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旧仮名遣いと韓国漢字音②「クヮ」と「カ」の区別が韓国語上達への近道

旧仮名遣いと韓国漢字音①では、現代仮名遣いで消滅した「テフテフ」(蝶々=チョウチョウ)等の「フ」の音が現代韓国語の漢字音でも「ㅂ(p)」パッチムとして温存されていることを紹介した。
その最後でも軽く触れたが、同様に日本では消えてしまった音(の痕跡)が韓国語には残っているケースは他にもある。今日はその中の1つ「クヮ」と「カ」の区別について紹介したい。

画家 ガカ

現代仮名遣いでは「画」も「家」も同じ「カ行」の「ア」の段の音で、「ガ」は「カ」の濁音として扱われている。

「画家」は韓国語で

화가 ファガ

という。「画家」という漢字をそのままハングルに直しただけで意味も同じである。

日本語と韓国語の漢字の音が非常に似通っていることは過去に何度も触れているが、「カ」で始まる漢字語を例に取れば

家具 가구(カグ)
歌手 가수(カス)
可能 가능(カヌン)
価格 가격(カギョク)
加工 가공(カゴン)
稼働 가동(カドン)
仮面 가면(カミョン)

(  )内は韓国語の発音

など、韓国語でも同じ「カ」の音になっている。
であれば「画家」も「カガ」になって良さそうなものだと思いたいが、なぜ「ファガ」なのか?
それは「画家」は旧仮名遣いでは「グヮカ」と書くから(大昔は発音も「グヮカ」だったらしい)である。
現代仮名遣いでどちらも「カ」行に統一された「」と「」だが、韓国語に「グヮ」「」の違いが表れているのだ。

「カ」と「クヮ」、「ガ」と「グヮ」の違いは、よく使う漢字だけでも次のように数多くある。

「カ」下 可 河 荷 歌 加 架 佳 価 仮 夏 家 稼
「クヮ」火 化 花 華 貨 科 過 果 課

「ガ」牙 芽 雅 我 餓 賀
「グヮ」瓦 画 臥

「カイ」介 改 戒 械 界 皆 階 海 開 解
「クヮイ」回 灰 会 絵 快 怪 悔 壊 懐

「ガイ」亥 該 骸 害 涯 崖 街 凱 概
「グヮイ」外

「カク」角 革 各 格 閣 核 覚 隔 殻 確
「クヮク」画 拡 郭 穫 獲

「カツ」渇 喝 褐 割 轄
「クヮツ」活 括 刮 滑 猾

「ガツ」合
「グヮツ」月

「カン」干 刊 幹 乾 菅 韓 甘 看 間 簡 寒 感 漢 監 鑑
「クヮン」完 官 管 館 冠 巻 貫 慣 換 寛 関 環 勧 歓 観

「ガン」含 岸 岩 眼 雁 顔 癌
「グヮン」丸 元 玩 頑 願

関西学院大学」(関学)の英語表記が「KWANSEI GAKUIN UNIVERSITY」(クヮンセイ)であることは関西人ならよく知っていると思うが、これは旧仮名遣いを現したもので、一方の「関西大学」(関大)は「KANSAI UNIVERSITY」(カンサイ)と現代仮名遣いを採用している。

最初に挙げた日本語の「カ」が韓国語でも「カ」と発音される例は、実は旧仮名遣いでも「カ」と表記されるもの(家 歌 可など)ばかりをわざと選んだからで、旧仮名遣いでは「クヮ」と書かれた「火 化 花 科 過 課」などは韓国語ではそれぞれ「クヮ(科 過 課)」「ファ(火 化 花)」と発音され、「カ」との違いがここでもハッキリと表れている。

尊敬するある先生の本に、長野県のお年寄りが「家事」と「火事」を今でも「カジ」「クヮジ」と発音し分けると書いてあった。上に書いた通り、韓国語で「家」は「カ」、「火」は「ファ」と発音する。長野県のお年寄りはなぜ韓国語でそうなるのかを容易に理解できるはずだ。

つまり、旧仮名遣いと韓国漢字音①でも述べた通り、旧仮名遣いを知っていれば、日本語で「クヮ」と書く漢字音は韓国語では「과(クヮ)」「화(ファ)」「와(ワ)」「회(フェ)」「외(ウェ)」「괴(クェ)」「쾌(クェ)」「월(ウォル)」など、単純な「カ(ア段)」の音ではなく「小さいウ(w)」音を伴う音(wa, we, wo)になることが類推できるというわけだ。

どの漢字が「カ」でどの漢字が「クヮ」なのかを即答できる現代人は古文の先生ぐらいだろうが、もしあなたが中学生や高校生で韓国語を身に着けたいと思っているのであれば、古文の勉強(特に旧仮名遣い)をしっかりやることが韓国語習得への近道になると思いますよ!

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