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心臓の健康と食糧安全保障の向上につながる果物、野菜の処方

農産物処方(提供)プログラムに参加した心血管疾患のリスクが高い人々は、果物や野菜の摂取量を増やし、これは肥満指数(BMI)、血糖値、血圧レベルの改善と関連しており、食糧不安の減少とも関連していた、という米国タフツ大学などからの研究報告。 

処方プログラムを作成すると、医師は薬に加えて果物や野菜を処方できるようになる。患者は小売食料品店やファーマーズマーケットで好きな農産物を無料または割引価格で購入できる電子カードまたはバウチャーを受け取る、と研究者は説明している。 

これまでの研究では、小規模な個別の農産物処方プログラムの効果が調査されていたが、本分析で研究者らは、約6か月後の健康上の成果を評価するために全米の9つのプログラムのデータを統合した。これは現在までで最大規模の農産物処方研究であると思われる。

分析には、2014年から2020年にかけて非営利団体ホールサム・ウェーブが運営した9つの農産物処方プログラムのうちの1つに登録した1,817人の子供と2,064人の大人が含まれた。このプログラムは、米国 12 州の低所得地域の 22 か所で実施された。

プログラム参加者は全員、心臓病や2型糖尿病を患っているか、発症するリスクがあり、食糧不安を抱えているか、主に低所得層が住む地域にサービスを提供する診療所に登録していた。

成人参加者の平均年齢は54歳だった。71% が女性、30% が白人成人、45% が黒人成人、21% がヒスパニック系成人で、成人の人種/民族の 4% が「その他」に分類された。

研究に参加した子供の平均年齢は9歳だった。約半数が女子、9%が白人の子供、13%が黒人の子供、76%がヒスパニック系の子供で、子供の人種/民族の2%が「その他」に分類された。子供の参加者のほぼ 3 分の 2 が連邦政府の補足栄養支援プログラム (SNAP) に登録していた。

調査開始時に、調査対象世帯の半数以上が食糧不安を経験していると報告した。 

研究参加者は、地元の店舗やファーマーズマーケットで農産物を購入するために月額63ドルの中央値を受け取った。さらに、参加者は栄養学のクラスにも参加した。プログラムの開始時と終了後(期間は 4 ~ 10 か月)、参加者は果物と野菜の摂取、食糧不安、健康状態に関するアンケートに回答した。また登録時とプログラム終了時に体重と身長、血圧、血糖値(ヘモグロビン A1c)を測定した。この研究には対照群は含まれず、プログラム参加前後の参加者間の結果を比較した。 

すべての参加者を分析した結果、次のことが明らかになった。 

・成人は、果物と野菜の摂取量が1日あたり1カップ近く(1日あたり0.85カップ)増加したと報告した。子供の間では、果物と野菜の摂取量が1日あたり約4分の1カップ(1日あたり0.26カップ)増加した。
・収縮期血圧が 8mmHg以上低下した。一方、研究登録時に高血圧だった成人では拡張期血圧が5mmHg近く低下した。
・血糖値(HbA1c)は、糖尿病の成人では 0.29 ~ 0.58 パーセントポイント減少した。
・BMI は大幅に改善し、肥満の成人では 0.52減少した。しかし、子供では、BMIは変化しなかった。
・成人はプログラム完了までに健康状態が良くなったと報告する可能性が62%、子供は2倍以上に上った。
・全体として、プログラム終了後はプログラム開始前に比べて、参加者が食糧不安を報告する可能性が 3 分の 1 減少した。 

「低栄養と栄養不安は、2型糖尿病などの心臓代謝疾患や、心不全、心臓発作、脳卒中などの心臓血管への影響を含め、世界的に慢性疾患の主な要因となっています」と米国心臓協会の主任臨床科学担当者でありコロンビア大学教授であるミッチェル・エルキント医師はコメントしている。「農産物処方プログラムのこの分析は、栄養価の高い果物と野菜の消費を増やし、食糧不安を軽減し、主観的および客観的な健康対策を改善するための補助金付き農産物処方の可能性を示しています。今後の研究では、潜在的なバイアスを相殺し、農産物処方プログラムの利点をより厳密に証明するために、ランダム化比較試験を含める必要があります。」

出典は『Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes

http://dx.doi.org/10.1161/CIRCOUTCOMES.122.009520



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