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「予防医療テック」の未来 5.5億円を調達した舞台裏

リンケージは3月30日に資金調達の実施を発表し、株式会社マイナビ、Medical Development Support1号投資事業有限責任組合、個人投資家の竹内真氏、上沢仁氏などから5.5億円の調達を行いました

リンケージはこれまで、健康保険組合や企業を通じて、働く人へ広く予防医療をオンラインで提供してきた予防医療テックカンパニーです。

今回は本ラウンドに参画いただいた個人投資家の竹内真さま、上沢仁さまに、リンケージの可能性や予防医療テックの未来をどのように見据えているか伺いました。

竹内真さまプロフィール
2001年、電気通信大学情報工学科を卒業後、富士ソフト株式会社に入社し、主に官公庁や大手通信会社向けのシステム開発に従事。2007年、株式会社リクルートにて全社共通基盤フレームワーク開発などに従事し、同時にSeasarプロジェクト内でOSS活動も開始。2008年、株式会社レイハウオリを創業。その後、ビズリーチの創業準備期に参画し、取締役CTOに就任。2020年2月、ビジョナル株式会社取締役 CTOに就任現職。社外活動として一般社団法人日本CTO協会理事を務める。
上沢仁さまプロフィール
1992年、慶應義塾大学経済学部卒業。金融機関の東京本店、ニューヨーク支店、ロンドン支店で勤務後、米国カーネギーメロン大学にてMBA取得。その後、マッキンゼー&カンパニー日本支社でのヘルスケア領域のエンゲージメント・マネジャーや、米系医療情報会社であるIQVIA社でのシニア・プリンシパルを経て、2014年から2018年まで株式会社JMDCの代表取締役社長を務める。

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「行動変容」を起こさせる仕組みの重要性

– 出会いのきっかけや、お互いの印象を教えてください。

代表/生駒(以下敬称略):
真さんとは趣味のアートワークを通して知り合いました。真さんは人格者であることもさることながら、ビジネスへの知見も深い方、といった印象です。

上沢さんとは仕事を通して知り合い、それ以来のご縁です。上沢さんは医療データ領域に15年携わるプロフェッショナルとして業界を牽引し、また、経営者としても事業を推進する力に長けた方として尊敬しています。

お二人にはすでに、組織開発の強化に向けた採用活動、予防医療テックで扱うデータ活用の戦略立案についてご協力いただいています。

竹内:
私は当初、趣味を通して知り合ったので、まずは生駒さん個人のパーソナリティに興味を持っていました。のちに会社の代表であり、ビジネスマンとしての生駒さんへ理解を深めるわけですが、現在では事業戦略やマーケットを見出すスキルもお持ちだなという印象です。

上沢:
生駒さんから紹介していただいた通り、仕事を通して知り合いました。私がJMDCにいた2014年にご一緒したのが最初で、最近も健康保険組合向けのビジネスで協業する機会がありました。バランスの取れた判断力と大胆な行動力、さらにフレンドリーさをお持ちの方との印象です。

– 投資の決め手になったのは何だったのでしょうか?

竹内:
私自身、このラウンドで一番重要なのは、利益をしっかり出せる方向に運営・実行できているかどうかだと考えています。その点、リンケージにはすでに、数字で物語る実績がありました。

さらに、生駒さんのパーソナリティにも魅力を感じています。ベンチャー企業は、さらなる事業や組織拡大の中で、新たな課題と立ち向かう頻度が高くなりがちです。それでも、彼にはどんな困難もなんとか乗り越えるだろうと、期待も信用もしているんです。

私はこれまでに数社、個人投資家として起業家を支援してきました。これらの投資は、前提として事業にマーケットがあれば、ですが、ほぼ9割がたは代表のパーソナリティで判断してきています。リンケージに投資したのも、代表である生駒さんへの期待が大きいからです。

上沢:
予防医療テックは大きな効果が期待できる段階にきたと思っています。健康リスクのある個人を高い精度で特定し、効果的な予防プログラムを提供するといった供給面において、データ分析やwebサービスなどのテクノロジーは絶大な効果を持ちます。

もっとも、需要側である個々人への働きかけでは、テクノロジーは万能ではありません。予防行動に取り組んでもらうための「やる気の醸成」が最大のハードルであり、参加したくなる仕掛け作りや、腹落ちしてもらう説得力など、人間スキルを駆使したサービス設計が必要です。健康保険組合や企業にサービスを採用してもらうための、情熱にあふれた提案力も欠かせません。

