人間機関車~「当たり前」への執着を捨てる~
「鳥栖の雀は真っ黒雀と言われていたんだ。」
いつだったか、死んだ祖父が蒸気機関車の模型を走らせながらそんな話をしてくれた事があった。
私の生まれた佐賀県鳥栖市は、福岡と長崎、熊本を結ぶ交通の要衝で、大きな機関区があった。そこでは何百もの蒸気機関車が煙を出していたから、街の雀はすすけて真っ黒になっていたそうだ。
戦時中に物資不足が深刻化すると、石炭を一切無駄にしないためのコスト削減への意識が高まり、「黒煙は機関士の恥だ」という横断幕が掲げられていたという。黒煙は石炭が不完全燃焼