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『BILL EVANS / TIME REMEMBERED』

思い立ったが吉日ではないですが、「GW明けなら映画館に人少ないんじゃね?!」と思って会社帰りにアップリンク渋谷で映画を見てきました。見た映画は『BILL EVANS / TIME REMEMBERED』。ジャズ・ピアニストのビル・エヴァンスの生涯を描いたドキュメンタリー映画です。

ビル・エヴァンス(Bill Evans)は、モダン・ジャズを代表するピアニスト。クラシックに影響を受けたと思われる印象的な和音とスタンダード・ナンバー(誰もが知っている定番曲)にアレンジを加えた優美なピアノのタッチで有名です。彼の楽曲は、現在でも幅広い世代のジャズ・ピアニストたちに影響を与え続けています。

私がビル・エヴァンスを知ったのは大学生の頃。当時はデザインや彫刻の課題などをする時の作業用のBGMとして「カフェミュージック」や「アニソン」なんかを聞いていました。いつだったかは覚えていませんが、何かの作業中にジャズ名曲集を聞いていた際、たまたま『Waltz for Debby』が流れてきました。しっとりとしたピアノの音に心惹かれ、作業の手を止めてその曲を聞いてみたのがビル・エヴァンスを知ったきっかけです。

この『Waltz for Debby』は、映画の中でも非常に重要な曲として扱われていました。特に、1961年6月25日、ニューヨークの地下にあるヴィレッジ・ヴァンガードというジャズクラブでのライブで演奏された『Waltz for Debby』はかなり貴重なもの。
実はこのライブの11日後の7月6日。この当時、ビル・エヴァンスはロコ・スコット・ラファロ(Rocco Scott LaFaro)というベーシストとポール・モチアン(Paul Motian)というドラマーと一緒にトリオで演奏していました。特にベーシストのラファロはビル・エヴァンスにとって片腕とも言える存在でした。そんなラファロが、交通事故で死去してしまいます。郊外にある母の家から帰る途中、木に激突してしまったとのこと。当時まだラファロ25歳でした。この1961年6月25日のヴィレッジ・ヴァンガードでのライブが、ラファロ最後の演奏になったのです。

ラファロの死だけでなく、ビル・エヴァンス自身の薬物依存をはじめ、内縁の妻・非常に敬愛していた兄の自殺などの悲劇が次々と彼の身の回りに起こります。その辛さに蝕まれていくビル・エヴァンスの姿も映像化されていました。

この映画では、「ジャズ・ピアニストとしてのビル・エヴァンス」と「人間としてのどうしようもないビル・エヴァンス」の2つの側面をうまく絡み合わせていたように思います。繊細で優美な音を作り出すために、並外れた才能と努力を惜しまないビルの姿を描き出しながらも、長い年月をかけて自殺をするかのような、ギリギリのラインで生きているビル・エヴァンスの両側面が見られてとてもよかったです。

都内の映画館だともう終わりがけのところばかりですが、東京近郊になるとまだ公開していない映画館もあるので、ぜひ見に行ってください!ビル・エヴァンスの珠玉の名曲を本人の映像付きで見ることができます。

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