらプロとしての見込みがあります。見込みがあるというのは、スタートラインに立てたという意味です。

100万再生超えが2曲以上あればどこかから声がかかる可能性が格段にあがります。

このように、今は自分の音楽の評価が再生数という数字である程度わかります。だから上京するとか、そういう人生の博打を打たずに適正があるかどうかを判断できるのです。とても良い時代だと思います。

まず、2年以内に20曲作れなかった人は、そもそも制作スピード的にプロとしてやっていけません。きっぱり諦めましょう。

20曲作りきれた人で再生数が伸びなかった人。一旦プロになるという考えは見直したほうがいいです。

再生数が伸びないというのは技術的に上手い下手とはあまり関係ありません。それよりも、自分の表現したい音楽と大衆が聴きたい音楽がシンクロしてるかが重要なのです。

シンクロしていれば、技術的に稚拙でも共感してくれるリスナーはたくさんいます。技術は作り続けていればある程度伸びます。しかし、自分の表現したい音楽と大衆が聴きたい音楽がズレている場合、プロとしてはなかなか厳しいです。

この時代とシンクロしてるか、それがセンスです。

人気のボカロ曲を聴いてこうんなふうに思ったことある人いるんじゃないでしょうか?

「あんまり上手くないのになんで人気なんだろ、自分のほうが上手いのに」

って。

そんなふうに思ってしまった人は、かなり危ない。だって、それは時代とシンクロするセンスがくて、売れてる曲の良いところを理解できていないということですから。

20曲作ってそのうち2曲が100万再生超えた人は、もうファンがついています。そのファンを大事にして継続的に新曲を作り続ければ、YOUTUBEと音楽配信だけで月のバイト代程度は稼げます。つまり、もうプロとして稼げてるのです。

あとはしっかり制作を続けつつ、音楽制作会社にデモと配信の実績を送ったりしつつ機会を伺っていれば、アニソンやVTuberの楽曲依頼などはいずれ来る可能性が高いです。

そして、20曲作ったけど、10万再生行かなかった人。さて、一旦プロになるというのを見直したほうが良いと私は言いましたが、別に音楽をやめろと言ってるわけではありません。プロになれないなら音楽やめますか?

実はここからがいちばん重要な話です。

声優や俳優は、今でも東京に出て人生かけないとまず勝負にすら出られません。しかし、作曲家は地元に居ながら、仕事をしながら勝負をかけることができます。だから、上京して25歳までにプロデビューできなかったら諦めて田舎に帰るみたいなことをするする必要はないんですね。

気をつけるべきは、残業の少ないホワイトな職業につくこと。そして自由な時間を作曲に使うのです。私の言った2年で20曲を作りきった後も、曲を作り続けることができるならまだ可能性はあります。

プロになるのに一番重要なことは続けることです。打席に立ち続ければヒットやホームランを打つ可能性があります。

これが、今の時代のプロになる確率を上げる方法です。

しかし、「25歳までにプロになれなければ諦める」みたいな区切りがないのは、それはそれでしんどいです。人間一番つらいのは期待を裏切られることです。自分がプロになれると期待しつづけて20年以上とかはさすがに人間壊れます。

だから、30曲作って10万再生行かなかった人は、プロになるのを一旦見直したほうが良いのです。別の音楽に関わる仕事をするとか、音楽は趣味にするとか。

音楽が好きであれば作り続けると思いますし、続けていれば少ないなりにもファンも居ると思います。私はプロになれなくても、自分の音楽を作り続けて、その自分の音楽を好きで居てくれるファンへ届けるということはとても素晴らしいことだと思います。

それは稼業ではないけど、立派な作曲家、音楽家です。

それを10年とか20年とか続けてると、ひょんなことから商業の依頼が来たりします。

友人にPolygonPromptっていう30年ぐらい一貫してミニマルテクノを作ってるやつがいるんだけどね、彼はプロじゃないけど、たまに商業ゲーム音楽のリミックスとか依頼されたりするんですよ。長年こだわりを持って制作を続けてることが信頼となってるから、そういう依頼があるんですよ。

私はこういうアーティストがすごくかっこいいと思う。立派な音楽家です。

冒頭のコメントのカビゴンさんが「作曲家の仕事は一部の選ばれた人以外は生業に生きていくのは難しい時代になるのでは」と書いておりましたが、おそらく、作曲家という仕事がこの世に誕生してから今日まで、作曲家の仕事は、一部の選ばれた人間がやる仕事です。

といいますのも、専業の作曲家としてそれだけで生活出来てる人はおそらく日本には1000人いないからです。

ちなみに看護師は114万人、高校教師が25万人、消防士は16万人です。

もういっこおまけでいうと、今年の東大の入学者数が3126人です。

毎年プロのアーティストとしてメジャーデビューする人は年間300組程度と言われてます。

作曲家の年間デビュー数はその数よりも全然少ないでしょう。

これでいかに作曲家が狭き門なのか、ご理解いただけたかと思います。だから、作曲家になりたいのならその一部の選ばれた人間になる必要があります。そしてその選ばれた人間ですら一生続けられる人は10%も居ないんじゃないかと思います。

それでも、私はプロの作曲家へ挑戦するのはとても良いことだと思います。作曲家に限らずこれからの時代は、一生ひとつの場所で続けられる仕事なんて殆どないですから。だったら好きなことをやったほうがいいでしょう。

少なくとも、2年で20曲を作りきった人は、間違いなく能力が高いです。その能力きっと自分の身を助けてくれることになります。

ぜひ、挑戦してください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?