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柔らかな朝

5
心身の恢復途上の軍人と薬草摘みの魔女のある朝の記録。
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柔らかな朝#5

彼は同じ旋律を懸命に繰り返し弾き続けた。
行進曲は壮大な旋律だったが、小さな家の古いピアノで弾くとどうしても音色が充分に響かず、どこか迫力に欠けた。それでも彼は防衛軍の威厳を表現するために力強く演奏を続けた。いつか彼の繊細な指が折れてしまうのではないかと心配するほどだった。

私は刺繍をし始めた。深緑の刺繍糸で、彼の名のイニシャル「H」を、ブラウスのポケット、スカーフ、非常食袋、楽譜ケース…彼が軍

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柔らかな朝#4

日の光が庭の花に充分に射し込む頃、たっぷり時間をかけた私たちの食事が終わった。
私は食器を下げ、石鹸で洗う。彼はその間に洗いたての白いシャツに着替え、昨日街で買ってきたという楽譜を手にピアノへ向かう。

家には、祖母が弾いていた古いピアノが一台あった。私も小さな頃祖母に習ってピアノを弾いていたものの、いつしか開くことがなくなってしまった。そんな埃を被った手入れもされていない古いピアノを彼が見つけ、

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柔らかな朝#3

私たちは、ぽつりぽつりと話したり、あるいは心地よい沈黙を味わいながら、ゆっくりと朝食をとった。
彼が話すのは、森の中でさえずる小鳥の名や、街に品揃えの良い楽譜屋を見つけたこと、私が調剤した頭痛薬が大変によく効いたことなど、他愛のない内容だった。

彼は自分の過去を話そうとしなかった。
森の中で薬草を摘んでいる最中に、全身に深い傷を負い、瀕死の状態で倒れている彼を偶然発見したのが1か月前。身なりから

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柔らかな朝#2

「さあ、できた。食べよう」
「ありがとう。いただきます」
私はまず、木製の器に入ったミモザサラダを皿によそう。新緑のリーフサラダと生ハムに、ミモザ色の卵とラクレットチーズが盛られている。春の庭を思わせる、美しいサラダだ。
彼は、ひよこ豆のあたたかいスープを飲んでいる。このひよこ豆は、私が金曜日に市場で買ったものだった。クリーム色、赤紫色、緑色、様々な色に惹かれて買ったものの、使いどころが分からず放

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柔らかな朝

駒鳥の鳴き声で目が覚めた。
駒鳥は馬の嘶きのような声で鳴く、愛らしいオレンジと水色の羽毛を持つ小鳥だ。
一度だけ、森で見かけたことがある。

春の始めのやわらかな光が窓から差し込んできた。小さな塵が光を受けてちらちらと待っている。
私はその様子をしばらくぼんやりと眺めて満足し、やっとベッドから起き上がり、のろのろとリビングへ向かう。寝室を抜け出し、階段を降りると、焼きたてのパンの香ばしい匂いが漂っ

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