柔らかな朝#2

「さあ、できた。食べよう」
「ありがとう。いただきます」
私はまず、木製の器に入ったミモザサラダを皿によそう。新緑のリーフサラダと生ハムに、ミモザ色の卵とラクレットチーズが盛られている。春の庭を思わせる、美しいサラダだ。
彼は、ひよこ豆のあたたかいスープを飲んでいる。このひよこ豆は、私が金曜日に市場で買ったものだった。クリーム色、赤紫色、緑色、様々な色に惹かれて買ったものの、使いどころが分からず放置していた。彼が豆のかわいらしさを引き出す素敵な料理にしてくれた。
半熟卵の目玉焼きの横には、彼の出身国の名産品のソーセージが1本。庭で葉を伸ばしているローズマリーとマジョラムで香り付けがされている。味付けは塩胡椒のみ。
私は山羊のミルクを一口飲んでから、ソーセージの傍に飾られたハーブと、目玉焼きの黄身の部分をうっとりと眺めていた。
ライ麦パンにつけるのは、バターとジャムと蜂蜜。ジャムは木苺、無花果、オレンジ、林檎。蜂蜜はラベンダー、ひまわり、レモン、アカシア。彼は最初家にあるジャムと蜂蜜のボトルを見た時に目を丸くしていた。「世の中にはこんなに多くの種類のジャムや蜂蜜があるんだな…」と感心しながら、いつまでも興味深げに眺めていた。

私は、食事をしている時の彼の姿を見るのが好きだ。彼はとても静かにゆっくりと、そしてリラックスした表情で食事をする。ピリピリした表情が和らぎ、視線は食べ物か窓の外の風景にぼんやりと注がれている。食事をしている時だけは、自然体の彼の姿を垣間見ることができる。

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