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邪道な『ストレッチ』の活用法

皆様ごきげんよう!

最近ボイスコミック化された『MONSTERS』のシラノ役が大塚芳忠さんで、その隠す気ないネタバレ的出オチ感に絶賛爆笑中のbusonです。初見の方、はじめましてよろしくです。

今回は永らくわたしたちの身体のメンテナンスを担ってきた歴戦の古豪、『ストレッチさん』の話。

色々と種類がある中、最も一般的なイメージが強い『静的(スタティック)ストレッチ』はかれこれ2、30年ぐらい不要論や悪者説が取り沙汰され、世間を賑わしています。

個人的には『ストレッチ』自体に善悪はなく、目的や活用法次第で変わる話なのかなって思ってます。

なので、ここでは『ストレッチ』がわたしたちに悪影響を及ぼしていまう例を簡単に紹介しつつ、少しマニアックな活用法をシェアできればなと考えています。

では早速行きましょう!

ストレッチと柔軟性(関節機能)

おそらく、多くのみなさんが『ストレッチ』に対して抱いている最もわかりやすい効果は『身体が柔らかくなること』だと思います。

改めて基本的な原理について説明しておくと、筋肉は感覚器の一種で、通常『強く引き伸ばされている!』という刺激を感知することで反射的に損傷を予防するために縮もうとします(伸張反射)。

持続的な伸張刺激に反発する筋肉の収縮は大体15~20秒程続き、その後徐々に中央部(筋腹)から両端(腱)に向かって緊張緩和(精神的なリラクセーションも含める)が促されていきます。

伸張刺激が50~60秒前後まで持続すると、筋肉はそれ以上筋腹が伸びきらないように腱(筋肉の骨付着部付近の丈夫な部分)の方を緩めにかかり、結果的に筋肉の張力は低下してしまいます。

以上が『ストレッチ』によって筋肉の柔軟性が向上するプロセスで、文献的に筋出力と関節可動性の改善を図る目的では30秒前後の実施が推奨される理由です。


と、これだけではあまりに内容が薄いのでもう少し『身体が柔らかくなる』ということにフォーカスして、ここからは『ストレッチ』と柔軟性の本当の関連を語りたいと思います。

根本的な話として、『身体が柔らかい』というのは『筋肉の柔軟性』のことではなく『関節の柔軟性』が高いということを指します。

両者は必ずしも相関せず、『筋肉の柔かさ』は『機能的な関節の柔軟性』を保障する十分条件ではありません。

よく似た話題として、一般的にも『関節がゆるい』『関節が柔らかい』などの区別した表現を聞くことがありますが、これらの善し悪しを分ける決定的な差は一体どこから来ているのでしょうか?


答えは安定性(神経制御)の有無です。

関節機能を構成する要素は『可動性(分離性)』『安定性』で、それらを両立して初めて『機能的な柔軟性』が獲得できている(=関節が柔らかい)と言えます。

臨床では傍目から見て『メッチャ身体柔らかい人』が慢性的な腰痛を抱えている姿をしばしば目にします。

自分の経験上、そういった人の身体は特定の柔軟性が求められる動きに際して大抵同じ場所(エリア)を過剰に固定させています。

これは神経制御を逸脱した大きな可動性(見た目上だけの柔軟性)を保障するために別の場所が大きな負担を引き受ける必要があるからです。

つまりコントロールを伴わない柔軟性(可動性)は逆に関節機能を低下させ、故障の危険を大きくしているということです。

ここでもう一度話を戻すと、『ストレッチ』は筋肉の柔軟性を上げて関節の可動性を拡大する方法であって、関節の安定性(神経制御)を高める手段ではありません。

むしろ本来『ストレッチ』は安定性の向上と真逆の立ち位置にあります。

筋肉が『伸張感(伸ばされてる感)』を感じる要因は簡単に分けると短縮とスパズムの2種類があります。

短縮については名前のとおり筋肉自体が物理的に短くなっているケースで、これは長期の寝たきりや極度の不良姿勢、運動不足などが一定期間以上ずっと続いた場合に起こり得ます。

スパズムについては筋肉が神経制御によって縮んでいる状態で、強い痛みを誘発したり、関節に負担がかかるような動きを行おうとした際に『脳からの指令で』制動が促された結果として引き起こります。

ストレッチ時に感じる『伸張感』は圧倒的の後者の影響が多く、これは脳的に言えば『その場所、負担かかって不安定やからあんまやめといてや!』と忠告している部位を無理やり緩めるような行為なのです。

言い換えれば、ストレッチ感が強ければ強いほど身体の発する大きな拒絶を無視していることになります。

…では『ストレッチさん』は巷の噂通りやはり悪で、どーしょーもない存在なのでしょうか?

