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通訳は辛いよ~センシティブな質問編~
こんにちは、フリーランス中国語通訳・翻訳者のLIONESSです。
今日は、通訳のお仕事について。
《意訳せず、直接、言葉のままを相手に伝えること》
これは、通訳者の基本中の基本ルールです。
もしも聞き取れない、自分がよく理解できてないと思っても、意味を想像して勝手に話すのではなく、相手に『ちょっと意味がわからなかった(聞き取れなかった)ので、もう1回聞いてみますね』とお断りを入れて、正しい意味を理解したうえで、正しく通訳をする。
私は、民間企業だけでなく、官公庁等で司法通訳にも従事していますが、これができない人は、誤訳をするなど重大なミスを誘発してしまったり、時には国家賠償請求沙汰になってしまうこともあります。
それほど、言われたことをそのまま訳す、というのは大切なことなのです。
しかし、民間企業で通訳する場合は、ここにちょっとした工夫が必要です。
この場で全員の言葉の意味がわかるのは自分しかいないので、お互いに良い関係を築こうとしている時、またビジネスを展開させようとする時には、言葉のフィルターをかける作業が必要になることもあります。
とある日本人経営者の海外出張に通訳として同行した際、ビジネスパートナーになろうとしている中華圏出身のご夫婦が、食事会を開いてくださいました。
お二人は30代半ばの共働き夫婦で、それぞれ異なる業界でお仕事をされていました。
奥様と会うのはその時が2回目でしたが、ご主人とお会いするのはその時が初めて。ご主人の運転で、最寄り駅までお二人で迎えに来てくださいました。
その時に運転されていたのはSUV車で、広々とした空間の車内がとても印象的でした。
食事会場に到着し、中華テーブルを囲みながら食事をしていた時のこと。
日本人経営者の方が、『ところであなたたちには子供はいるの?』
と、お二人に質問されたのです。
おそらく、車内の空間が広い=きっと子供がいるんだろう、という考えになったのだと思いますが、後部座席、そしてトランクなど見ても、子供がいそうな雰囲気は全くありませんでした。
結婚して3年程というご夫婦、30代半ばで共働きとなれば、子育てに関する考え方や、また様々な事情があるかもしれません。
奥様は、以前お会いした時にも、子供の話題、そして結婚の話題についても、自らお話することはありませんでした。
きっと、国を問わず、子供がいないのか?作るつもりはないのか?という質問は、歓迎されないだろう、ここでその質問はまずいのでは、と思った私は、そのまま通訳をせず、経営者の方に『その質問は、ちょっとセンシティブなんじゃないでしょうか』と伝え、発言を一度差し戻しました。
今後、ビジネスするにあたって、こちら側の印象が悪くなることに繋がる可能性があると思ったからです。
経営者の方は『そっか、そうだよね。そしたら、結婚して何年になるのか聞いてくれる?』と質問をマイナーチェンジしました。(本当はこの質問もちょっとイマイチだなと思いましたが・・・)
食事会が終わり、お二人とは解散した後で、言葉を差し戻させていただいたことについて経営者の方に謝罪し、また説明をしたところ、その方は『いやいや、あそこで止めてくれて良かった』と言ってくださいました。
その方は、やはり年代が異なることもあるのか、時々危ない時があります。
以前、海外女性2人、とても仲が良く一緒に来日され、商談に来られたことがありました。
ずっと前からの友達関係だと言っていましたが、見るからにお揃いのネックレス、指輪、ファッションの系統も同じ。女性同士だからでしょうか、私はすぐに察しました。
しかし、その方はお二人に『ところで、彼氏はいますか?』と無邪気に尋ねられたのです。
私は心の中で『あ~~~~・・・(;^ω^)』と思いましたが、やんわり『お二人がとてもおキレイなので、彼氏さんがいるのか知りたいみたいです(てへっ☆彡)』という言い方でお二人に聞いてみたところ、二人とも笑いながら、ずっといないよ、と答えてくれました。
雰囲気が悪くならなかったので良かったのですが、後でお二人のSNSを教えてもらい、過去の投稿を見たところ、二人で記念日を祝ったりと、やはり親密な関係であることがわかりました。
その方とは数年間、通訳としてずっとお世話になっていますので、だいたいのことは言い合える、良い関係が築けています。
後日『今はそういう時代なので、話題作りというか、なんとなく聞いたつもりでも相手が不快に感じるかもしれない。今後は気を付けた方が良いかもしれませんね』と伝えました。
通訳の仕事は、言ったことをそのまま正しく伝えること。
でも、時にはフィルターをかけ、言葉を差し戻すなど、良い関係を築いてもらうためのちょっとした気遣いが必要かもしれません。
公的機関のお仕事では、どんな失礼な質問もそのまま直接伝えますが(笑)
日本人同士でも気を遣う話題がたくさんあるのですから、海外の方とお話する時は、より注意を払わなければなりません。
より良い通訳になるために、通訳の仕事を一度は放棄することも必要かもしれませんね。
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