リンケージはそうした観点から見て、テクノロジー面での開発力だけでなく、健康や予防に情熱をもつ人材が集まっており、生駒さんはモチベーションの非常に高い組織を作り上げている代表だとお見受けしています。そうした体制自体に強みを感じ、投資を決意しました。

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予防医療テックが秘める経済合理性

– 予防医療領域に対してお二人が捉えている課題や期待を教えてください。

竹内:
人生100年時代、健康経営、健康寿命などが叫ばれる中、医療費も比例して増大し、社会保障基盤自体が揺らぎ始めている日本において、「予防医療」はその両方を叶えることの出来る手段のひとつです。国として取り組むべき命題でしょう。

しかし、その有益性を享受できるはずの国民は、予防医療の重要性について頭では理解していても、ほとんど行動を起こしていません。加えて例えば、現在の保険制度が国の財政に対してどのように影響しているか、ほとんど認識していないでしょう。予防医療は治療と異なり、自覚症状が薄い段階で効果を発揮する手段である分、これでは知識不足のままで、行動変容を起こしにくいと考えています。

そこで行動変容へ繋げるには、より積極的で丁寧なコミュニケーションを図る必要があるでしょう。これは私にとっては大変で荷が重いことですが、リンケージにはやれる人たちがいるんです。それが素晴らしいと思っています。

当たり前ですが、あらゆる人は、病気になってから治すより、病気にならないように生活した方がいいに決まっています。リンケージはこうした観点から、ビジネスだけでなく、社会に対するインパクトも大きいことにチャレンジしていると思うんです。だからこそ、やり切って欲しいなと純粋に応援する気持ちは強いです。

生駒:
確かに、リンケージで働く社員には、「目の前の患者さんのために」と働く人が多いです。例えば開発チームにも、看護師や薬剤師、MRとして勤務していたメンバーがいます。彼らはそうした体験を経てキャリアチェンジし、いまは仲間になってくれました。

COOの夏目も、知り合いのメンタル不調を目の当たりにして課題を感じ、リンケージにジョインしてくれています。それぞれが想いを持って集まっているからこそ評価してもらえているのだと実感しますね。

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上沢:
予防医療サービスは、テクノロジーにより効果が高まったことに加え、企業や保険者、自治体のニーズが高まってきた点にも期待しています。SDGsや健康経営、保険者データヘルスといった新たな価値尺度が広まったことで予防のニーズが高まっています。さらに、データにより医療費や労働生産性の改善効果が定量化できるようになったことで、経済合理性に基づいた予防サービスの採用判断が可能となりました。これはユーザー企業にとって採用ハードルを大きく下がる効果があります。

もう一つ中期的な観点では、ウェアラブルデバイスによる健康状態モニタリングにも期待しています。脳卒中や心筋梗塞、糖尿病といった生活習慣病から睡眠時無呼吸、さらには熱中症などの急性症状まで、ウェアラブルデバイスを活用したリスク検知や予防啓発はこれから大きく発展すると思います。

過去にはできなかったことが、組み合わせ次第で実現できるようになる。それは間違いなくビジネスになる。そんな意味でも、予防医療テックは今、まさにテイクオフした領域だと思います。

竹内:
そうですね。私もこれまで長くテクノロジーの世界に身を置いてきました。この領域において技術の力で何ができるかを考えると、それはコストサイドに対するイノベーションを起こすことだと考えています。例えば、昔はアナログだったものを、デジタルに置き換えて早くするといった即時性や即応性を高めるなどといったアプローチが考えられます。

予防医療の領域はもちろん重要で有益性も高いです。しかし、実際に役に立つかどうかを結果として確認するには、長い時間を要するでしょう。そこでもう一つ必要なアプローチが、キープインタッチし続けることです。そこでは、上沢さんがおっしゃったように、アプリやデバイスなどのテクノロジーが活躍するでしょう。

人と長くつながり続けるには、現実的ではないほどの工数とコストが必要になります。しかし、いまはテクノロジーがあるのです。オートメーション化できることにテクノロジーを活用し、コストを低く持続的に、長くサービス提供していけば、その効果も検証できるでしょう。

ただ、それとは別に、アクティブな行動変容を促す必要があります。そこで重要なのは、やはり根気やCSなどの体制の整備です。もちろん、それらを全部整える企業は少ないですが、その1つがリンケージかなと思います。

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上沢:
その通りですね。たった1人に行動変容を起こさせるだけであれば、コストをかけて、1対1の対面でしっかりとコーチングするのが最も効果的です。とはいえ、そこまでコストをかけられるケースは限られます。テクノロジーの力で、いかにコストを下げつつ同様の効果を出せるかが勝負だと感じます。

