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スリランカ、2019年4月21日 ②

テロ攻撃のあった日は、日曜日。キリスト教の復活祭(イースター)でした。
それだけではなく、スリランカのニューイヤー・ホリディ(旧正月…毎年4/10〜20前後の10日間はスリランカの大型連休)の最終日。教会にはキリスト教徒が礼拝のために集まり、コロンボ中心街もたくさんの人で溢れていました。

その日、日本にいた私に、スリランカ・コロンボのビジネスパートナーからSlackのメッセージが入りました。受信時間は日本時間13時50分。スリランカとの時差は-3.5時間なので、現地時間10時20分。

最悪なニュースだ。5ヶ所で爆発があった。コロンボ・ニゴンボ・バティカロアの教会と、ホテルはシナモングランド・シャングリラ・キングズバリー(いずれもコロンボの高級ホテル)がやられた。それ以上はまだ分からない。

※ニゴンボ/Nigombo…コロンボ国際空港近くのビーチリゾート。コロンボからは車で高速道路を使って30分程。
※バティカロア/Batticaloa...スリランカ東海岸(コロンボは西海岸)に位置する都市。

すぐにパソコンを開き、スリランカ現地ニュースのサイトを確認。
ニュースサイトトップにある"Explosion(爆発)”の文字と、異様な黒煙が上がる写真を見て戦慄したのを、今でも鮮明に覚えています。

事態の全容はまだ分かっていませんでしたが、現地がとても混乱しているのは、Slackのメッセージからも感じました。
連絡をくれたビジネスパートナーには、奥様と息子がひとりいます。家族は無事なのか…。尋ねると、心配いらない、ありがとうとの返事。
メッセージに書かれている死者数が加速度的に増えていきます。15時13分(現地時間11時43分)の段階で105人。30分後には138人、そのうち外国人が9人。重傷者は400人以上。その日の夜には死者200人を突破し、翌朝には死者262人(公式発表は259人に修正)。とんでもない事態に接していました。

私たちが契約しているヤシガラ培土(ココピート)工場は大丈夫だろうか。工場はスリランカ北西部のクルネガラ。コロンボから車で3〜4時間の距離です。
この状況で混乱しているだろうし、安全を確保するのに必死なのではないか。連絡して良いものかどうか…やはり安否確認は必要だと判断して、Slackで連絡。

クルネガラで爆発は起きてないから、こっちは安全。しかし最悪の事態だ。

工場の社長からのメッセージにはそうありました。
ひとまず安堵したものの、スリランカ全土で巨大な不安と恐怖が広がっているのを感じます。

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一方、コロンボ在住のビジネスパートナーは、現地状況のメッセージを送り続けてくれました。
当日15時32分(現地時間12時02分)の段階で、イスラム過激派の犯行が疑われておりISILが関係している様だ、との連絡。現地では既に、ISILが関係するテロ攻撃の可能性との報道がありました(その後、ISILを関与を示す証拠は発見されず)。

メッセージを受けながら、取引のあるスリランカ各社に連絡を取り、ひと通り無事を確認しながら、次々とニュースサイトにアップされる現地の凄惨な画像を目にして、それでも正確な情報収集に集中しました。
ここまで大きなテロ事件ですから、やがて日本でも報道されるはずです。その時、私たちのヤシガラ培土(ココピート)を注文して頂いている日本国内の取引先各社への正確・迅速な情報提供が、この非常事態においての私たちのビジネスの生命線だと判断したのです。

そこからは、ほぼ毎日、ビジネスパートナーやヤシガラ培土(ココピート)工場から発信されるスリランカの現地情勢を、日本国内取引先各社に発信し続けました。
スリランカ政府が非常事態宣言と外出禁止令を発令したこと。ヤシガラ培土(ココピート)の製造状況はどうなるのか。輸出はいつから再開できるのか。

思い返せばドライな対応だったなと思いますが、ビジネスである以上これが当時考え得る最善の行動でした。

同時に、不安や恐怖といった感情を抱いていました。
当時海外で頻発していたISILの関与が疑われるテロ事件。でもスリランカにその気配が近寄ってきた気配はなく、どこか遠い異国の出来事でした。それがいきなり同時多発テロ。イースターという、キリスト教徒が教会に集まる日を狙った計画的な大量殺人。更にコロンボにある複数の高級ホテルも標的となり、私が滞在中に何度も訪れた場所が爆破されたのです。

テロ攻撃が一気に身近に迫ってきました。
仕事でスリランカはじめアジア諸国に行く機会の多い立場です。今回はたまたま現地にいなかったので難を逃れましたが、この日現地に滞在していても不思議ではありませんでした。

このテロ事件後、もちろんスリランカに行きました。
空港の警備は厳しくなり、自動小銃を構えた空軍の警備兵は増員されています。コロンボの高級ホテルでは、全ての入り口の金属探知ゲートが設置され、荷物チェックも行われています。

幸い、私たちのヤシガラ培土(ココピート)のお仕事は、非常事態宣言・外出禁止令下を経て(その後のコロナ・パンデミックも)、今に至るまでなんとか稼働を続けてくれています。

「カントリーリスク」という言葉があります。もともとは投資先国で起こる自然災害や戦争などに起因した減益を指す金融用語ですが、貿易事業においても近しい意味で使われます。

日本だから安全、というわけではありません。
私たちの常識が通じない事態が起こる可能性は、どこに国でビジネスをしていても常に存在しています。2019年4月21日スリランカでの出来事では、それを痛感すると同時に、命に関わる事態、友人を失うかもしれない事態にも接する可能性を感じました。

リスクのないビジネスなど存在しませんし、テロ攻撃があったからといってその国とのビジネスを辞めるという選択肢も私にはありません。コロナが収まれば、またスリランカに行きます。
ただ、命の危険を感じる恐怖が、他人事ではなくなったことも事実です。この先、何が起こるかは誰にも分かりませんが、誰もが絶望した2019年4月21日スリランカでの出来事が、もう二度と起こらないことを祈ります。

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