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残酷な運命、残された時間

今朝、1匹のタイリククロスジヘビトンボを見かけました。
地面近くの切株にじっと留まっているその姿にはどこか違和感が

・・・羽化不全

厳しい生存競争を勝ち抜き、昆虫としては極めて長い約4年とも言われる幼虫期間を経た先に訪れた不運
異性と巡り合い子孫を残すため、文字どおり翼を手にするはずだったのに。

飛翔できないことを悟った彼は、今何を思うのでしょう。
本能に刷り込まれた繁殖への渇望か、飛べないという現実への絶望か・・・

飛翔と生殖以外のほぼ全ての能力を蛹の皮と共に脱ぎ捨てた彼に残された時間はわずか10日ほど。

羽化の最中に雨にでも打たれたのか・・・羽が完全に伸びきらず飛翔できない様子

今回は羽化不全のはなしです。
昆虫観察をしていると少なからず遭遇する羽化不全

羽化とは昆虫の生涯最大の試練と言っても過言ではないと私は思います。

完全な姿で成虫になれるか否か、それは次の世代に命を繋げるか否かと同義です。
もちろん、羽化不全の程度によっては生殖機能を維持している場合もありますが、多くの場合はそのまま絶命してしまうか、捕食者の餌食になってしますうことがほとんどです。

そんな中、今回見かけたタイリククロスジヘビトンボは極めて軽度の羽化不全でした。
羽が十分に伸びず飛翔できないこと以外は特段問題がなさそうでした。見たところきっと生殖機能も問題ないでしょう。

だからこそ、その事実が彼にどれほどの絶望感を与えるのだろうと考えずにはいられませんでした。
もしかすると飛べないことなど歯牙にも掛けず、生殖本能の赴くまま力強く歩き回るのかもしれません。

いずれにしろ、飛翔による移動は叶わないもののパートーナーと出会い次世代にその命を繋ぐチャンスが訪れることを祈るばかりです。

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