竹内:
私が所属Visionalで展開するビズリーチで、少し似た実体験があります。従来、企業は人材採用のために求人を掲載し、応募の中から登用する人材を選んでいました。受動的な採用活動です。

これに対してビズリーチでは、データベースから必要な人材にアプローチをする、アクティブな行動変容を促しました。要は、そのほうがいい人材を採用できて、業績が上がりやすいといった結果に結びついていることを示し続けたんです。

リンケージで必要なのも、同じようなことかもしれません。例えば、予防医療に早くから取り組んでいる人は寿命が長い、といったデータなどを公表し続けるというか。コロナ禍でマスクが必須と認知されたことのように、人々の理解を深めていくしかないと思うんです。健康であり続ければ、絶対的に楽しく長く元気に生きれるからいいよね、と。本人たちが思うところまでもっていけるかどうかが頑張りどころになると思います。

生駒:
お二人の話を聞いていて、やはり我々は、テックカンパニーとしての部分をより強固にしなければいけないと感じます。1対1で人々の生活習慣病予防をしている世界から、例えば弊社で提供している「かかりつけ保健師 for LINE」のように、LINE登録すれば保健師さんにメンタルから身体健康までアドバイスをもらえるようになる、といった世界へ。いい意味でコミュニケーションコストを下げていけるようにテクノロジーを活用して、これまでできなかったアプローチに挑戦していきたいです。

経営にバランス感覚を

– 今後のリンケージに期待していることを教えてください。

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竹内:
医療領域は命に関わる業界で、規制が強い業界でもあります。その分、外部要因に左右される部分も多いかと思いますが、地道にやり続けないといけないと思います。

逆にいうと、その規制の有無や規制緩和などのディレクションにまで関係が及ぶと、よりその事業の持続性を高めるとも思います。例えば、ロビイングや健康保険組合から国とのリレーションを構築するなど、社会に対して影響する部分もコントローラブルになってよいですよね。

いまのリンケージは、そうした一端を担う取り組みに関わっていてもおかしくないフェーズだと思います。ぜひチャレンジしてみて欲しいですね。

上沢:
私としては、いまのリンケージのミッションをしっかり理解した企業文化を広げていくようにしてほしいと思っています。

健康予防領域でサービスの質を高めて発展させるには、人々の健康を助けたい人材をうまく仲間に引き入れて、生き生き働ける企業文化がより重要だと感じています。そういった意味で、やはり普通のベンチャー企業よりも企業文化に注意を払うべき要素は大きいと思います。今の雰囲気を大事にしてくれれば嬉しいです。

生駒:
数年前に別の方にも、同じようなことをアドバイスされたことがあります。今の組織規模だから実現できていることもあると。規模が大きくなるとどうしても変化が起こり得るので、常に意識しながら組織強化を行っていかなければならないと改めて感じています。

竹内:
私自身、人材ビジネスに携わっているので、医療業界と少し似ている部分を感じます。それは、現場は目の前の人のために、善良なコミュニケーションをとる人が多いところです。

ただ経営陣としては、あくまで株式会社として存続し続け、利益を創出するために事業を展開する必要があります。そこで、現場の無償の愛にも近いボトムアップの考え方と、ビジネス的な視点、トップダウンの考え方がスイッチングする工程での舵取りを、うまく先導してほしいです。

利益を出し続けないと、やり続けることはできません。もちろん大儲けするかどうかとは話は別です。素晴らしい世界を維持、拡大していくためには、あらゆるバランス感覚が必要になります。ピュアさがゆえに逆回転しかねないシーンに遭遇しても、それを乗り越えていける経営チームづくりで、そのバランスをうまくとってほしいですね。

–最後に、リンケージ、生駒さんへのエールをお願いします!

竹内:
困ったことがあればいつでも相談して欲しいです。リレーションのある投資家は多分、代表視点でも、第三者視点でもアドバイスができる唯一の相談相手になれると思うんです。誰にも言わなくなるのは末期なので、吐き出し先として活用してもらえたら心配ないですし、嬉しいですね。

上沢:
もちろん、いつでもなんでも頼ってもらえたらと思います。私もこれまでの医療データ活用や行動変容促進での事業経験をもとに、微力ながらリンケージの発展に貢献できれば嬉しいです。

生駒:
お二人とも、ありがとうございます。事業が進むに従って頼りにするシーンも多いと思います。ぜひ根気よくお付き合いいただけたら心強いです。

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