「シェアハウスノススメ」始まりは突然に(3)

まずは空いている部屋を見てみて、ということで私はカオリをうちの2階へ案内した。弟と妹が使っていた2部屋が空いているが、私の片付けと掃除が途中で終わっている状態で、引っ越してくるのにはそれを完了させねばならなかった。私は四人兄弟の長女で、この弟と妹は下の二人だった。

細かいやりとりは忘れてしまったのだけれども、次のお休みの日に、まずはもうほとんど片付いているほうの部屋の片付けと掃除を終わりにしましょうということで話はまとまった。

複雑な話し合いや取り決めは必要なかった。私は片付けと掃除を手伝ってくれる人が必要だったので、それをしてくれるかわりに家賃は要らないと最初に言った。誰かを雇えば家賃相当分の経費はかかるので、お金ではなくて労働力で返してくださいというわけだ。その他食費やら光熱費やらは相応の分担ということにした。

のちにこの取り決めについて知り合いに話したら、多くの人から「それはよくない」「大丈夫なのか」と言われた。私はお金がない人からお金を取るつもりはないし、何より必要なのは片付けと掃除を手伝ってくれる人だった。とりあえず家は私のものだし、空いている。部屋と労力の交換がそんなに悪いとは思えない。

家が片付いていないというのは私にとって精神的な重荷になっていた。この家の片付けについてはそのときに始まったことではなかった。父親が死んだときも、兄弟姉妹が家を出ていって荷物を置いていったときも、下の妹がいらない荷物を段ボール箱で送り付けてきたときも、片付けはほとんど私がやっていた。ある夏などは送り付けられてきた段ボール箱のゴミの仕分けを毎日やっていて、多量の汗をかき、具合が悪くなって1週間、起きれなくなったほどだった。

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