当然そんなことはありません。付き合い方を工夫することで『ストレッチ』は大きな味方にもなってくれます。

ストレッチは運動のナビゲーター

先にも述べたように『伸張感』は脳が身体を守るために発するサインです。では何故そもそも防御反応が必要な事態に陥っているのでしょうか?

答えは『運動の仕方』がマズイからです。正確には『骨格構造を生かせず、筋肉に過剰な負担をかけてしまうように動き方』になっているからです。

ここでは、具体的に身体の前屈動作をピックアップして機能的な身体操作の一例を解説していきます。

今一度あえて強調して言うと、前屈動作の本質は腿裏やふくらはぎの筋肉の柔軟性を高めることではありません。

あくまで『動き方』を改善する(関節が自然に安定して働く)ことが結果的に筋肉の柔軟性向上にも繋がるのです。

前屈動作のキモは主に以下2点。

①背骨の生理的湾曲を維持したまま股関節を軸に上体を倒していくこと

②動作を通してミッドフッド(土踏まずの中心辺り)に荷重を維持すること

これらを正確に意識して動作が行えた時、無意識時よりも伸張感は後に来て前屈可動域が拡がったはずです。

逆に前屈の際に体重がつま先や踵側に寄りすぎたり、一番初めに背中(特に腰)が曲がるような動き方をしてしまった時、伸張感はその瞬間ぐらいの勢いで押し寄せてきたかと思います。

運動には適切な重心移動や骨運動の順序(力の流れ)があり、そこから外れた時に身体はその不具合(力の連動性の途切れ)を伸張感(局所の過負荷)としてわたしたちに伝えてくれます。

前屈運動の場合は股関節⇒脊柱の順番に動的姿勢制御が行われることが重要で、股関節コントロールや脊柱のエロンゲーション(長軸方向への伸張を伴った生理的な湾曲)が不良な人はまずそれらから運動学習を行う必要があります

以上より『ストレッチ』についてわたしからの提案を一つ。

逆に考えるんだ『ストレッチしなくてもいいさ』と。

繰り返し述べてきたように、ストレッチは『不良運動のサイン』なわけですから、逆にできる限り『ストレッチ感』が消えていくような身体の動かし方を探求すれば自然に関節の機能的柔軟性や運動の効率性が高まってくる…――という理屈です。

何よりも、身体の各関節の運動方向や協調性、重心移動における力の流動や緊張緩和の感覚など、まず普段意識しないような変数に触れ合う(=内観をする)機会を作るだけでもとても価値のあることだと思います。

『ストレッチさん』は運動のコースアウトをその都度丁寧に教えてくれる『良きナビゲーター』なんて捉えると親しみがわいてきませんかね?

好きだからストレッチする

今回は『ストレッチ』についてあれこれ私見を書きましたが、究極わたしの言った内容や一般的な効果など重要ではないと思います。

一人一人が自分で感じた必要性に従って、心地良くストレッチが行えているのであればその情緒的価値に勝るものはないのですから。

自分の意思(ホンネ)を大切にしてあげて下さい。

あらゆる人間の行動は論理よりも感情によって生じます。大事なのは明確な自意識を持って『自分の感情(情緒)を尊重してあげること』。

『役に立つより』も『スキ』だからストレッチする。

本当にシンプルな理由でいいと思うんです。


『10スキ達成のお礼』

良かったら合わせてどうぞ。


ここまでご愛読頂いた方々本当にありがとうございます。

ではまた次回予告。

多くの人が悩む『痛み』について。

リクエストやコメントなんかもお待ちしてます♪

じゃあのノシ

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