私の車は？といわれても

先日のこと。
昼食の用意をしていると、窓から女性がこちらを覗き込んで何やらジェスチャーをしているのが見えた。

手を洗ってすぐに玄関へ向かったが、ほんの10秒ほどが待てないのか、チャイムを鳴らされた。

ドアを開けると、明らかに息が上がり、困惑と興奮の混ざりあった様子。
私より歳は下に見えるが、若くはない。

「私の車は？どこ？なにが起こったの？」

……と、いきなり言われても、こちらはもっと「？」である。

聞けば、前の道路に停めておいた車がなくなっているという。
そういえば午前中、たしかにうちの庭の端に寄せてあったのは見た。でもその行方はまったく知らない。

「申し訳ないですが、わかりません。車があったのは覚えていますが…」

と、私が言い終わるか否かのうちに、
「ほんの30分だったのに！カギは私が持っているのよ！見てなかったですか！？」
と、まくしたてる。
私はかなりヒマなほうかとは思うが、一日中、外を見て暮らしているわけではない。

話しているうちに、どうも私がレッカー移動させたのではと疑い始めたらしい。
「わからない」と言ったんだけどな。
そもそも庭の横に停められたところで別にうちは何も困らないんだし。

むしろ、向かいの家のガレージから車を出すには多少邪魔になる位置だった。
「もしかしたらお向かいがなにか見ているかもしれませんね。そちらで聞いてみたらいかがでしょう？」と勧めたが、それは完全に無視され、女性はどこかに電話をして「車がなくなっちゃったんだけど知らない？」とか言っている。
普通に考えて「うん、知ってる！」となるわけはないと思うが。

ずっとそれに付き合ってもいられないので、「じゃ、幸運を」と言って家に入った。
しばらくして、お向かいさんとその女性がお互いに大きなジェスチャーで話しているのが見えた。やはり車を出すのに邪魔で移動させた、ということらしい。

他にいくらでも場所があるのにここに停めたというのは間抜けな気もするが、30分でレッカー移動されてしまったのはちょっと気の毒ではある。

イタリアあたりだったらあちこちぶつけて無理やり出ることもあり得なくはないから気をつけてほしい。